↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤ずきん姫とオオカミ騎士~姫に触れられるのは、ただひとりのオオカミだけ~  作者: 月乃雫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
167/175

第167話 月と闇の境界

王城の取り調べ室は、昼でも薄暗く、


静けさが張りつめていた。


ロザリンとロウが入ると、椅子に座らされたヴァルガはゆっくり顔を上げた。


その目は、捕らえられてもなお、かつて宰相として王城を歩いていた頃の鋭さを失っていなかった。




「……姫様、ロウ殿」




ロザリンはまっすぐに歩み寄り、静かに口を開いた。




「兄上……、最近王都の花の光が弱まり、闇の瘴気の靄が濃くなってきていると報告がありました。そして、王都に調べに行きました。調べを進めたら──王都の林で、黒い花が咲いているのを見つけました。辺り一面に咲いていました」




ヴァルガの口元が、わずかに歪んだ。




「……ああ。見つけてしまったか」




ロウが一歩前に出る。




「禁術の残滓を感じました。あの花は……あなたのものですね」




ヴァルガはロウを見た。


その視線は、かつて宰相としてロウを見下ろしていた時のままだった。




「月の力で“残滓”なんて言葉を使うとはね。


随分と成長したじゃないか、ロウ殿。……私が育てたものを、よく察した」




ロウは眉を寄せたが、反論はしない。


ヴァルガは肩をすくめた。




「そうだ。あれは私が育てた“闇の花”だ。王都を支配するためにね。花の光を奪い、闇の靄で覆えば──王都は私のものになる。単純な話だろう?」




ロザリンの胸が冷たくなる。


ヴァルガは続けた。


その声は淡々としているのに、言葉の端々に皮肉が滲む。




「だが、私が捕らえられたあと……闇の花の存在を知る者は誰もいなくなった。誰も気づかず、誰も止められず、靄は広がり続けた。……王都の管理は、随分と甘くなったようだ」




ロウが静かに問う。




「では……どうすれば止められるのですか?」




その瞬間、ヴァルガの表情がわずかに強張った。ロウの声に反応するように、目の奥に冷たい光が宿る。


反射的な拒絶だった。




「……なぜ私が“ロウ殿”に教えなければならない?」




声は低く、刺すように冷たい。ロウを見下ろしていた宰相時代の癖が、そのまま残っていた。




ヴァルガの胸の奥で、古い劣等感が疼く。




ロウは月の力を持つ守護種の末裔。


本来なら王家を守る“正統な守護者”。ロザリンの隣に立つ資格を持つ者。




そして──自分が焼いた村の唯一の生き残り。




だがヴァルガは、その行いを“罪”として認めてはいない。後悔もしていない。間違いだったとも思っていない。


胸が刺さるのは罪悪感ではない。




ロウの存在が、


自分の“奪えなかった正統性”と“壊した世界の事実”を


突きつけてくるからだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。