表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
48/65

第二節 ― 外界の記録、魔大陸の庇護

 黒冠儀の間へ上げる。


 その言葉が帰属裁定所に落ちてから、部屋の空気は少しだけ変わった。


 審理が終わったわけではない。

 むしろ、ここから先が本番なのだと、誰もが理解していた。


 裁定官たちは席を離れず、記録官たちは新しい黒晶板を用意する。壁際の黒晶灯が淡く明滅し、境界円の光は一度消えた。けれど床に刻まれた円は、まだノアの足元に残っている。


 被告ではない。


 そう言われた。


 それでもノアは、円の中央に立ったまま、自分が何か大きな秤の上に置かれているような感覚を拭えなかった。


 自分の重さではない。

 自分の願いの重さだ。


 帰りたい。


 その言葉が、どれほどのものを動かしてしまったのか、今のノアにはまだ測りきれない。


 裁定官の一人が告げた。


「黒冠儀の間へ移す前に、外界記録と王都庇護記録の照合を行います。以降の発言は、黒冠裁定資料として扱われます」


 黒冠裁定資料。


 その響きだけで、ノアの喉が乾いた。


 自分のことが、また資料になる。


 だが、今度は逃げるように目を伏せなかった。


 オルフェが記録してくれる。

 自分の声も、残される。


 それを知っているだけで、立っていられる気がした。


 ヴィクトル=ヘイズが、静かに一歩進み出た。


 外界申立人席の横に、白い書類箱が置かれる。黒冠宮の黒い石床の上で、その箱だけがひどく白く、清潔に見えた。


 ヴィクトルは白手袋の指で封を解く。


 動作に乱れはない。

 急がない。

 焦らない。

 自分の持つ記録が正しいと、疑っていない手つきだった。


「外界記録院より、対象者ノア=リントベルに関する記録写しを提出します」


 ノアの影が微かに震えた。


 リィゼがこちらを見たが、ノアは首を横に振った。


 大丈夫、ではない。

 けれど、ここで耳を塞ぐわけにはいかない。


 ヴィクトルは書類を開いた。


 薄い白紙に、青黒い文字が整然と並んでいる。外界式の書類。ノアには見覚えのある形式だった。欄、番号、署名欄、確認印。あまりにも懐かしい。あまりにも遠い。


「対象者、ノア=リントベル。外界記録院登録あり。所属圏、ヴァルテリア西方大陸外洋記録区。職能記録、補助記録官。渡航記録、確認済み。事故発生記録、確認済み」


 補助記録官。


 その言葉が、ノアの胸を深く刺した。


 自分は、そこにいた。


 外界にいた。

 仕事をしていた。

 書類を読んでいた。

 記録を整えていた。

 漂着者でも、仮保護対象でも、境界案件でもなかった。


 ただ、ノア=リントベルとして生きていた。


 ヴィクトルは続ける。


「対象者の魔大陸漂着は、外洋事故による一時的所在不明状態から派生したものと判断されます。したがって、魔大陸滞在は恒久的移住または亡命ではなく、一時的異常状態です」


 一時的異常状態。


 ノアは、唇を噛んだ。


 その言葉は冷たかった。


 メギド=ノクスで出会った人々。

 ヴァル=クレイアの灰角の港。

 リィゼの手。

 ナハト=リムの無籍者たち。

 グリム=ラハドの朱墨灯。

 ザイ=ヴェルムの黒鍵。

 影の縁留め。

 自分で拒否したこと。

 自分で選んだこと。


 それらすべてが、「異常状態」の中に押し込められたように聞こえた。


 ヴィクトルの声は、なおも穏やかだった。


「さらに、対象者には魔大陸構文との接触、黒潮反応、旧道呼称干渉、現地庇護術式による影縁接続が確認されています。外界記録との整合性を回復するため、接触汚染疑いとして隔離、照合、安定化処置が必要です」


