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赤ずきん姫とオオカミ騎士~姫に触れられるのは、ただひとりのオオカミだけ~  作者: 月乃雫


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130/162

第130話 地下通路─消された夜の痕跡

王城の地下へ続く階段は、昼間でも薄暗く、湿った冷気が肌にまとわりつく。


団長は松明を手に、副官とともにゆっくりと降りていく。




「……ここが、侍医が最後に目撃された場所です」




副官の声は、地下の静けさに吸い込まれるように小さかった。


団長は頷き、壁に埋め込まれた古い鉄扉に目を向けた。




「宰相ヴァルガが管理している区域──“研究棟地下通路”。」




扉には、何年も前のものと思われる封蝋の跡が残っていた。


団長は手袋越しに触れ、低く呟く。


「……封が二度、張り替えられているな」




副官が驚いたように目を見開く。


「二度……?王妃様が亡くなった夜と……その後……ですか?」




「可能性は高い」




副官は震える声で言う。


「団長……侍医は、この扉の向こうへ?」




団長は答えず、扉の鍵穴を覗き込んだ。


「鍵が……“外側から”折られている」




副官の顔色が変わる。


「閉じ込められた……?」




「あるいは──“入れられた”まま、出られなかった」




団長は扉から手を離し、深く息を吐いた。


「宰相ヴァルガは、侍医をここへ連れてきた。王妃様の死の“真相”を知る者を……この地下で消した」




副官は拳を握りしめる。


「……団長。これで、宰相の関与は──」




「まだ“証拠”ではない。だが──“証明できる段階”に入った」




団長は松明を掲げ、扉の向こうの闇を見つめた。


「この地下通路の記録をすべて洗う。


保管庫の帳簿、当時の出入り、荷物の搬入、


宰相の側近の動き──必ず何か残っている」




副官は深く頷いた。


「すぐに取りかかります」




「……いや、自分の目で確かめる」




副官が驚いたように顔を上げる。


「団長ご自身が……?」




「当然だ。宰相ヴァルガが関わっている可能性がある以上、他人任せにはできん」




団長は階段の方へ歩き出した。


「副官、お前はここを封鎖しろ。誰も近づけるな。特に宰相派の者はだ」




「はっ!」




副官が敬礼する。




団長は振り返らずに言った。


「“あの夜”の記録が残っていれば──宰相の悪事に繋がる。もし抜かれていれば……それ自体が証拠だ」


団長はふと足を止めた。


「……侍医の家族が消えた理由も、ここに繋がるはずだ」




副官は息を呑む。


「家族も……“見られた”のかもしれません」




団長は静かに頷いた。


「宰相ヴァルガは、“証人”を残さない男だ」




副官は深く頭を下げ、すぐに階段を駆け上がっていった。




松明の火が揺れ、団長の影が長く伸びる。




団長は、ひとり呟いた。


「宰相ヴァルガ……お前が消した“夜”を、必ず暴く」




王城の空気は、さらに重く、鋭く張り詰めていく。


団長はそのまま階段を上り、保管庫へ向かった。

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