第157話 あなたの隣で
私室に入ると、静けさがふたりを包んだ。
ロザリンは机のそばで立ち止まり、胸元へそっと手を添えた。その指先がわずかに震えていた。
ロウは少し離れた位置で控えていたが、ロザリンの肩がゆっくり落ちるのを見て、静かに近づいた。
ロザリンは小さく息を整えた。
「……終わったのね。」
その声には、安堵と、少しの疲れが混じっていた。
ロウは静かに頷く。
「はい……やっと終わりました」
ロザリンはまつげを伏せ、ほんの少しだけロウの方へ体を向けた。
「……よかった……」
その言葉は、胸の奥から静かにこぼれたものだった。
ロウはその小さな声を逃さず、姫様の横へ自然に寄る。
ロザリンの指先がわずかに止まる。その変化をロウは静かに受け取った。
「はい、……こうして止められたことを、僕も……心から嬉しく思っています。」
ロザリンはゆっくり顔を上げる。
「……ロウ」
その瞳は揺れていたが、その揺れはもう不安ではなかった。
ふたりの間には言葉は多くなかったが、その静けさは、政略結婚を阻止できた喜びを、
ふたりだけの温度で満たしていた。
ロウは静かに息を落とし、本音を落とした。
「……僕は、姫様が誰かの隣に立つ姿を……見たくありませんでした。」
ロザリンの呼吸がわずかに止まる。その変化をロウは静かに受け止めた。
「……あの話が進むたびに、胸が締めつけられるようでした。」
ロザリンはその言葉に、まつげをゆっくり伏せた。
「……ロウ。」
声は甘く、恋人としての温度を含んでいた。
「……あなたがそう思ってくれている……それが嬉しいの。」
ロウはその言葉を丁寧に受け止めるように、ゆっくり視線を伏せた。
ロザリンは続けた。
「……あなたが望まない未来を、私が選ぶはずないでしょう?」
ロウの呼吸がわずかに揺れる。その揺れは、姫様の甘さに触れたときのものだった。
ロザリンは続けた。
「……あなたが望んでくれていたから……私は最後まで迷わずにいられたの。」
ロウは息をひとつ落とし、その言葉を丁寧に受け取る。
ロザリンはほんの少しだけ近づいた。けれど心は確かに寄っている距離で。
「……ロウが隣にいてくれる未来を……私は、手放したくなかった。」
ロウはその言葉に、静かに目を伏せた。
ロザリンはその横顔を見つめながら、小さく微笑んだ。
「……だから、嬉しいの。ロウと同じ望みでいられたことが。」
ロザリンはさらに言葉を落とした。
「……あなたと同じ未来を望んでいるの。ずっと。」
ロウのまなざしがわずかに揺れる。けれど声は低く、静かで、甘さを含んでいた。
「……僕も、姫様と同じ望みです。……この道がずっと続くことを願っています。」
ロザリンはその言葉に、
胸の奥がゆっくり温まるのを感じた。
そして、静かに言葉を落とした。
「……ロウが望んでくれた未来を……私も望んでいるの。」
ロウは静かに顔を上げた。その瞳は、姫様だけに向けられた温度で揺れていた。
そして──ロウは触れられる距離で、甘く返した。
「……姫様がそう言ってくださるなら……僕はもう、何も怖くありません。」
ロザリンのまつげが揺れる。
ロウは続けた。
その声は低く、恋人としての甘さを静かに含んでいた。
「……あなたと選んだ未来を、僕はずっと守りたいと思っていました。」
ロザリンの胸の奥がゆっくり温まる。
ロウはその変化を受け止めながら、ほんの少しだけ視線を伏せた。
そして、ロウは迷いなくロザリンの指先へ触れる。触れた瞬間、ロザリンの呼吸が甘く揺れた。
ロザリンはその温度を受け止めるように、指を絡めて握り返した。
ロウはその手を離さず、低い声で落とした。
「……姫様の隣に立てることが……僕の望みです。」
繋いだ指が、恋人としての甘さで満たされていった。




