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赤ずきん姫とオオカミ騎士~姫に触れられるのは、ただひとりのオオカミだけ~  作者: 月乃雫


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115/162

第115話 初めて咲いた花

中庭の静けさの中で、ロザリンは胸元に手を当てたまま、しばらく動けずにいた。




胸の奥で、何かがゆっくりと目を覚ますように脈打っている。




「……ロウ……さっきから……胸が、熱いの」




ロウはロザリンの横顔を見つめ、すぐにその異変を察した。




「姫様。無理に抑えようとしないでください。その力は……自然に流れるものです」




ロザリンは小さく頷いたが、胸の奥の熱はさらに強くなる。




まるで──何かが“外へ出たがっている” ように。




次の瞬間。


ロザリンの胸元から、淡い光がふっと漏れた。




「……っ」




ロザリンは思わず胸を押さえる。


ロウはすぐに支えた。




「姫様、大丈夫ですか」




ロザリンは息を整えながら頷いた。




「痛くは……ないの。


でも……苦しくもないのに


……胸が……溢れそうで……」




光は脈打つように強まり、ロザリンの足元へと流れ落ちた。




石畳の上に落ちた光が、ゆっくりと広がっていく。




ロウは息を呑んだ。




「……これは……」




光は円を描くように広がり、その中心から──


白い蕾がひとつ、ゆっくりと立ち上がった。




ロザリンは目を見開いた。




「……花……?」




蕾は震えるように揺れ、ロザリンの胸の鼓動に合わせるように、淡く光を放つ。




ロウは静かに言った。




「姫様の魔力が……初めて“形”を取ったのです」




ロザリンはそっと手を伸ばした。




指先が触れた瞬間──蕾はふわりと開いた。


白い花弁が、光の粒を散らしながら咲き誇る。




「……綺麗……こんな……優しい光……」




ロザリンの声は震えていた。




ロウはその横顔を見つめ、胸の奥が静かに熱くなるのを感じた。




「姫様……これは……あなたの力そのものです」






中庭に咲いた光の花は、王城全体に影響を及ぼした。




廊下のランプが一斉に揺れ、侍女たちが驚きの声を上げる。




「また……光が……!」


「中庭の方から………」


「これ……姫様の……?」




ざわめきが広がる。




研究室の奥で、ヴァルガ宰相は魔力計の針が跳ね上がるのを見て、薄く笑った。




「……花の系統……完全に目覚めたか」




机の上の魔力計は、淡い桃色の光を示していた。




「王妃の娘……“器”が動き出した……これで確信した」




その声は、冷たく、静かで、


底知れない欲望を孕んでいた。






ロザリンは咲いた花を見つめ、ゆっくりと立ち上がった。




「……ロウ。私……この力を……ちゃんと使えるようになりたい」




ロウはその瞳に宿る強さに、静かに息を吸った。




「……姫様。その願い……僕が支えます。どんな形でも」




ロザリンは微笑んだ。




中庭の花が、ふわりと光を放った。




それはまるで──ロザリンの“初めての一歩”を祝福するようだった。

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