第163話 王都の異変
祠から戻って数日が経った。
ロザリンとロウの心は、まだあの静かな祠の余韻を少しだけ残していた。
けれど──王都の空気は、確実に変わり始めていた。
王都の花の光が弱まり、街の色が薄くなる。
昼間なのに、どこか影が濃い。
市場では、花屋の棚に並ぶ花がゆっくりと萎れていき、人々の表情にも疲れが滲んでいた。
王宮の会議室に呼ばれたロザリンとロウは、重い空気の中で報告を受ける。
「……王都の花の光が、日に日に弱まっています」
「市場の花がなぜか枯れ始めました。」
「このままでは、王都全体が闇に沈む可能性があります」
ロザリンは静かに息を吸った。胸の奥がきゅっと痛む。
ロウは隣で、報告を聞きながら目を伏せた。
月の気配が乱れている──それを誰よりも敏感に感じていた。
ロザリンはロウの方へ視線を向ける。
「ロウ……」
ロウは小さく頷いた。
「姫様。……調査が必要です」
ロザリンも頷く。
「ええ。花の光が弱まっている原因を、必ず突き止めましょう」
二人は立ち上がる。
会議室を出たあと、ロザリンとロウは王城の廊下をゆっくり歩いた。
私室に戻ったあと、ロザリンは報告の内容を思い返しながら、
胸の奥に重いものが沈んでいくのを感じていた。
「……花の光が弱まっているなんて」
その声は小さく、揺れていた。
ロウは隣で、その揺れを敏感に感じ取っていた。
ロウは隣で歩きながら、その揺れを敏感に感じ取る。
「姫様。王都の光が弱まるのは……ただの自然現象ではありません」
ロザリンの瞳に、
隠しきれない不安がにじんでいる。
「……月の気配も乱れているの?」
ロウは少しだけ視線を伏せた。
「はい……祠で安定したはずの月の力が……
王都に入ると、わずかに揺れました」
ロザリンは胸に広がる不安を押さえ込みながら、
ロウの姿を瞳に映した。
「ロウ……痛むの?」
「いえ、痛みではありません。」
ロウは淡く笑みを浮かべると、
ロザリンを安心させるように首を振った。
「ただ……何かが、王都の光を濁らせている気配がします。」
ロザリンは、呼吸がひとつ乱れた。
そして胸に手を当てた。
二人はそのまま私室の窓辺へと向かう。
外の街を見下ろすと、夕暮れの光がいつもより薄く、
花の灯りも弱々しく揺れていた。




