第3話:「女性から誘うなんて」
<ねえ、アーネ、聞いて! この間、ラスティリアード様がうちを訪ねて来られて……>
「え?!」
<ああ、父に御用があったようなんだけど……>
「ああ、そう……」
<それで、お茶をお相手して差し上げることになって……>
「えー! 二人きりで? それで?」
<家督相続式の時より、ちゃんとお話しできたの。私の焼いたエトーもお出しできたし……>
「え? ロージェのエトーって、人参入ってるヤツ?」
<ええ>
「で、あいつは?」
<おいしいって言って頂けたわ>
「あ……そう……あいつ、食べたんだ……」
<何?>
「いや! 何でもない。それで?」
<やっぱり、瑠璃色の瞳が印象的だったわ……>
「……そうかな?」
<そうよ!>
「え?」
<あ……その……。それで……それでね……>
「うん」
<『あなたの瞳の方が、宝石のような美しい輝きをしていますよ』って言って頂いて……>
「……うわ……」
<何?>
「ううん、何でもない! ちゃんと印象付けられたんじゃない?」
<……そうかしら?……>
「……で?」
<で?って?>
「次はどうするの?」
<次?>
「え? そういう流れじゃないの? 私に何かお願いとか……」
<あ……その……私は……ただ、聞いて欲しかっただけ……>
「……ちょっとロージェ……」
<え?……何?……>
「今、チャンスなのよ。話もできて、エトーも食べてもらえて、瞳も……褒めてもらえて……。次に行くしかないでしょ!」
<次? 次ってどんな?>
「デートよ」
<そんな!……まだ早すぎるわ……>
「何言ってるの? 遅すぎるくらいよ」
<だって……それに女性から誘うなんて……>
「理由が要るんでしょ? 理由ならあるわ」
<何?>
「……ロージェ、これはあなたのためを思うからこそ、言うわね……」
<……何?……>
「……あいつ……人参嫌いなの……」
<え……ええっ?!>
「……そう……」
<そんな?!……どうしましょう?!>
「そう! それよ!」
<……え?……>
「今、嫌いなものを食べさせて申し訳ない。お詫びしたいって思ったでしょ?」
<……ええ……>
「『アーネから聞きました。嫌いなものを食べさせてしまって大変申し訳ありません。お詫びに、もう一度チャンスを頂けないでしょうか?』……これよ!」
<……え……チャンスって……>
「あーもう!……『もう一度、私のエトーを食べては頂けないでしょうか?』でどう?」
<……そう……ね……>
「私も付き合うわ。『お気遣い無用です』って言われそうだから。三人なら、外で会っても大丈夫でしょ?」
<……そうね……お願いできる?……>
「もちろん」
<ありがとう、アーネ……本当に感謝してるわ。感謝してもしきれないくらい>
「何言ってるの、友達でしょう。それに……もしかしたら、ロージェとは義従妹になるかも知れないしね」
<な、何言ってるの?! もう!>
「初心ねぇ……かわいい!」
<茶化さないで!>
「はいはい」
<……それにしても……人参がお嫌いだったなんて……>
「……?……どうして笑ってるの?……」
<いえ……何か、かわいらしいなって思って……>
「はー! そうなるんだ……」
<何?>
「いいえ! 何でもございません!」
お読み頂きましてありがとうございます。ロージェ(ロージェスタ)とアーネ(アルキュオネ)の会話劇はこれで一区切りとなります。なお、次の外伝として、アルキュオネを主人公にした物語「もう一人のクロネッカ」を構想中です。宜しければお付き合い下さい。




