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赤ずきん姫とオオカミ騎士~姫に触れられるのは、ただひとりのオオカミだけ~  作者: 月乃雫


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113/161

第113話 王妃の記録書──封じられた真実

そこには、フローラ王妃の柔らかな文字が残っていた。




「この力は、王家の血に宿る“花の系統”。代々、王妃にだけ継がれるもの。」




ロザリンは息を呑む。




(……お母様の……力……)




ロウは静かに言った。




「王妃様の筆跡……間違いありません」




ロザリンは続きを読んだ。




「私は……この力を“兵器”にされることを恐れた。」




「宰相ヴァルガは、王家の魔力を“形にする”研究を進めている。その目的は……

王を超える権力。」




ロザリンの胸が痛む。




ロウはそっとロザリンの手を包んだ。




「姫様……続きを」




ロザリンは深く息を吸い、ページをめくった。




次のページは、王妃の筆跡ではなかった。




鋭く、冷たい文字。宰相ヴァルガのものだ。




「花の魔力は“感情”を媒介に増幅する。」




「王妃の力は未完成。真に完成するのは“次代”の器。」




「王妃の娘──ロザリン。その魔力は、王妃を超える。」




ロザリンの指が震えた。




「……私……狙われていた……」




ロウはロザリンの肩に手を置き、静かに言った。




「姫様……宰相は……姫様の力を利用しようとしていたのでしょう」




ロザリンは唇を噛んだ。




最後のページには、再び王妃の筆跡があった。


その文字は、まるで震える手で書かれたようにかすかに揺れていた。






震える指で、王妃の筆跡を追った。




「ヴァルガに奪われる前に、私は自らの花の力を封じました。」




ロザリンは息を呑む。




「この力を奪われれば、あの男は国をも支配する。王家も、国も、あなたも守れない。」




「だから私は……自分の力を“隠す”ことを選んだのです。」




ロザリンの胸が痛む。


王妃の最後の言葉が続いた。




「ロザリン……


あなたは“花を咲かせる者”。


私よりも強い器。」




「あなたの力は、奪われるためのものではない。守るためにある。」




ロザリンの目に涙が溢れた。




ロウはそっとロザリンの背に手を添えた。




「姫様。王妃様は……その力を“あなたに託した”のです」




ロザリンは涙を拭い、ゆっくりと顔を上げた。




「……ロウ……


私……もう奪わせたくない。


お母様が守ったものを……私の未来も……


誰にも触れさせない」




ロウはそっとロザリンの手を包み込んだ。




「……その想いを……


どうか僕にも分けてください。


姫様が進むなら……僕は、必ず隣にいます」




ロウは一瞬だけ目を閉じ、


そして静かにロザリンを見つめた。




「……姫様……


その想い……僕が守ります。」




ロザリンの胸が、きゅっと熱くなる。


目を伏せ、その手の温度に小さく息を吸った。




二人の間に、王妃の残した花の光が静かに揺れていた。

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