ドレス姿でCry……ではなくFlyだった
いや、お姫様抱っこされているとはいえ、屋根の上をひょいひょいと走る少年に、
「落とさないでよ!」
半分悲鳴を上げながら、必死に抱き着いていた。
「大丈夫にゃ! 万が一にも、人間界の飼い主を落として怪我をさせたりしたら……」
そう呟いた後、少年は顔を青ざめさせて、
「僕、殺されるにゃ!」
と叫んだ。
「物騒!!」
「兄上、普段は温厚にゃんだけど、飼い主のことになると怖いにゃ!」
そう言って、にぱっと太陽みたいな笑顔を浮かべた。
何故だか、チャチャと話しているような気持ちになる。
「ねぇ……何故、あなたは私を人間界の飼い主って呼ぶの? あなたは人間じゃないの?」
質問する私に、少年はいたずらっ子の笑顔を浮かべると、
「それは、お城に着いてからにゃ!」
と答え、さらにスピードを上げた。
「怖い、怖い! チャチャ、怖いよ!」
「懐かしい呼び名にゃ!」
そう言って笑う彼を見上げたその時、道を歩いている人たちが、
「チャールズ様、遂に身を固める決心がついたのですか?」
と声を掛けてきた。
すると、『チャールズ様』と呼ばれた彼は速度を落とし、街を歩く人たちを見下ろすと、
「怖いこと言わにゃいで! 兄上に聞かれたら、殺されるにゃ!」
そう言って、また顔を青ざめさせた。
(どんだけ怖いんだ? チャールズ様の兄上は……)
そんなことを考えながら、私はチャールズ様とやらにお姫様抱っこされたまま、屋根伝いに王城の前までやってきた。
王城も屋根伝いに行くのかと思いきや、チャールズ様とやらは王城の近くに着くと地面に降り、私をゆっくりと下ろした。
「人間界の飼い主を抱っこしてたのがバレても、殺されるにゃ。それに、王城には結界が張られていて、正門から入らにゃいと弾かれるにゃ」
そう言って、チャールズ様とやらは私に手を差し伸べた。
「?」
差し出された手を眺めていると、
「手を繋いでないと、王城には入れにゃいよ」
そう言われて、私は首を傾げた。
「僕の仲間なら、入れるにゃ」
屈託のない笑顔に促されるように、私はチャールズ様とやらと手を繋いで歩き出した。




