別件ということで
家事代行の掃除が終わるころ、宇佐美は部屋へ戻った。
完了書類にサインをし、スタッフたちを見送る。
一人になると、ベッドに腹ばいになり、石黒へ電話をかけた。
「宇佐美か。おまえ、本当に俺のこと好きだな」
電話の向こうで笑い声があがる。
「来いよ。近いぞ。みんなでサッカー観てる」
「……電気屋の件です」
「おまえ、まだ関わってるのか」
声の調子が変わった。
「強盗事件は終わりました。老人が出頭して、犯行を認めたそうです」
「なら終わりだろ」
「そうでしょうか」
石黒が黙った。
「あの家には、電気屋の関係者が出入りしていた。酒と薬も絡んでいた。それが、老人による強盗事件で突然片づいたんです」
「何が言いたい」
「身代わりじゃないかと思っています」
「証拠は」
「ありません」
「じゃあ、首を突っ込むな」
「薬物以外の線からなら、どうです」
一瞬、間があった。
「……どういうことだ」
「強盗事件に電気屋が関わっているなら、薬物事件とは別件でしょう」
「おまえな……」
「捜査一課が薬物事件に割り込むことにはなりません」
石黒が小さく息を吐いた。
「俺が首を突っ込めば、マトリにも組対五課にも仁義が立たない」
「つまり、強盗との関係が出れば別ですね」
「九我さんが帰るみたいだから、切るぞ」
また一緒にいるのか。仲良いな。
電話が切れた。
石黒は何も約束しなかった。
だが、強盗との関係が出れば別だという宇佐美の考えを、最後まで否定もしなかった。




