第七 五人を長持へ
街道の宿場には、荷を小分けにして運ぶための長持がある。五つの箱を縦に重ねて一つの蓋で閉じ、坂の手前で箱ごとに分けて小さい荷車に移せる作りで、宿場の大工が作る。箱は一つずつ人が屈んで入れる大きさで、箱と箱のあいだは板一枚である。旅団が冬を越す宿場にもそれがあって、これは語った轍方が、その宿場で荷車を引いた話だという。宿場の名は語らなかった。
宿場に荷主の女房がいて、亭主は荷について王都へ上り、一月は戻らなかった。女房は器量がよく、口もよく、亭主の留守に五人が言い寄った。宿場の代官、教会の司、機構の下役、米を扱う商人、長持を作った大工である。五人は一人ずつ、別の日に、別の口実で戸口へ来た。代官は宿場の帳のことで、司は家の清めのことで、下役は届け出のことで、商人は米の値のことで、大工は長持の蓋の建てつけのことで来て、帰るときには五人とも同じことを言った。女房はその一人ずつに、同じ夜の別の刻を言った。代官には日暮れ、司にはその一刻あと、下役にはそのまた一刻あと、商人には夜半、大工には夜半の一刻あとで、五人とも、自分のほかに誰もいないつもりで帰った。
その夜、女房は土間の長持の蓋を開け、箱を五つとも空にして待った。日暮れに代官が来た。女房は代官を上げて酒を出し、酒が回らないうちに戸が叩かれた。亭主が戻った、と女房は言った。代官は上着を抱えて土間へ下り、女房は長持のいちばん下の箱に代官を入れて、箱の蓋を閉めた。戸を開けると司が立っていた。女房は司を上げて酒を出し、一刻たたないうちに戸が叩かれた。亭主が戻った、と女房は言った。司は長持の下から二つ目の箱に入った。下の箱で代官が息を殺していたが、司は気づかず、代官も声を出さなかった。
下役は三つ目の箱に入り、商人は四つ目に入った。商人は入るときに、米の俵より狭い、と言った。夜半の一刻あとに来た大工は、五つ目の箱に入るときに、作りのよい長持だ、と言った。自分が作ったのだから当たり前だった。女房は五つの箱を重ねて大きい蓋を閉め、蓋に荷札を付けた。荷札には、王都の亭主宛て、と書いた。それから灯を消して寝た。長持の中では五人が五つの箱で朝を待ち、箱と箱のあいだで息の音がして、誰も自分の上と下に誰がいるかを知らなかった。代官は下役の咳を亭主の咳だと思い、司は商人の寝言を祈りの声だと思った。
朝、女房は旅団の轍方を呼び、長持を荷車に積んで継ぎ場へ運んでくれ、と頼んだ。轍方は長持を担ぎ、重いので若い者をもう一人呼んで、二人で荷車に載せた。載せるときに中で何かが動いたが、轍方は米だと思った。継ぎ場には坂を越える荷車が並び、荷を小分けにする刻だった。女房は継ぎ場の荷改めに、王都へ送る長持だが中身を確かめてから送りたい、と言った。荷改めが蓋を開けた。いちばん上の箱から大工が出て、四つ目から商人が出て、三つ目から下役が出て、二つ目から司が出て、いちばん下から代官が出た。五人とも上着を抱え、五人とも一晩分の皺を顔に付けていた。継ぎ場の荷運びたちが手を止めて見ていた。
代官は宿場の長なので誰も何も言わず、司は教会へ戻り、下役は役所へ戻り、商人は米の荷のほうへ歩いて行った。女房は荷札を外して、長持は送らない、と荷改めに言った。五人のうちで口を利いたのは大工だけで、長持の蓋を撫で、箱の角を一つずつ指で確かめてから、荷改めに言った。長持の作りがよかった。
女将の字で、五年前の実りの月、旅団の轍方、長持は旅団が買った、とある。
私が足したのは、荷札のくだりだけだ。書き取りには、宛名は書いてない。




