第171話 光の余韻
王都の中心を離れ、ロザリンとロウは王城へ向かう道を歩いていた。
王城へ続く道は、黒い靄が消えたことで、まるで別の世界のように澄んでいた。
石畳に落ちる光は柔らかく、その上を歩くふたりの影は静かに寄り添うように伸びている。
ロザリンは歩きながら、隣を歩くロウの横顔をそっと見た。
ロウの表情はどこか柔らかく、その穏やかさが胸の奥に静かに触れた。
「……ロウ。王都の人々が……あなたのことを守護騎士様って
呼んでいたわね」
ロザリンの言葉が胸に触れた瞬間、ロウの瞳がわずかに揺れた。
「……はい。でも……僕はただ、姫様をお守りすると誓ったので……」
ロウは少しだけ目を伏せた。
その仕草が、言葉が、
ロザリンの胸をさらに甘く締めつける。
ロザリンは静かに首を振った。
「ありがとう……でもそれだけじゃない……
あなたは王都を守ったの。
……ロウ……あなたの力は……私にとっても、
王都にとっても……大切な光よ」
「……姫様……」
普段より少し低い声で、
短く、静かに返した。
その声は、褒められたことを隠しきれない甘い影を
帯びていた。
ロザリンは静かに言った。
「……ロウ。あなたと手を繋いだとき……花の力がとても穏やかだったの。怖くなかった。むしろ……安心したわ」
ロウの胸の奥が静かに熱くなる。
「……僕もです。姫様の光は……僕の力を落ち着かせてくれました」
ロウの指が、ロザリンの指をゆっくり絡めた。
その触れ方は、言葉よりも確かな気持ちを伝えてくる。
ロザリンはロウの手を見つめたまま、少しだけ声を落とした。
「……ロウ。あなたが隣にいると……胸の奥が、……温かくなるの」
ロウの指先がわずかに強く絡む。離したくない気持ちが、静かに滲む。
「……姫様……
いつまでも隣で……あなたを守り続けます。どんな闇が来ても……僕は姫様のそばにいます」
ロザリンはその言葉に、胸の奥がふわりと揺れるのを感じた。
「……ありがとう、ロウ」
指先は離れず、歩くたびにわずかに揺れて、その揺れがふたりの心をそっと近づけていく。
王城の光は完全に戻り、その輝きはふたりの背を静かに押していた。
まるで、ふたりの距離が近づいたことを祝福するように。




