↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤ずきん姫とオオカミ騎士~姫に触れられるのは、ただひとりのオオカミだけ~  作者: 月乃雫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
154/163

父王の告白─

レオンハルト国王の寝室は静かだった。


まだ体は起こせない。けれど、瞳はしっかりとロザリンを追っていた。


ロザリンは椅子を引き寄せ、父の手に触れた。




「……父上。兄上を──禁術ほかの余罪で捕らえました」




レオンハルトの瞳がわずかに揺れた。




「……そうか……」




その声は弱いが、確かに父の言葉だった。


ロザリンは続けた。




「……兄上は今は拘束されています。」




レオンハルトはゆっくり息を吐いた。その表情は痛みとも哀しみともつかない。


沈黙が落ちたあと──レオンハルトはゆっくり口を開いた。




「……ロザリン。あの子のことを……話さねばならん」




ロザリンは父の顔を見つめた。その目は、遠い昔を見ていた。




「ヴァルガは……赤子の頃から賢い子だった。


泣き声も小さく、よく周りを見て……人の顔を覚えるのが早くて、勉強もよくできた」




ロザリンは息を呑む。父がヴァルガの昔話をするのは初めてだった。




「私の兄、デービッド前国王が……あの子を捨てたとき、


私は……どうしても放っておけなかった。あれは……まだ赤子だった。何も知らぬまま……捨てられた子だった」




声が少し震えた。




「兄が捨てた子を守るのは……私の役目だと思った。


あの子に“捨てられた”などと言えるわけがない。王家の闇は……子どもに背負わせるものではない」




ロザリンの胸が強く締めつけられた。




「だから……私はフローラ以外には言わなかった。


ヴァルガにも……お前にも……誰にも……」




レオンハルトは目を閉じたまま続けた。




「……ロザリン。あの子が私に禁呪をかけた時……私は抵抗しなかったのだ……」




ロザリンは息を止めた。




「……なぜですか」




レオンハルトは静かに答えた。




「……私には……罪悪感があった。あの子を守ると言いながら……結局は傷つけてしまった。真実を言わなかったことで……あの子を孤独にした」




声が震えた。




「だから……私は敢えて禁術を受けた。あの子の怒りを……私が受けるべきだと思った」




ロザリンの目が揺れた。父の言葉は、静かで、痛くて、優しかった。




ロザリンは父の手を握りしめた。




「……兄上は……父上を憎んでいました。“前国王は自分を捨てた”と……“父上は何も言わなかった”と……」




レオンハルトの指がわずかに震えた。


ロザリンは続けた。




「でも……兄上は……父上が憎いと言いながら……父上にかけた禁術を……解いてくれました」




レオンハルトの瞳が揺れた。


その揺れは、痛みでも怒りでもなく──ただ、静かな涙の前触れだった。


ロザリンはそっと言葉を置いた。




「兄上は……父上を憎んでいたはずなのに……最後は……父上を殺そうとはしませんでした。禁術を……解いてくれました」




レオンハルトはゆっくり息を吸い、そのまま、静かに涙を流した。




声は出ない。




ただ、頬を伝う涙だけが、長い年月の痛みを語っていた。


ロザリンは父の手を包み込み、そっと額を寄せた。




寝室の空気は静かで、ただ二人の影だけが寄り添っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。