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赤ずきん姫とオオカミ騎士~姫に触れられるのは、ただひとりのオオカミだけ~  作者: きの子ちゃん


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第12話 私の護衛兵


王城の奥、 普段は使われることのない小さな謁見室。


朝の光が細い窓から差し込み、 薄い金色の帯が床に落ちていた。


ロザリンは扉の前で一度だけ振り返り、ロウの姿を確かめた。




「ロウ。 ここから先は……私の決意の証よ。 あなたにも立ち会ってほしいの」




ロウは静かに頷いた。




「ロザリン様の望むところへ。 僕はただ、おそばにおります」


その言葉に、ロザリンは小さく息を整えた。


そして扉を押し開けた。




謁見室の奥には、 レオンハルト国王が病床で椅子に身を預けていた。


その姿は、 ロザリンが記憶している“王”とは違っていた。


痩せ、 肌は青白く、 目の焦点はどこか定まらない。


ロザリンは胸が痛んだ。




「お父様……」




国王はゆっくりと顔を上げ、 弱々しい笑みを浮かべた。




「ロザリン……来てくれたのか……」




その声は、 かつての威厳ある王の声とは別人のように細かった。


ロウはその姿を見た瞬間、 胸の奥に冷たいものが走った。




――これは、ただの病ではない。




呼吸の浅さ、 肌の色、 目の虚ろさ。


ロウは“あの部屋”で見た実験体たちの姿を思い出した。


胸の奥で、 嫌な予感が静かに形を取る。




国王の横には、 ヴァルガ宰相が立っていた。


いつもの柔らかい笑みを浮かべ、 ロザリンに向かって言う。




「ロザリン。 父上は少し体調が悪いだけだよ。 心配しすぎると疲れてしまう」




ロザリンは安心したように頷いた。




だがロウは、 ヴァルガの目の奥にある“冷たい光”を見逃さなかった。




──あの目だ。 ──あの夜と同じ。




ロウの背筋に、 微かな震えが走った。




任命の儀の日、ロザリンは国王の前に進み、 静かに膝をついた。




「お父様。 私、この者を…… ロウを、私の護衛兵として任命したいのです」




国王はゆっくりとロウを見た。 その瞳は弱々しいが、 どこか深いものを宿していた。




「……ロザリンが選んだのなら…… 私は……信じよう……」




ロザリンの胸が熱くなる。




ヴァルガは優しい声で続けた。




「ロザリンが必要とするなら、私も反対しないよ。 ロウ、妹を頼む」


その声は柔らかい。 だがロウには分かる。




──これは“優しさ”ではない。 ──支配のための声だ。




ロウは胸の奥に冷たいものを抱えながら、 片膝をつき、頭を垂れた。




「ロザリン姫に忠誠を誓います。 命に代えても、お守りいたします」




ロザリンはその言葉に、 静かに微笑んだ。 国王は弱い声で言った。




「……頼んだぞ……ロウ…… ロザリンを……守って……くれ……」


その声は、 まるで何かに怯えているように震えていた。




ロウはその震えに気づいた。




──国王は“何か”を恐れている。


──そしてその“何か”は、この部屋にいる。




ロウの視線が、 自然とヴァルガへ向いた。


ヴァルガは優しい笑みを浮かべたまま、 ロウの視線を受け止めた。


その笑みの奥にある冷たさは、 氷のようだった。




式が終わり、ふたりきりで謁見室の外の廊下に行った瞬間に、


ロザリンは大きく息を吐いた。




「ロウ…… 正式に、あなたは私の護衛兵よ」




ロウは静かに頷いた。




「光栄です。 ロザリン様のそばに立てるなら、僕はそれで十分です」




ロザリンは嬉しそうに微笑んだ。 だがロウの胸の奥では、 別の感情が渦巻いていた。




──国王の異常な衰弱。


──ヴァルガの優しい仮面の裏の冷たさ。


──王城に満ちる、説明できない“影”。




ロウは拳を握りしめた。 姫様を守らなければ。


この城そのものが敵であっても。




廊下に差し込む光の中で、 ロウの影は長く伸びていた。

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