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五十万円分の教え①
電車に乗ってから、正語さんに連絡くらい入れておこうと思った。
そこで気づいた。
スマホは、家に置きっぱなしだった。
やはり、衝動だけで動くものではない。
地下鉄を降りると、ほとんど人気がなかった。
平日はスーツ姿の人々が行き交う通りも、日曜日は人影がまばらだ。
閑散とした大通りで、信号機だけが律儀に色を変えている。
宇佐美も赤で止まった。
昔なら、車が来ていなければさっさと渡っていた。
だが、さすがに仕事が仕事だ。
ルールは守るようになった。
どこで誰が見ているか分からない。
街にどれだけ防犯カメラがあるかも知っている。
長い赤信号。
立ち止まっているうちに、我に返った。
連絡もなく行くのは、やめたほうがいい。
留守かもしれないし、誰か来ているかもしれない。
男か女かは、知らないけれど——。
踵を返し、駅へ向かった。
その途中で、路上パーキングに停まっている見覚えのある車に気づく。
黒いBMWのコンバーチブル。
足が止まった。
思わず駆け寄り、ナンバーを確認する。
間違いない。
強盗騒ぎのあった家に停まっていた車だ。
ふいに、背後から声をかけられた。
「何か、ご用ですか」
振り返る。
あの男がいた。
BMWを運転していた男。