 ノアは目を伏せそうになった。


 接触汚染。


 その言葉は、第八話で見た書類にもあった。


 今なら、より強く分かる。


 ヴィクトルにとって、自分は外界へ戻るべき人間なのではない。


 外界記録から逸脱し、異物に触れ、照合が必要になった対象なのだ。


 彼は助けようとしているのかもしれない。


 でも、その助けの形は、ノアを人ではなく、ずれた記録として扱っている。


「以上により」


 ヴィクトルは書類を閉じず、裁定官へ向き直った。


「外界記録院が対象者を回収し、外界記録との照合、隔離保護、帰属回復処理を行うのが妥当と考えます」


 帰属回復。


 その言葉は、本来なら優しいはずだった。


 帰る場所を戻す。

 失った所属を取り戻す。

 外界に存在したノア=リントベルへ戻る。


 なのに、ノアにはそれが、ここにいる自分を消す言葉に聞こえた。


 ヴィクトルは静かに続ける。


「記録とは、帰る場所を保証するものです。彼女には外界の記録があります。ならば、外界へ戻すのが筋でしょう」


 部屋は静かだった。


 その言葉は整っていた。


 外界の理屈としては、きっと正しい。


 ノアが外界に記録を持つなら、外界へ戻す。

 事故で漂着したなら、事故の前の状態へ戻す。

 異常な接触があるなら、隔離して調べる。


 筋は通っている。


 だからこそ、ノアは怖かった。


 通っている筋の上で、自分の声が踏まれることがある。


 そのことを、もう知ってしまったからだ。


 リィゼが口を開きかける。


 だが、先にセヴラが立った。


 黒い外套の裾が、境界円の光を吸うように揺れる。


「閉門監察として、発言します」


 裁定官が頷く。


「許可します」


 セヴラはヴィクトルを見た。


「記録が帰る場所を保証する。外界の理屈としては理解します」


 ノアは少し意外に思った。


 セヴラは最初から否定しない。


 だが、その声は冷えていた。


「ですが、その記録が、本人の意思より強く働くなら、それは帰る場所ではなく檻です」


 ヴィクトルの微笑が、ほんのわずかに薄くなる。


「檻、ですか。随分と強い表現です」


「ザイ=ヴェルムで、あなたは対象者を回収すると言いました」


「正式な手続き上の用語です」


「その正式な用語が、本人の拒否より先に動くなら、檻と呼ばれても仕方ありません」


 リィゼが、少しだけ息を吐いた。


 味方ではない。

 それでも、今この瞬間、セヴラはヴィクトルの側には立っていない。


 ノアはその事実を、静かに受け止めた。


 ヴィクトルは、柔らかく首を傾げる。


「では、あなた方は彼女をここに留めるのですか」


 セヴラは即答した。


「留めることと、渡さないことは違います」


 その言葉は、黒冠宮の石床に落ちて、長く響いたように感じられた。


 ヴィクトルは目を細める。


「外界へ渡さない。帰還路も開かない。閉門派としては、非常に都合のよい主張ですね」


「都合で言っているのではありません」


「では、何で」


「恐れと責任です」


 セヴラの声は、揺れない。


「外界へ渡せば、対象者ノアの意思は外界記録の中で後回しにされる恐れがあります。帰還路を無条件に開けば、外界からの介入路、旧道の呼称路、名裂きの誘導路として使われる恐れがあります」


 彼女は、ノアを見た。


「どちらも危険です」


 ノアの胸が重くなる。


 外界へ渡さない。

 でも帰還路も開かない。


 助けられているのか、止められているのか。


 その両方だった。


 ヴィクトルが静かに言う。


「恐れで人の帰還を妨げるのは、庇護と言えるのでしょうか」


 セヴラの目が、わずかに鋭くなる。


「本人の願いを壊して閉じるなら、それは庇護ではない。私はすでに、そう判断しました」


 ザイ=ヴェルムでの言葉が、ノアの中に蘇る。


 本人の願いを壊して門を閉じるなら、それは守護ではない。

 ただの恐怖だ。


 セヴラは続けた。


「ですが、恐れに根拠があるなら、無視することもまた責任ではありません。私は、ノアさんを外界へ引き渡すべきではないと考えます。同時に、彼女を通じた帰還路の形成を無条件に許可すべきでもないと考えます」


 ノアは、その言葉を聞きながら、自分がどこにも完全には置かれていないことを感じていた。


 外界は、自分を外界記録へ戻そうとする。

 閉門派は、自分を危険な線として見ている。

 王都は、その両方を裁定の場に置く。


 誰か一人の言葉に身を預ければ楽かもしれない。


 でも、ヴィクトルに身を預ければ、回収される。

 セヴラに身を預ければ、帰還路は閉じられるかもしれない。


 どちらも完全な答えではない。


 ノアは、胸元の仮保護名札を握った。


 ノア。


 今は、その名で立つ。


 けれど、自分はどこに属しているのだろう。


 外界か。

 メギド=ノクスか。

 そのどちらでもない境界か。


 裁定官がオルフェへ視線を向けた。


「王都庇護記録を提示してください」


「はい」


 オルフェは、外界の白い書類箱とは対照的な、黒い記録筒を机に置いた。


 封印を解くと、黒晶板が浮かび上がる。そこには、外界の書式とはまったく違う文字が刻まれていた。欄で区切られているというより、出来事ごとに結び目が作られているような記録だった。


「対象者ノアに関するメギド=ノクス側庇護記録を提示します」


 オルフェの声は、いつもより少し低かった。


「灰角の港ヴァル=クレイアにて、漂着者として発見。発見者、リィゼ=ノルカ。対象者は名の不安定化、黒潮反応、外界記録の断裂兆候を示していました」


 ノアは、最初に目覚めた港を思い出した。


 灰色の空。

 黒い潮。

 知らない岸。

 自分の名前が、喉の奥で欠ける感覚。


 そして、リィゼの声。


 あんた、呼ばれたい名はある?


