夢
――その夜――
俺は、また同じ夢を見た。
暗闇がどこまでも続く。
上も下もない
地面もない
空もない
それなのに俺は、そこにいた
身体があるのかどうかさえ分からない。
不思議な場所だった。
そして目の前には 巨大な青い星が浮かんでいる
白い雲
青い海
緑と茶色の大地
地球、誰かに教えられたわけでもないのに、そうだと分かった。
『第七領域――正常』
女性の声がした
どこから聞こえているのか分からない。
遠くから響いているようにも
すぐ耳元で囁かれているようにも聞こえる。
『生命循環――正常』
地球の表面に、無数の光が現れた。
一つ
また一つ
次々と生まれていく。
そして、いくつかの光が消えていく。
生まれる
消える
また生まれる
また消える
その一つ一つが、人間の命なのだとなぜか俺は知っていた。
『因果律――正常』
声が続く。
『空間座標――正常』
そして、
『時間軸――』
そこで声が止まった。
「…………?」
静寂
しばらくして、今までとは違う声色で告げられた。
『――異常を検知』
ぞくり
理由もなく、全身が粟立った。
違う、何かが違う
何が?分からない、なのに、知っている。
これは――
起きてはいけない
『――様』
声が聞こえた。
「……?」
『――――様』
誰かが俺を呼んでいる
名前の部分だけが、水の中で聞いているようにぼやけていた。
『聞こえておられますか』
「誰だ?」
返事はない。
『お戻りください』
「どこに?」
そう問いかけた瞬間
目の前の地球に
ピシッ――――
小さな亀裂が入った。
「……え?」
ガラスに石をぶつけたような、細い亀裂
それがゆっくりと枝分かれしていく。
『もう――』
女性の声が震えた
『限界です』
ピシッ――――
ピシッ――――――
亀裂が世界中へ広がっていく。
「待て」
なぜか、怖かった。
「何が起きてる?」
返事はない。
「おい!」
手を伸ばす、届かない
地球が遠ざかっていく。
「待て!」
…バキッッッ――――
世界が、砕けた。
「…はっっ!」
勢いよく身体を起こした。
「はっ……はっ……」
息が荒い。心臓が激しく脈打っている
額を触ると、じっとり汗をかいていた。
目の前には見慣れた部屋
机、椅子、床に転がったゲームのコントローラー
脱ぎっぱなしにしていた制服。
「……夢」
自分に言い聞かせるように呟く
最近、何度も見る、少しずつ内容は違う。
けれど、必ずあの場所にいる
そして必ず、誰かに呼ばれる
名前だけは聞き取れない。
「……なんなんだよ」
枕元のスマホを取った
画面をつける。
午前六時十一分
「早……」
アラームが鳴る一分前だった
もう一度寝るには短すぎる
俺はベッドから降り、カーテンを掴んだ。




