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赤ずきん姫とオオカミ騎士~姫に触れられるのは、ただひとりのオオカミだけ~  作者: 月乃雫


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155/161

第155話 政略結婚、正式破棄の宣言

王の私室は、昼の光が薄く差し込むだけの静かな空間だった。重厚なカーテンは半ば閉じられ、空気はゆっくりと流れている。




ロザリンが部屋へ一歩踏み入れると、


ベッドの上で父王は上体を少し起こし、まだ完全には戻らない体力を支えるように枕へ背を預けていた。


父王は娘の姿を見て、かすかに目を細めた。


ロザリンは胸元を押さえ、息を整えるようにゆっくりと吐いた。




その瞳は、娘の決意をまだ知らないままで、


静けさを湛えていた。




ロザリンは胸元を押さえ、息を整えるようにゆっくりと吐いた。


ロウは隣で、その息の震えをすぐに受け取る。静かにロザリンの心へ寄る気配で。




ロザリンはベッドのそばに立ち、まつげを震わせながら小さく呼びかけた。




「……父上。」




その声は静かで、けれど揺れていた。


父王はゆっくりと娘へ視線を向けた。




「ロザリン……どうした?」




その声は弱く、けれど確かに娘を案じる響きがあった。




ロザリンは視線を落とし、胸の奥にある言葉をゆっくりと、押し出すように続けた。




「兄上が進めていた政略結婚の件ですが……」




父王は短く息を吐いた。




「ああ……あれか。」




ロザリンはまつげを震わせ、けれど目をそらさずに言った。




「政略結婚の件……私は、受け入れられません。」




空気が止まった。


父王の瞳が、娘の言葉を確かめるように揺れた。




ロザリンは続けた。




「国のためと言われても……


私は、自分の心を偽れません。


誰かと結婚して国を繋ぐのではなく……私自身の意思で、この国を守りたいのです。」




その声は震えていたが、折れてはいなかった。




ロウはその震えを感じ取ると、静かにロザリンへ気配を寄せた。


言葉ではなく、寄り方で支える甘さで。




「……姫様の言葉は、真実です。」




父王の視線がロウへ向く。


ロウは頭を下げず、ただ静かに受け止めた。




「姫様は……誰かに従って生きる方ではありません。ご自身の心で選ばれる方です。」




ロザリンはロウを見た。その横顔は、ロザリンのためだけの甘さだった。




父王は長い沈黙のあと、深く息を吐いた。




「……ロザリン。」




その声は、かすかに震えていた。




「お前の決意は……理解した。政略結婚の話は……ここで終わりにしよう。」




ロザリンの肩がわずかに揺れた。その揺れを、ロウは静かに受け止める。




父王は続けた。




「お前が選ぶ道を……私は尊重する。」




ロザリンは目を伏せ、その言葉を胸の奥でゆっくり受け止めた。


そして、父王に深く頭を下げる。




「……ありがとうございます、父上。」




部屋を出るとき、ロザリンはほんの少しだけロウの方へ肩を寄せた。


ロウはその気配を受け止めるように、静かに寄り添った。




廊下の光が二人の影を伸ばし、その影は、離れずに並んで揺れていた。




ロザリンの胸の奥には、確かな解放と、ロウの存在が静かに灯っていた。

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