↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤ずきん姫とオオカミ騎士~姫に触れられるのは、ただひとりのオオカミだけ~  作者: 月乃雫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
170/177

第170話 戻った光の中で

林を抜けると、王都の空気はまるで別の街のように変わっていた。


黒い靄はほとんど消え、


朝の光が石畳に静かに降り注いでいる。




昨日まで影が重く沈んでいた建物は、光を受けて淡く輝き、


街の輪郭がゆっくりと息を吹き返していく。


人々の足取りも軽く、まるで胸の奥にあった重石が外れたようだった。




ロザリンとロウが中心街へ戻ると、数人の国民が空を見上げていた。




「……黒い靄が……消えていった……」




その声は驚きよりも、信じられないものを見たときの静かな震えだった。


別の国民がロザリンとロウの姿に気づき、息を呑んだように目を見開いた。




「……姫様。靄を……調べに来ていただけたのですか?」




ロザリンはゆっくりと頷いた。その仕草だけで、国民たちの肩の力が抜けていく。




「ええ。林に咲いていた黒い花が魔術をかけられていて……それが王都に黒い靄を広げていたようです。」




国民たちは互いに顔を見合わせ、小さく震える声が漏れた。




「……そんな花が……」


「……あの林は薄暗くて、誰も入らなかったし……」


「……知らなかった……」




ロウは一歩前へ出て、国民たちの不安を包むように穏やかに声をかけた。




「皆さん、安心してください。姫様の花の力で黒い花はすべて枯れて、もうありません。」




ロザリンはすぐに続けた。




「ロウの力でもあります。


月の力は危険なものではありません……皆さんを守りました。」




その言葉に、国民たちの視線がロウへ向いた。


驚きがゆっくりとほどけ、戸惑いが安堵へ変わり、その安堵が静かな感謝へと形を変えていく。




「……ロウ殿が……」


「月の力で……?」


「姫様……ロウ殿。王都を守っていただき、ありがとうございます。」




ロウは少しだけ目を伏せた。


その表情には、長い間受け入れられなかった力がようやく認められた静かな喜びが滲んでいた。




ロザリンはロウの横顔を見つめ、胸の奥が温かくなるのを感じた。




「ロウは……王都のそして、私の守護騎士です。皆さんを守るために、力を使いました。」




国民たちは深く頷いた。




「……守護騎士様……」


「月の力が……王都を救ったんだ……」


「ロウ殿……ありがとうございます。」




その声は、昨日まで街を覆っていた不安を溶かすように


柔らかく広がっていった。




ロウは静かに頭を下げた。




「……僕は、ただ……姫様と王都を守りたいだけです。」




ロザリンはその言葉に、そっと微笑んだ。




王都の光は完全に戻り、街の空気は穏やかに澄んでいた。


ロザリンとロウは並んで歩き出す。


その背中を、王都の人々が静かに見送っていた。


まるで、二人の歩みが


王都の新しい光を導いているかのように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。