リッド対レウスの決着
「レウス、一つ言っておく」
魔刀の柄をゆっくり掴みながら、正面に立つ彼を見据えた。
「この姿は力の加減ができないんだ」
「……だからどうした」
「死にたくなければ耐えてほしいってことさ」
僕は持てる魔力を魔刀へと流し込み、強烈な魔力付与を施す。
全身を迸る白い魔力が勢いを増し、火柱の如く揺らめき上がる。
凄まじい魔波が衝撃波を起こして吹き荒れ、足下の石片が吹き飛ばされて下地の土がみるみる剥き出しになっていく。
「なるほど、大した魔力だ。いいだろう、リッド・バルディア。お前の力を見極めてやる」
レウスは衝撃波や飛んでくる石片にも動じない。
それどころか彼の全身を覆って揺らめく青白い炎の勢いが増し、火柱の如く立ち上がった。
「俺の業灼剣が勝つか、お前の魔刀が勝つか。どちらが強いか試してみようじゃないか」
「好きにすればいい。でも、どうなっても知らないぞ」
僕とレウスが起こした魔波で生じた衝撃波が、二人の間で衝突し、白と青白い魔力が雷鳴を響かせて宙を迸っていく。
僕が魔刀に魔力を込めるように、レウスも業灼剣に膨大な魔力をつぎ込んでいるらしい。
力と力の真っ向勝負、か。
だとしても、僕は負けるわけにはいかない。
攫われたファラと母上、アスナを必ず救い出し、必ずホルストに僕の家族に手を出した報いを受けてもらう。
呼吸を整え、レウスを睨んだ。
「僕は、僕の家族に手を出した者を決して許しはしない。そして、その邪魔をするなら押し通る」
「問答無用。その決意、示してみろ」
「……いくぞ」
僕は全身を一瞬だけ脱力させ、魔刀を素早く抜刀した。
「斬魔翔・魔刃閃【まじんせん】」
鞘から抜刀された瞬間、刀身に迸る白い魔力が一気にどこまでも伸びていく。
僕達の立つ武舞台を囲む会場を貫き、崩すほど巨大な刃が横一閃の斬撃となってレウスに迫っていった。
「そうだ、そうでなくては面白くない。牙狼炎鷲【がろうえんじゅ】・業翼炎狼牙」
レウスの全身から立ち上がる青白い炎が形を変え、瞬く間に翼を持つ狼に変貌し、こちらに目にも止まらぬ速さで突進してくる。
しかし、僕に届く遥か手前で伸びた魔刃閃の刃が彼を襲った。
「ぐぉおおおおおおおお」
咆吼が轟き、衝撃波が吹き荒れた。
「なんてやつだ。魔刃閃を正面から受け止めるなんて」
「この程度か、この程度で俺は止められん。俺に勝てぬ奴が、あいつに勝てるわけもない。家族を、全てを諦め、ホルストに頭でも下げるか、リッド・バルディア」
「そんなこと絶対にごめんだよ」
僕は大声で答えながら魔刀へ更に魔力を注ぎ込んでいく。
魔刃閃の白い刃は更に太く、長く、勢いを増していくが、一方でレウスの青白い炎も勢いを増している。
そしてその時、「ぬぉおおおおおおお」とレウスが咆吼し、青白い炎が白い刃を掻き消した。
「どうやら俺の勝ちらしいな」
レウスはにやりと口元を緩めるが、その体を覆っていた青白い炎は勢いが弱まっていく。
程なく、翼を持つ狼の姿から、彼は普段の状態へと戻った。
「まだだ。まだ終わってない」
僕は振り抜いた魔刀をそのまま上段に構え、再び魔力付与で巨大な白い刃を纏わせた。
「な、なんだと。まだそれだけの力が残っているのか」
レウスが天を貫く魔刃閃を見て、目を丸くしてたじろいだ。
「これが僕の、いや僕達の魔力だ。斬魔翔・魔刃閃、二の太刀」
魔刀を振り下ろし、白い刃が真っ直ぐにレウスへと迫っていく。
「これしきのことで、俺はやられんぞ」
彼は咄嗟に業灼剣を構え、魔刃閃の一撃を受けた。
魔力の衝突が衝撃波と雷鳴を起こし、周囲に狂風が吹き荒れる。
でもその時、レウスの業灼剣にぴしりと亀裂が入る。
「馬鹿な、業灼剣が耐えきれないのか」
「これで決着だ、レウス」
白い刃が業灼剣を断ってレウスの左半身を襲った。
しかし次の瞬間、僕の手に持つ魔刀からもぴしりと異音が生じる。
魔刀の刀身全体に亀裂が走り、瞬く間に砕け散ってしまう。
同時に魔刃閃の発動で生じた白い刃は、魔力の煌めきとなって霧散していった。
「……認めよう、俺の負けだ」
レウスは傷を負った左半身を右手で押さえたまま、力なく膝から崩れ落ちてうつ伏せに倒れ込んだ。




