表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/57

041:第三回オフ会

◇2041年3月@福島県郡山市 <関口仁志>


今回の「未確認飛行少女(UFG)情報サイト」のオフ会参加メンバーは、予定していた通り全部で十二名。前回と同じでオープンに参加者を募らないクローズドでの開催だから、ほとんど人数の増減が無くて当然だ。

関口仁志せきぐちひとしは、先ほど一緒に来た矢吹天音やぶきあまねと郡山駅で別れた直後に、後ろから江尻貴志えじりたかしに声を掛けられて驚いた。彼は関口の友人で、この二人だけが朝香あさか高校関係者以外での参加者だ。

その江尻は、関口が天音と同じ高速バスに乗って郡山に移動したのを知っていた。彼から「今回も一緒に行かないか?」と誘われた時、天音と同行するのを理由に断わった経緯があるからだ。


「ところで、関口、金髪の妹ちゃんとのデートはどうだったんだ?」

「だから、デートじゃないって言ってるだろ」

「あはは、怒るな怒るな。だけど、妹ちゃんの方は間違いなくデートだと思ってんぞ」

「やっぱり、そうかな?」

「やっぱりって、お前も自覚してるじゃないかよ」

「少しだけだぞ」

「だから、少しだけとか言ったら、妹ちゃんが可哀そうだろ」

「そ、そうなのか?」


そんな会話を交わしているうちに、今度は二瓶丈晃にへいたけあきに声を掛けられた。二瓶は、関口が主宰する「UFG情報サイト」を、以前の名称で立ち上げた当初からのヘビー閲覧者ビューアだ。そして、朝香高校UFO研究会のOBであり、更に関口が翌月から通う事になる東大の先輩でもある。

その二瓶と三人で近況を話しながら目的地の喫茶店に入ると、いきなりメイドコスの女子に声を掛けられた。


「お帰りなさーい、ご主人様~!」


良く見ると、大槻乙音おおつきおとねだった。小柄で可愛らしい容姿の彼女には、メイドコスが似合っている。だけど彼女は、朝香高校の生徒会副会長で、今はUFO研の部員でもあるのだ。


「ちょっ、ちょっと乙音先輩。それ、本当にやっちゃうんですかあ?」

「当然でしょう? 良いから、あんたもやりなさい」

「げっ……。お、お帰りなさい、ご、ご主人さま……。うーっ、恥ずかしい」


後から現れたのは、阿部鶴衣(つるえ)。朝香高校生徒会書記で、やはりUFO研にも所属している。そして、この鶴衣もメイドコスだった。


「あの、大槻さん。今日はバイトじゃなかったんでは?」

「そうなんだけどね、うちの男子のリクエストに応えて、これ着てあげたって訳よ。たまにはサービスしなきゃね」

「違うだろ、大槻。俺は、お前にメイドコスになれとは言ってねえぞ」

「あら、会って一言目が、『今日はメイドコスじゃないのか?』だったじゃない?」

「そりゃまあ、そうだけど……」


二瓶はと見ると、既に席に座っている。

関口は、隣で固まっている江尻を促して、適当な席に座ったのだった。



★★★



「それでは、『未確認飛行少女(UFG)情報サイト』の第三回オフ会を始めたいと思います。今回は、そちらの大槻乙音さんの全面的なサポートにより開催できました。大槻さん、ありがとうございました」


メイドコスの乙音に向けて、パラパラと拍手が起きる。当然、関口も率先して拍手を送った。


「尚、今日のオフ会の主旨ですが、基本的には、僕が東京の大学に行くって事で、開催されたっていうか……」

「もう、関口さんったら『東京の大学』なんてぼかすんじゃなくて、ハッキリ『東京大学』って言っちゃって下さいよー」

「キャー、関口さんって、あったま良いんですねえ」

「こら、鶴衣ちゃん。はしゃぎ過ぎ」

「あはは。なんか、今までのオフ会とは雰囲気が変わり過ぎじゃないかい?」

「二瓶さんの言う通りですよねえ。最近の部活も、大槻と阿部が来る時は以前のUFO研とは様変わりした有り様でして……」

「部室の中も変わりましたよね」

「何言ってんの、小野くん。前が汚すぎたから、掃除してあげたんじゃないの」

「えっ、そうなのかい?」

「はい、遠藤先輩とかが持ち込んだヤバめのマンガ本とか、ごそっと捨てられちゃいまして、代わりに『ムシ』のぬいぐるみとか置かれちゃって……」

「『ムシ』のぬいぐるみって、誰かが作ったの?」

「いやいや、琴音ことね先輩が、たまたまUFOキャッチャーで捕ったのが、チョウをデフォルメしたぬいぐるみだったってだけですから……あ、それより、そろそろ自己紹介に移りましょうよ」



★★★



大槻乙音に急かされて、自己紹介へと移行した。前回もいたメンバーは名前プラス一言ひとことって感じだったけど、新メンバーの場合は別である。

新メンバーの最初は、宗像千乃むなかたちの。現在の朝香高校生徒会長だ。そして、彼女の従妹いとこには、「ムシ」予備軍である宗像和衣(かずえ)季和きわの小学生姉妹がいる。


「私、関口さんとは、前々から一度、お会いしたいと思っていたんです」

「そ、そうですか……」


彼女の髪の毛も割と茶色だ。だけど、小柄な大槻乙音とは違って、女子の平均よりも高身長。いわゆる「ムシ体型」とは違う。


次は、早坂琴音(ことね)。千乃の前の朝香高校生徒会長で、乙音の親友との事。初回オフ会から参加している早坂柊耶(しゅうや)の姉でもある。

彼女は、宗像千乃よりも更に高身長で、百七十に届くかどうかって辺り。細身でスキニージーンズが似合うボーイッシュな女子だ。黒髪ショートで、最近、関口の周囲にいる女子達とは対照的なタイプに見える。

