第139話 王家の罪と影
重鎮会議の間の空気が張り詰める中、
ヴァルガは続けた。
「赤子の私は……捨てられた!!
そして、その私を拾ったのが──今の国王レオンハルト陛下だ!!」
会議室が揺れるような沈黙に包まれる。
ヴァルガの声は怒りとも哀しみともつかない。
「陛下は赤子の私を拾い、育ててくれた。私は……陛下を尊敬していた。本当に……尊敬していたんだ。
陛下は……私を見てくれたからだ」
ロザリンの胸が締めつけられる。
ヴァルガは叫んだ。
「だが──陛下は真実を言わなかった!!私が“廃棄された子”だと知っていたのに……何も言わなかった!!分かっていたはずなのに……黙っていたんだ!!」
ヴァルガの叫びが会議の間に響き、その余韻がゆっくりと沈んでいく。
誰も口を開かない。
「どうして言わなかった!!どうして……私は“廃棄された子”のままなんだ!!どうして……王家に認められないままなんだ!!」
ロザリンはただ、まっすぐヴァルガを見ていた。
ロウはロザリンの少し後ろで、静かに立っている。手は剣に触れていない。だが、いつでも動ける位置にいた。
ヴァルガは荒い呼吸のまま、机に手をついた。
その肩が、わずかに震えていた。
重鎮の一人が、震える声で言った。
「……宰相。あなたは……だから陛下に禁術をかけたのか」
ヴァルガはゆっくりと顔を上げた。
その目には、怒りも憎しみももうなかった。ただ、乾いた諦めだけがあった。
「……ああ。だから陛下に禁術をかけた」
重鎮たちがざわめく。
ロザリンはまっすぐに見ている。
ヴァルガは震える声で叫んだ。
「私は……王家に捨てられた子だ。その事実を黙っていた陛下を、どうしても許せなかった。そして私は、王家そのものを憎んだ。だから王家を終わらせる必要があった!!この国を……“平等”にするために!!」
重鎮たちが息を呑む。
ロザリンの指が、ほんのわずかに震えた。
だが、表情は変わらない。
重鎮の別の者が叫んだ。
「禁術は王国法で最も重い罪だ!!宰相、あなたは──」
制服を着た護衛たちが、会議室の両側から静かに歩み出る。
ヴァルガは彼らを見た。抵抗の気配はなかった。
ただ、ゆっくりと目を閉じた。
護衛がヴァルガを連れて行こうとした瞬間、ロザリンは静かに言った。
「待って……判決を言い渡します」
その瞬間、会議室の空気が凍りついた。