「拾名手続きに入り、仮保護名ノアを設定。以後、対象者は仮保護名によって自己応答可能となりました」


 自己応答。


 それは、外界記録にはなかった言葉だった。


 自分が自分として返事をできるかどうか。


 メギド=ノクスでは、それが記録される。


 オルフェは続ける。


「ナハト=リムにて、偽名証および仮保護対象として登録。これは外界記録の否定ではなく、対象者が現時点で安全に呼ばれ、生活し、移動するための暫定措置です」


 ノアは、ナハト=リムの街を思い出す。


 無籍者の街。

 今の呼び名で生きる場所。

 本名を持たないこと、持てないこと、持ちたくないことが、すぐに排除へつながらない場所。


「グリム=ラハドにて、庇護契約審査を実施。対象者本人は、血、声、髪、夢を媒体とする契約を拒否。拒否は有効に記録され、使用されませんでした」


 ヴィクトルがわずかに眉を動かした。


 外界式の記録なら、拒否は手続きの一項目として扱われるだろう。


 だが、ここでは違う。


 拒否が、本人を守る線になっている。


「同審査において、対象者本人の同意により《影の縁留め》を実施。目的は、旧道呼称への事前警告。帰属固定ではありません」


 オルフェは一度、ノアを見た。


 その視線は、確認だった。


 ノアは小さく頷く。


「ザイ=ヴェルムにおいて、対象者は本人同意なき帰路封じに対し、明確に拒否を表明。発言内容は、すでに提出済みです」


 私の帰りたいを、勝手に閉じないでください。


 言葉が、また胸に戻る。


 怖かった。

 震えていた。

 でも、あの言葉は自分のものだった。


 オルフェは記録板を閉じる。


「以上により、対象者ノアは外界記録のみで扱える存在ではありません」


 室内が静まった。


 オルフェの声は淡々としている。


 だが、その中には揺るがない線があった。


「対象者は、メギド=ノクス内で発見され、仮保護名により自己応答を回復し、本人同意に基づく庇護契約を受け、本人拒否を明確に記録されました。外界記録上のノア=リントベルである可能性を否定しません。しかし、現在ここに立つノアさんを、外界記録のみに回収することは、現時点の本人状態と意思を欠落させる恐れがあります」


