激突
「こ、これは……」
「うぐ……」
「うわ、うわわ。吹き飛ばされちゃうよ」
レウスが繰り出した大技によって生じた衝撃波と爆風に襲われた僕とヨハンは、吹き飛ばされないよう咄嗟に足を踏ん張った。
フェイに至っては飛ばされないよう、僕の肩にしがみついている。
激しい爆発で広間全体が揺れているようだ。
衝撃波と爆風が収まると、僕達は立ち上がる爆煙の前に立つレウスの下へ駆け寄った。
「レウス、やるならやると先に言ってよ」
「そうだぞ。いくら僕とリッドでもさすがに驚くぞ」
「そうだ、そうだ。僕なんか吹き飛ばされるところだったんだよ」
僕、ヨハン、フェイが口を尖らせて捲し立てるも、レウスは正面から目を離さない。
「騒ぐな。お前達も前を見ろ」
「前……?」
言われるがまま正面を見やれば、爆煙の中から首を傾げたガレスが「あうぁあ……」と呻き声を上げ、剣を引きずりながらぬるりと現れた。
驚くべきことに、暴君の槌撃【タイラント・ハンマー】なる大技をまともに浴びたはずなのに損傷が見当たらない。
その姿を見るなり、レウスが忌々しそうに舌打ちした。
「やはり、あの程度では駄目か」
「あの程度って言う割には、相当な威力だったと思うんだけど。まさか様子見で加減した、とか?」
僕達との戦闘を振り返ってみても、レウスが繰り出した大技の威力はかなりのものだったはずだ。
僕の問い掛けに、レウスが小さく頭を振った。
「残念だが加減はしてねぇ。もっとも、お前達との戦いで消耗はしているがな」
「……つまり、あの耐久力はガレス本体が持っているということだね」
「そういうことだ」
彼が頷くなか、ヨハンが「で、でも……」と切り出した。
「レウスが消耗していたからとはいえ、あの一撃を受けて涼しい顔をしているのはいくら何でも不自然だ。生前のガレスは、あそこまで打たれ強い戦士ではなかったはずだぞ」
「それは多分……」
返事を切り出したのはフェイだ。
彼はじっとガレスを見つめ、憐れむような目付きとなった。
「遺体に翡翠晶を埋め込んで動かしているだけだから、痛みなんて感じないんだと思う。あと、直撃して間もない時は損傷があったんだろうけど、即座に翡翠晶が再生させたんじゃないかな」
「そ、それじゃあ、まるっきり屍人【ゾンビ】じゃないか」
ヨハンが真っ青になるなか、ガレスがぐるりと首を動かして僕達をなめるように見渡した。
「今の攻撃を敵対行動と見なし、レウス・パドグリーを処分対象と確定。残りの二名と合わせ、排除行動を開始する」
無機質に告げた瞬間、ガレスは一気に間合いを詰めてきて、引きずっていた剣を横薙ぎに振るった。
翡翠晶の力で動いている割には速くて鋭い太刀筋だ。
でも、躱せないほどじゃない。
僕とフェイ、レウス、ヨハンはそれぞれ咄嗟に躱し、ガレスを囲うように間合いを取った。
ガレスはゆっくりと振り向き、僕達の立ち位置を確認している。
ガレス本人は死んでいて意識はすでにないみたいだけど、戦士として研鑽を積み、体に染みこんだ動きは可能なようだ……だとしても、翡翠晶の力で動いているのであれば、やることは決まっている。
「レウス、ヨハン」
僕は大声で呼びかけ、そのまま言葉を続けた。
「ガレスが翡翠晶の力で動いているのなら、胸に埋め込まれた翡翠晶を破壊すれば倒せるはずだ。三人……」
「ちょっと、リッド。僕を忘れないでよ」
肩に乗るフェイが不満そうに頬を膨らませた。
「ごめんごめん。僕達四人の攻撃を同時に打ち込めば、翡翠晶を破壊してガレスを倒せるはずさ」
僕が改めて告げると、レウスが鼻を鳴らした。
「言われずともそのつもりだ。だからこそ、お前達と協力する道を選んだのだからな」
「了解だ。やるだけやってみよう」
ヨハンの勢いある返事が聞こえたその時、ガレスが頭の上に剣を振りかぶって僕のところに突進してくる。
「お前。何故か気に、入らない。排、除する」
「奇遇だね、僕もお前のことは気に入らない。引導を渡してやるよ」
ガレスが振り下ろした剣を僕は魔障壁で受ける。
広間に鉄とガラスが激しくぶつかったような甲高い音が響き、魔波が吹き荒れた。




