ルシュムガルの魔力
「……」
レウスが扉の取っ手を回し、体重を掛けるように中へと押していく。
鉄が引きずられるような音と共に扉は開かれ、燃料庫の中が少しずつ見えてくる。
生じた隙間から燃料庫の薄気味悪い魔力が全身にまとわりつくような感覚に襲われ、身の毛がよだつ。
この先の燃料庫、一体何があるというんだろうか。
「よし、開いたぞ」
「これは……」
「これが燃料……」
彼が押し開いた扉の先に広がる光景に僕、ヨハンはごくりと喉を鳴らし、恐る恐る燃料庫の中に足を踏み入れた。
なお、フェイは僕のすぐ隣の宙を浮いている。
燃料庫はルシュムガルの内部とは思えないほど巨大な円柱状の広間となっている。
端から端までだけでも相当な距離があるし、天井は高い吹き抜けとなっていて、外なのか偽物なのか青空と太陽が見えた。
中央に目をやれば、儀式で使うような大きい台座が設置されている。
ここからは少し遠くて見えづらいが、台座からは木の根のようなものが生え、周囲の床を這っているようだ。
台座の中心には、牢宮【ダンジョン】で見たことがある雪の結晶みたいな『核』らしきものが青白い光を放っている。
あれがルシュムガルに魔力供給を行っているのだろうか。
でも、それ以上に目を引くのは広間の壁から台座を囲むように、びっしり生えている色とりどりの夥しい数の尖った水晶のような物体だ。
船底に張り付いた藤壺【ふじつぼ】みたいで、集合体恐怖症【トライポフォビア】を刺激されて寒気が走るし、何よりも漂ってくる魔力も気持ち悪い。
「この水晶、一体なんなんだ」
ヨハンが近くにあった赤水晶の側に寄って触ろうとするが、「迂闊に触るな。お前も取り込まれるぞ」とレウスが強い口調で発した。
「お前も取り込まれる……?」
ヨハンは首を傾げながら赤水晶を訝しむが、みるみる表情が真っ青になって「こ、これって……」とたじろいで絶句した。
何事かと、僕も側に寄って赤水晶を覗き込み「な……」と言葉を失った。
赤水晶の中には僕やヨハンと変わらない獣人族の女の子が眠るように目を瞑り、閉じ込められていたのだ。
耳の形からしておそらく狼人族か狐人族だろうか。
ハッとして周囲の水晶を見渡せば、どれもこれも水晶の中に獣人族の人達が目を瞑って眠るように閉じ込められている。
いや、獣人族だけじゃない。
人族らしい姿もある。
「まさか、この広間全部の水晶に……」
僕とヨハンが唖然とし、部屋をぐるりと見渡すなか「言っただろう」とレウスが切り出した。
「ルシュムガルは数多の獣人族が人柱となって蘇ったってな」




