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004:二人の女友達(2)

◇2041年4月@東京 <鵜飼優流>


早坂琴音(ことね)は、女子にしては長身である。百七十に届くかどうかといった辺りで、立花奏音(かなと)と同じくらい。女子の平均的な身長である小川千花(ちはな)よりも十センチ近く高い。

とはいえ、細身な所は千花と同じで、ブルーのスキニージーンズが似合っている。髪はショートヘア。ややボーイッシュな顔立ちだが、奏音とは別の意味で整っていると言える。宝塚で、男役が務まりそうなタイプだ。


その琴音は、出身の福島県立朝香(あさか)高校で、生徒会長を務めていたという。要するに、リーダーシップが取れるタイプという事だ。そういう点では、千花と似ていなくもない。彼女も中学と高校で生徒会長をやっていたからだ。

正直な所、鵜飼優流うかいすぐるは、生徒会長をやっていたような女子が苦手だ。どうしても「真面目で融通が利かない子」といった印象が拭い切れない。だからと言って、優流が不真面目という訳ではないのだが、やはり「ほどほどに」生きて行きたいのである。


ところが、意外にも奏音は、琴音と気が合うようだ。さっき、唐突に彼女から「友達にならない?」と言われた後、しきりに二人だけで話し込んでいる。

話題は、「ムシ」に関してだった。


「ふーん。君も、『ムシ』を見た事があるんだね」

「ええ。福島の方じゃ、良く見られるもの。と言っても、大半の人は気付いてないし、知ってる人は限られるんだけど……。いわゆる、都市伝説って奴よ」

「ふーん。でも、あっちには、『ムシ』がたくさんいるんでしょう?」

「良く見られるのは、『ジャノメ』と『ミズイロ』かしら。『ジャスミン』も一緒にいる事が多いんだけど、地味な色彩だからか見辛いのよね。それから、『ブルーっベリー』って呼ばれてるシジミの子がいるんだけどね……。あとは、今年になって見られるようになった『ペパーミント』ちゃん……」

「へえ、詳しいんだね」

「まあね。うちの高校にUFO研究会ってのがあるんだけど、実際は『ムシ』の観察に夢中な連中の集まりなの。だから、身内では自分達を『UFG研究会』って呼んでるわよ」

「そのUFGって……」

「Gはガールで、未確認飛行少女。さっき立花くんが見てたサイトの名称ね」

「ああ、なるほど」

「うん。でも、最近は『ムシ』達と接触したって話も色々と聞くから、だんだんと『未確認』じゃなくなってきてるわね。彼女達だって普通の女の子なんだから、親や兄弟はいるわけなんだし……」

「そっか。『ムシ』が女の子の変異した姿だってのは、もう周知されてるって感じなんだね」

「うちらの間ではって事で、まだ一般的じゃないと思うわよ。福島の方でも、『ムシ』の存在自体、あんまり知られてないし」

「そうなんだ……。僕は、もっと『ムシ』の子がマスコミとかに出て来てても良いと思うんだけどな」


その奏音の言葉に、一瞬、琴音の表情が強張った。だけど、直ぐに気を取り直してか、話題を変えてきた。


「あの、私、さっきから思ってたんだけど、立花くんって、女の子が『ムシ』になる所とか見た事があるんじゃない? あ、別に、『ムシ』が女の子に戻った所でも良いんだけど……」

「何で、そう思った?」

「だって、『ムシ』に対する嫌悪感みたいなのが、全く感じられないんだもの」

「……」

「それとも、身内に『ムシ』の子がいるって事なのかな?」

「……」


その時、優流は千花と選択科目の話をしていて、奏音と琴音のやり取りは途中から聞いていなかった。それでも、何となく二人の間に緊張が走ったのは分かったのだが、それを確認する前に、千花に声を掛けられた。


