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赤ずきん姫とオオカミ騎士~姫に触れられるのは、ただひとりのオオカミだけ~  作者: 月乃雫


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145/162

第145話① 尋問室―月影の村―

灯りの揺れが、尋問室の空気をさらに重くした。


ロウは、ロザリンの横顔を見ていた。ロザリンは目を伏せず、ただ受け止めていた。


兄と向き合うその姿は、震えているのに──それでも崩れない。


その姿が、ロウの胸をさらに締めつける。




(……姫様……兄上と呼んだ言葉を拒まれて……それでも向き合っている……こんな顔……させたくなかった……)




胸の奥が、ゆっくり熱くなる。




(……姫様まで……傷つけるのか……父さんも……母さんも……村も……全部奪って……それでも……まだ……)




ロウは拳を握りしめた。爪が手のひらに食い込む。




(……“騙されていた”……?“優しさを信じられなくなった”……?そんなこと……俺には関係ない……)




父の笑顔が、ふっと浮かぶ。


──「ロウは強い子だ」


その声が、胸の奥で震えた。




(……父さんは……優しかった……誰より……強かった……その父さんを……“器”と呼んだ……この男は……)




ロウはゆっくり顔を上げた。ヴァルガ宰相をまっすぐ見た。




ロウ「……あなたが……どれだけ傷ついていたとしても……僕の父を殺した事実は……変わりません。」




ヴァルガの目がわずかに揺れた。


その揺れは、同情ではなく──触れられたくない傷に触れられた時の反応だった。




ロウ「……あなたの沈黙の痛みは……あなたのものです。でも……僕の痛みも……僕のものです。」




ロザリンが小さく息を呑んだ。




ロウ「……僕は……あなたを許しません。」




その言葉は静かで、深くて、揺れない声だった。


ロウの胸の奥で憎しみと痛みが、静かに重なっていた。




ヴァルガは沈黙していた。その沈黙は、語られた痛みの続きのように見えた。




ロウはゆっくり息を吸った。胸の奥の痛みが、別の問いを押し上げてくる。




ロウ「……あなたは……僕の村を焼きました。母を死なせました。僕を実験体にしました。」




ロウは震えていた。でも、逃げなかった。


ヴァルガはロウを見る。




ロウ「……僕の村も……母も……全部……あなたが奪ったんです。」




ロザリンはロウを見た。その瞳は揺れていたが──伏せなかった。逃げずに、ロウの痛みを受け止めていた。




ロザリン「……ヴァルガ、なぜロウの村を焼いたのですか?」




鎖の音を鳴らし、ヴァルガがゆっくり顔を上げた。




ヴァルガ「……月影の村を焼いた理由を知りたいのか。」


ロウは静かに息を止めた。




喉の奥が、ひどく重い。


真実を追い求めてきたはずなのに、いざその扉が開こうとすると足がすくんだ。




この先で語られるものが、自分たちの想像をはるかに超えるものだと、本能が告げていた。




沈黙に耐えきれなくなったように、ロザリンが口を開く。




ロザリン「理由を聞かせてください。月影の村は……何かを知っていたんですか?」




ヴァルガはしばらく答えなかった。


ロウの心臓が大きく脈打つ。




月影の村。


焼失した村。


隠された真実。




ヴァルガは闇の向こうを見つめた。




ヴァルガ「ならば話そう。」



その一言に、ロウの胸は重く沈んだ。



ロウとロザリンは、言葉を失った。

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