幕間・地上の戦い
リッド達がルシュムガルに突入した頃、獣王戦会場の武舞台上には空から三つの影が墜ち、砂煙がもうもうと立ち上がっていた。
争っていたホルストに従う鳥人族の戦士達、各部族の獣人族達は突然の出来事に唖然とし、敵味方関係なく動きがぴたりと止まっている。
「一体、この期に及んで何事だ」
獣王セクメトスが砂煙を訝しむなか、レナルーテ王国のエリアス王が「さてな」と険しい表情で切り出した。
「しかし、鳥人族達の様子を見るかぎりでは、予定されたことではないのだろう。おそらく、ライナー殿か、婿殿が上で何かしたのではないか」
エリアスが空に浮かぶルシュムガルを見上げたその時、「リッド・バルディア、あのクソ餓鬼がぁあああああああ」と憎悪の籠もった怒号が轟き、砂煙の中から強力な魔波が吹き荒れ、砂煙が一気に消し飛んだ。
砂が晴れて一望できるようになった舞台上には、落下の衝撃で円形に窪んだ三つの穴が生じており、その中心には白を基調としたホルストとよく似た制服を着た者達が立っている。
セクメトスは、その三人を見て「なるほど」と、合点がいった様子で頷いた。
「あの三人はホルスト配下、守護十翼に属するレッドベア、エンディオ、テスだな。エリアス殿の言うとおり、何かリッド殿にしてやられたのだろう」
「そのようだな。そして、伝令も寄越してくれたようだ」
エリアスがそう答えると、バルディア騎士団の制服を着こなす理人族の耳と尻尾を持ち、そっくりの容姿を持つ三人がセクメトスとエリアスの前にやってきて畏まった。
「セクメトス陛下、エリアス陛下。リッド様直属ブレイド・ベル所属のダンです」
「同じく、ザブです」
「同じく、ロウです」
「この状況だ。礼節は最低限で構わん」
「うむ、手短に申せ」
セクメトスとエリアスがそう告げると、三人はこくりと頷き、代表するようにダンが口火を切った。
「リッド様及び、ライナー様達は頂上付近に辿り着き、今頃はルシュムガル内へ突入しているでしょう。いま我らと落ちてきた守護十翼に属するレッドベア、エンディオ、テスは頂上付近にて我らの足止めをするため出張ってきた者達です。しかし、リッド様が進行を優先して一計を案じ、倒すのではなく地上に落下させた所存。『後は任せます』とのことです」
ダンがはっきり流暢に捲し立てると、セクメトスとエリアスはにやりと笑った。
「了解だ。しかし、出張ってきた守護十翼を倒すのではなく、進行を優先して叩き落とすとはな」
「うむ、婿殿らしいやり方だ。あの様子からして、術中にはまって落とされた者はさぞ悔しいのであろうな」
セクメトスの言葉に続いたエリアスは、最初に怒号を上げたエンディオを見やった。
すると、エンディオに狐人族の耳と尻尾を持つ少年と少女が襲い掛かっていき、テスにも牛人族の少年と少女、レッドベアには熊人族の少年と狼人族の男が仕掛けていく。
「あれは……」
エリアスが目付きを細めると、ダンが「続けて申し上げます」と切り出した。
「守護十翼のエンディオには、ブレイド・ベル所属のラガードとノアール。テスには同じくトルーバとベル。レッドベアにも同じくカルア、そして狼人族部族長ジャッカス様が上空から引き続き交戦中です。どうかご支援、ご助力願います」
「了解だ」
二つ返事をしたのはセクメトスだ。
彼女は不敵に笑って周囲を見渡し、援護をするよう実力者を選定して呼びかけた。




