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赤ずきん姫とオオカミ騎士~姫に触れられるのは、ただひとりのオオカミだけ~  作者: 月乃雫


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141/162

第141話 判決後

部屋に戻ったロザリンは、扉を閉めたあと、しばらく動かなかった。




判決の言葉がまだ胸の奥に残っている。


ヴァルガの叫びも。「捨てられた子」「拾われた赤子」「血は繋がっていない」




ロウは静かに部屋へ入り、ロザリンのすぐ近くで立ち止まった。声はかけない。ロザリンが息を整えるのを待っていた。




静けさがロザリンの胸の奥の揺れを、そのまま浮かび上がらせた。




ロザリン「……ロウ」


名前を呼ぶ声が、いつもより少し弱い。


ロウ「はい……」




ロザリンはゆっくり机まで歩いた。歩幅が少し乱れている。


禁術記録の上に手を置こうとして──触れる直前で止まる。指先が空中で震えた。




ロザリン「ヴァルガ宰相は……父上に拾われた子だったのね」


ロウ「……ええ」


ロザリン「血は……繋がっていなかった」




ロザリンは目を伏せた。


まつげが揺れる。ロウはゆっくり近づき、ロザリンの手に触れた。触れただけで、ロザリンの肩がわずかに揺れる




ロザリン「兄だと……思っていたのに」


ロウ「ロザリン様……」




ロザリンは顔を上げる。視線が揺れている。




ロザリン「……ずっと……兄だと思っていたのよ。あの人の言葉も、態度も……全部……」




声が掠れた。言葉の終わりが少しだけ震える。




ロウ「……はい」




ロザリン「なのに……違ったなんて……」




ロザリンは机の端に指を置いた。その指が、わずかに沈む。支えを探すように。




ロウ「……ロザリン様」




ロウは少し近づく。ロザリンの呼吸が浅くなる。




ロザリン「……どうしたら……いいのか分からないの」




ロウはその手を包む。強く握らない。逃げ道を塞がない距離で支える。




ロザリン


「兄だと思っていた人が……義兄だったなんて……そんなこと……急に受け止められないわ」




その言葉は、揺れそのものだった。




ロウ「それで……いいんです」


ロザリンは目を閉じた。まつげが震える。呼吸がわずかに乱れる。




ロザリン「ロウ……そばにいて」




ロウはロザリンの頬に触れた。指先が、静かに髪を撫でる。恋人同士の甘さは、声ではなく、この触れ方にだけ宿っていた。




ロウ「もちろんです……ここにいます」




ロウの声は短いけれど確かだった。


ロザリンはその言葉に、ほんの少し息を震わせる。ロウの温度が、胸の奥のざわめきを静かに落としていく。




二人の影が、部屋の灯りの中で重なった。


その重なり方は、


揺れを支える恋人同士のものだった。



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