第142話 感情の決着
灯りの揺れが、まだ二人の間に残っていた。
ロザリンはロウの胸に寄せられたまま、視線をどこにも置けなかった。
ロザリン「……兄として……信じてきた時間が……」
声が、灯りよりも不安定だった。抑えようとしても震えが止まらない。
ロザリン「……全部……嘘だったなんて…… そんなの……受け止められない……」
呼吸が乱れる。言葉が途切れる。
ロウはロザリンの手を包んだ。その手は冷たかった。
ロウ「ロザリン様……」
ロザリンはロウを見ようとして──
途中で視線を逸らした。目が合うと、崩れそうだった。
ロウの胸元を掴んだまま、ロザリンは呼吸を整えようとする。でも、整わなかった。
ロザリン「……信じてきた時間が…… 壊れたんだって…… 今になって……やっと……」
ロウがそっと、ロザリンの背に触れた。
その触れ方が、崩れかけた心のどこかに届いた。
その瞬間だった。
ロザリン「……ロウ……」
声が震えた。言葉が続かなかった。
喉の奥が熱くなって、次の言葉が出てこなかった。
ロザリン「……っ……」
小さく息が漏れた瞬間、涙がこぼれた。溢れる涙が、とめどなく落ちてくる。
ロザリンはロウの胸に額を寄せた。
涙がそこに落ちる。声を押し込んでも、涙が止まらなかった。
ロウは背に手を添えたまま、ロザリンをそっと支え続けた。
ロウ「泣いていいんです。 泣けるなら……泣いてください」
ロザリンは目を閉じる。
胸の奥が痛む。
ロザリン「……ロウ……わたし……強くない……思っていたほど……強くなかった……」
ロウ「強くなくていいんです。強くあろうとしなくていい……」
ロザリンはゆっくり息を吸った。深く吸おうとして、途中で止まる。
ロザリン「……ロウ……わたし……どうしたら……こんな……」
声が震える。
ロザリン「……こんな気持ち……知らなかった…… どうしたら……止まるの……」
ロウ「……大丈夫です。僕はここにいます……
姫様が泣き止むまで、ずっと」
ロザリンは、ロウの胸元を掴んだ。
さっきより強く。離したくないという意思が、涙の中にあった。
ロザリン「……ロウ…… ひとりに……しないで……」
ロウ「しません……僕は…… 決して、姫様をひとりにはしません」
ロザリンの肩が震えた。涙が落ち続けた。その涙は、信じてきた時間が壊れた痛みの形だった。




