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第10話 姫が選んだ騎士
森の夜気は冷たく、
月明かりがふたりの影を静かに重ねていた。
ロザリンは、決意した言葉を胸の奥で確かめるように
ゆっくりとロウの前に立った。
「じゃあ行きましょう、ロウ。
あなたを……私の護衛として王宮に連れて帰るわ」
ロウは顔を上げた。
その瞳には、揺るぎない忠誠と、
ほんのわずかな影が混ざっていた。
──王城。
──あの場所。
──あの夜の痛み。
胸の奥に沈んだ恐怖は、まだ消えていない。
だがロウは、その影を押し込めるように静かに息を吸った。
「承知しました。
姫様のそばに立てるなら……
どこへでも」
ロザリンはその言葉に微笑んだ。
「ロウ。あなたがいてくれるなら、
私は大丈夫」
その瞬間、ロウの胸の奥にあった影が、
ほんの少しだけ薄れた。
「光栄です…」
ロウは“森のオオカミ”ではなく、
姫に選ばれた騎士になった。
月明かりの森で、ふたりは並んで歩き出した。
姫が選び、騎士が応えた。
その絆は、
これから向かう王宮の闇を照らす光になっていた。