その琴音は、私立のトップ校である東都大学への入学が決まっており、四月から東京で一人暮らしの予定だという。


「関口さんも、東京では一人暮らしなんでしょう? 一度、向こうでお食事でもご一緒したいわ」


突然、誘われてしまった。それで関口が、『ひょっとして今がモテ期では?』と思い掛けた時、二瓶が言った。


「あのさ、早坂さん。僕も、一人暮らしなんだけど……。しかも、先輩だから、あちこち案内してあげられるんだけどな」

「まあ、二瓶先輩に案内して頂けるなんて、光栄ですわ。おほほ……」

「お前、女優にでもなったつもりか?」

「あのー、実は、もう一人、新メンバーがいるんですけど……」


突然、雑談モードになりかけた会場に、大槻乙音の少し甲高い声が響いた。そっちに目をやると、メイドコス姿の乙音の隣に、良く似た顔の少年が佇んでいる。

彼は、大槻玲音(れおん)。大槻由佳の兄で乙音の従弟いとこ。来月から朝香高校に入学する事になるのだが、年齢の割に小柄な少年だ。無口なのか、一見すると何を考えているか分からない感じで、可愛い容姿を台無しにしている……と思いきや、鶴衣が歓声を挙げた。


「うわあ、かっわいい。もう、乙音先輩。もっと早く会わせて下さいよー」


その直後、いきなりメイドコスの鶴衣に抱き着かれた玲音は、明らかに迷惑顔だ。乙音に無理やり連れて来られたって感じだろうか?

そんな二人の様子を、江尻貴志だけが羨ましそうに眺めていたのだった。



★★★



その後は、それぞれに気の合う者同士での雑談が始まった。

相変わらずメイドコスの店員や乙音と鶴衣をチラチラと見て、それなりに満足した様子の江尻貴志は、彼が千葉大工学部に進学する事を訊き付けた柳田と小野に言い寄られ、しきりに勉強法とかを訊かれている。どうやら二人は、理系クラスのようだ。

女子はと言うと、四人で集まって話しており、その横のテーブルでは最後に紹介された玲音が、四月から二年生の早坂柊耶と佐々木淳から、しきりにUFO研への勧誘を受けていた……と思ったら、メインは生徒会への勧誘のようだ。二人は昨年の秋から生徒会を兼務しており、時々、横のテーブルの乙音と鶴衣からも声が飛んでいる。


そして、現在、関口は二瓶丈晃と二人で話していた。

最初は四月から東大の先輩となる彼に、教養部での講義の事とかを聞いていたのだが、次第に話題は「ムシ」の事になって行く。

今日は来ていないが、相変わらず彼は、前回のオフ会に来てくれた沖田哲哉(てつや)とつるんでいるようだ。その沖田は、前回も言っていた通り「ムシ」に関するサイトを立ち上げる予定だとの事。名称は、「BGラボラトリー」。「BG」は、「|バタフライガールズ《Butterfly Girls》」の略らしい。


「沖田さんって、典型的な研究者タイプでさ。サイトの運営とか正直言って不安なんだよね。まあ、僕も運営を手伝うつもりではいるんだけど……」


内容は、「ムシ現象の解明」なのだそうだ。つまり、関口のサイトとは、だいぶ方向性が違う。


「まあ、『ムシ』の子に危害を加えるつもりは無いし、沖田さんが変な事をしようとしないように、僕もしっかり見張っておくからさ」


その後、その沖田が提唱している「ムシ因子」の話になった。


「前にも言ったと思うんだけど、『ムシ因子』を持つ子が福島を中心に分布してるのは間違いないよね。そして、最近、東京でも『ムシ』の子が生まれている所からすると、今年は東京近辺で『ムシ』の子が爆発的に生まれるって気がするんだ」

「こないだは西日本でも、既に『ムシ』の子が生まれてる可能性があるとも言ってましたよね?」

「そうなんだよね。転勤族とかいる訳だし、娘を連れで海外駐在したケースとかを考えると、それこそ、世界中で発生する事だって無い訳じゃないと思うよ」

「海外で『ムシ』が生まれた場合は、面倒な事になりそうですね」

「そうだね。最悪、存在を秘匿されて、軍事利用とかされかねないだろうし……」


となると、やはり「ムシ」達を保護する組織が必須になる訳だが、それを実現する手段が思い付かない。


「最終的には、国に頼るしかないんだろうけど、今はその時期じゃないって気がするんだ」

「ですよね。正直、信用できないっていうか……」


そんな話を小声で交わしているうちに、予定した二時間が過ぎてしまい、今回のオフ会はお開きとなったのだった。




END041


当作品を読みにきて頂きまして、どうもありがとうございます。

次話も引き続き読んで頂けましたら幸いです。


また、ブックマークや評価等をして頂けましたら大変励みになりますので、ぜひとも宜しくお願いします。リアクションだけでも残して頂ければ、嬉しいです。


★★★


できましたら、以下の作品も読んで頂ければ幸いです。

いずれも完結済です。


銀の翅 ~第一部:未確認飛行少女~

https://ncode.syosetu.com/n9786lf/

※当作品の第一部です。第二部からでも分かるようにしてありますが、できましたら第一部も読んで頂ければ幸いです。


ハッピーアイランドへようこそ

https://ncode.syosetu.com/n0842lg/

※東日本大震災後の原発事故に関する中学生の恋愛物です。


【本編完結】ロング・サマー・ホリディ ~戦争が身近になった世界で過ごした夏の四週間~

https://ncode.syosetu.com/n6201ht/

※今後、更に番外編を追加する予定ですが、現在は完結済にしてあります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