 ノアは、息を吸った。


 外界記録だけではない。


 その言葉が、深く染み込む。


 自分は、外界にいた。

 ノア=リントベルだった。


 それは嘘ではない。


 でも、ここへ来てからの自分も、嘘ではない。


 灰角の港で拾われたこと。

 仮保護名で返事をしたこと。

 拒否したこと。

 影の縁を選んだこと。

 閉じないでくださいと言ったこと。


 それらは、異常状態の汚れではない。


 今ここで生きている自分の記録なのだ。


 ヴィクトルは、ゆっくりと手を組んだ。


「メギド=ノクス側が、彼女に一定の保護を与えたことは認めます」


 その言い方に、リィゼの眉が動く。


「ですが、それは一時的な応急処置でしょう。事故で漂着した外界人を、外界記録へ戻すまでの」


 ノアの胸が、また冷たくなる。


 応急処置。


 仮保護名も、影の縁留めも、リィゼが拾ってくれたことも、オルフェが記録してくれたことも。


 すべて、外界へ戻すまでの一時的な処置。


 そう言われてしまえば、ここでの自分は、いつでも剥がせる仮の包帯のようになる。


 リィゼが低く言った。


「勝手に仮扱いするな」


 ヴィクトルはリィゼを見る。


「仮保護名、という名称では?」


「仮っていうのは、雑に剥がしていいって意味じゃない」


 リィゼの声が震えている。


 怒りで。


「ノアはその名で息をしてる。その名で返事をしてる。その名で嫌だって言った。それを外界の本名があるからって、上から剥がすな」


 ヴィクトルの微笑は変わらない。


「本名を取り戻すことは、本人の利益ではありませんか」


「取り戻すのと、上書きするのは違う」


 リィゼは言い切った。


 ノアは、胸が熱くなるのを感じた。


 取り戻すことと、上書きすること。


 自分の中でも、まだ混ざっていたもの。


 ノア=リントベルに戻りたい。

 でも、今のノアをなかったことにされたくない。


 その二つは、同じではない。


 裁定官が静かに言った。


「外界は過去の所属を重んじる。メギド=ノクスは、現在の呼称と生存状態を重んじる」


 その言葉は、整理のためのものだった。


 けれどノアには、二つの大きな手が自分を左右から引いているように聞こえた。


「ただし」


 裁定官は続ける。


「メギド=ノクス側の制度にも問題はあります。ザイ=ヴェルムにおける黒鍵衆の帰路封じ未遂は、本人意思を危険判断の下へ置く行為でした」


 セヴラは目を伏せなかった。


「監察案件として扱います」


「よろしい」


 裁定官はノアへ視線を向けた。


「対象者ノア。ここまでの照合を聞いて、発言はありますか」


 ノアは一瞬、息を止めた。


 発言。


 また、求められた。


 怖い。


 けれど、今度は後回しではない。


 ノアは、ゆっくりと言葉を探した。


「私は……外界に記録があることを、嬉しいと思っています」


 ヴィクトルが静かにノアを見る。


 リィゼも、少し驚いたようにこちらを見た。


「外界に私の記録があるなら、私は本当にそこにいたんだと思えるから。ノア=リントベルが、ただの思い込みじゃないって思えるから」


 声が揺れる。


 でも、続けた。


「でも、その記録だけで、今の私を全部決められるのは怖いです」


 境界円の線が淡く光る。


「メギド=ノクスで助けられたことも、怖かったことも、自分で拒否したことも、選んだことも……それを異常状態だから後で整理しますって言われたら、私は、またどこにもいなくなる気がします」


 言い終えると、胸が苦しくなった。


 でも、言えた。


 裁定官は頷く。


「対象者本人発言、記録」


 ノアは目を伏せた。


 ヴィクトルが、静かに言った。


「ノア=リントベルさん。外界は、あなたがいた場所です」


 その声は、これまでより少しだけ柔らかかった。


「あなたが不安定な状態に置かれていることは理解します。ですが、あなたの本来の記録は外界にあります。こちらで処理すれば、あなたは元の場所へ戻れる可能性が高い」


 元の場所。


 その言葉に、ノアの心が揺れた。


 戻りたい。


 やはり、そう思う。


 外界。

 ノア=リントベル。

 補助記録官。

 事故の前の自分。


 それらは、まだノアの中にある。


 ヴィクトルは、その揺れを見逃さなかったように言った。


「記録とは、あなたを失わないためのものです」


 ノアは返事をしかけた。


 その前に、セヴラが口を開いた。


「失わないための記録が、本人を回収対象と呼ぶのですか」


 ヴィクトルはセヴラを見る。


「あなた方も、彼女を境界裁定対象と呼んでいます」


「だからこそ、本人発言を残しています」


「外界でも、確認は行います」


「安全確保後に、ですか」


 ヴィクトルは答えなかった。


 ほんの短い沈黙。


 それだけで、ノアには十分だった。


 彼は嘘をついていない。

 だが、順番が違う。


 外界は、まず確保する。

 メギド=ノクスは、少なくとも今ここでは、まず聞こうとしている。


 ただし、メギド=ノクスにもザイ=ヴェルムのような場所がある。

 恐れで願いを閉じようとする者がいる。


 どちらか一方に、完全な正しさはない。


 ノアは、そのことが苦しかった。


 どちらかを選べば、楽になると思っていた。


 外界へ帰るか。

 魔大陸に留まるか。


 けれど実際には、外界にも檻があり、魔大陸にも鍵がある。


 自分が求めているものは、どちらかへ身を預けることではないのかもしれない。


 では、何を求めているのか。


 まだ、言葉にならなかった。


 裁定官が資料を閉じる。


「照合は以上です。外界記録は、対象者ノア=リントベルの過去所属と帰還請求の根拠を示しました。王都庇護記録は、対象者ノアの現在の生存状態、仮保護名、本人意思の記録を示しました」


 部屋の灯が、一度、深く沈む。


「本件は、過去の所属と現在の庇護が衝突する案件です。さらに旧道、名裂きの谷、外界回収印が関与しているため、単純な帰属判断では処理できません」


 裁定官は立ち上がった。


「黒冠儀の間へ移行します」


 その瞬間、部屋の奥にある扉が、ゆっくりと開いた。


 先ほどの円形扉とは違う。


 もっと黒く、もっと静かな扉。


 その奥から、冷たいのに柔らかい風が流れてくる。


 ノアの影が、微かに震えた。


 警告ではない。


 だが、何かとても大きなものの前に立つ時の震えだった。


 セヴラが先に進む。

 オルフェが記録板を抱える。

 リィゼがノアの隣へ来る。

 ガルドが後ろに立つ。

 ヴィクトルは、白い書類箱を手に、静かに歩き出す。


 ノアは扉の向こうを見た。


 外界の記録。

 魔大陸の庇護。

 閉じる鍵。

 回収する手。


 そのどれにも完全には身を預けられないまま、ノアは黒冠儀の間へ向かう。


 胸元の仮保護名札が、冷たく震えた。


 それでもノアは、手を離さなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