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赤ずきん姫とオオカミ騎士~姫に触れられるのは、ただひとりのオオカミだけ~  作者: 月乃雫


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140/161

第140話 静かに落ちる判決

護衛がヴァルガを連れて行こうとした瞬間、ロザリンは静かに言った。




「……判決を言い渡します」




会議室が張り詰める。


ロザリンは席を立ち、ヴァルガの前に立つ。


その目は、怒りでも憎しみでもなく、ただ事実だけを見つめる者の目だった。




「ヴァルガ宰相……」




静かな声が響く。




「あなたは──王国法で禁じられている禁術を研究し、その術式を父上……レオンハルト国王に施した」




重鎮たちが息を呑む。




「そして、父上の生命力を奪う術式を施した」




淡々と、事実だけを並べる。




「その結果、父上は衰弱し、王国は混乱し、あなたは王権の奪取を試みた」




ヴァルガは何も言わない。ただ、静かにロザリンを見ていた。


ロザリンは続けた。




「そして──母上……フローラ王妃の死に関わる禁術研究を行い、王妃の診断記録を改竄した」




重鎮たちのざわめきが収まるまで、静かに待った。


そして、淡々と言った。




「以上の二つの罪とは、宰相としての責務を捨て、王国を危険に晒した重大なものです」




ロザリンは立ち上がる。


空気が張り詰める。




「あなたが父上に施した禁術──生命力を搾り取る術式は、王国法で最も重い罪です」




ロザリンは一歩前へ出た。




「ゆえに──」




短い沈黙。


会議室の全員が息を止める。




「禁術行使・王妃殺害関与及び反逆の罪、そして宰相直属の侍医の移送の罪により、宰相職を剥奪。


王城地下拘禁区へ終身収監とします。以後、王国の政治への関与を禁じます。」




護衛がヴァルガの両腕を取る。


ヴァルガは抵抗しない。最後にロザリンを静かに見た。


その目は、怒りでも憎しみでもなく──ただ、終わりを受け入れた色だけがあった。




ロザリンは視線を逸らさなかった。


静かに、まっすぐに受け止めた。




ヴァルガ宰相の声がかすれる。




「私は……“捨てられた子”のまま終わるのが……どうしても許せなかった」




ロザリンの指が、ほんのわずかに震えた。


だが、表情は変わらない。




ヴァルガは連れて行かれる。


扉が閉まる音が、会議室に重く響いた。


誰も動かない。




ロザリンはゆっくりと息を吸い、机の上の禁術記録に手を添えた。


その指先は、また少しだけ震えていた。




ロウが静かに近づき、ロザリンの横に立った。


言葉はない。


ただ、ロウがそこにいてくれるという事実だけが、ロザリンを支えていた。





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