「もう、また優流くんったら黙り込んじゃって、いったいどうしたの?」

「いや、あっちの話が気になったっていうか……」


ところが、そこで琴音が割り込んできた。


「ひょっとして、鵜飼くんの身内にも『ムシ』の子がいるの?」

「えっ? いないけど」

「いないんだ」


優流は、混乱していた。それで、つい口を滑らせてしまったのだ。


「あ、でも、女の子が『ムシ』になる所なら見た事あるよ」


琴音の顔が、再び険しくなった。前の席の千花はというと、かなりの困惑顔だ。


「えーと、見間違いとかじゃないの?」

「いや、そんなんじゃない。その前に少しだけど、その子と喋ったりもしてたからさ」

「えっ、それって、どういう事? てか、何の事を言ってんの?」

「小川さん、ちょっと黙っててくれる?」


突然、千花が話に割り込んできて、それを琴音が元生徒会長の凛とした声音で制した。


その後で優流は、先日の夜の出来事を打ち明けた。でも、「紗理奈さりな」という名前だけは、口に出さなかった。その方が良いと思ったからだ。

琴音は、真剣に聞いてくれた。そして、優流が話し終えると、彼女は彼らを別の場所に誘った。学食は、真剣な話をするには少々うるさ過ぎる。

ところが、またもや千花が口を挟んできた。


「あの、早坂さん。もうすぐ五限目だよ」


時刻を確認すると、残り十五分しかない。


「えーと、次は心理学だっけ?」

「そうそう。あんた達は、どうすんの?」

「あ、だったら、オレも心理学の講義、受けてみよっかな。せっかくだから、奏音も来いよ」


という訳で、優流と奏音も一般教養の心理学の講義を覗いてみる事にしたのだった。



★★★



小川千花(ちはな)は、見た目だけなら、百人の男が百人とも「綺麗だ」と言うであろう美人だ。女子としては平均的な百六十くらいの身長に、メリハリのある体型。肌は色白で、顔だって相当に可愛い。きつい性格が難点だけど、そうした対応をするのは身内だけだから、たいていの連中は騙される。普段の彼女は、誰にでも愛想よく振舞う典型的な陽キャ女子なのだ。

欠点と言えば、髪の毛と瞳の色が日本人にしては茶色い所だけど、それらが生まれ点きなのは教師達の間で共有されていたから、大したハンディにはならなかった。その点は、付属小学校出身者の特権である。


その千花は、三人姉妹の長女。妹達は、上の子が六つ、下の子に至っては十も歳が離れている。鵜飼優流うかいすぐるが千花の妹達と会ったのは、彼が小学六年生の運動会の時が最後だが、それでも、その子達の事はハッキリと覚えている。二人とも金髪の美少女だったからだ。千花以上に整った顔とも相まって、まさにフランス人形そのものだった.。

案外、千花のキツい性格は、そんな妹達を守ろうとする「お姉ちゃん気質」のせいじゃないかと、密かに優流は思っている。


オレの周りって、異様に茶髪や金髪が多くないか?


ふいに優流は、思った。


そういや、こないだベランダでにいた紗理奈って子も、綺麗な金髪だったっけ?

てことは、最近は日本人でも、生まれ付き茶髪や金髪の子が増えてるんだろうか?


そんな事を考えながら、優流はスバゲッティ・ペペロンチーノを口に運んで行く。それだけじゃ足りないので、奏音かなととマルガリータのピザを半分ずつシェアしてもいた。

現在、彼がいるのは、東都大学の近くにあるイタリアンのファミレス。そこに男女四人で来ている。彼と千花以外のメンバは、立花奏音(かなと)と早坂琴音(ことね)。奏音は小学校からの友達だが、琴音は千花のクラスメイトで、さっき会ったばかりだ。

本当を言うと、優流としては居酒屋に行きたかった。でも、四人全員が未成年。しかも女子二人が元生徒会長とあっては、了承される筈がない。


優流と奏音にとって初対面の早坂琴音がいた事もあり、食事中はお互いの自己紹介を兼ねた雑談に終始した。それで分かったのは、琴音には二つ違いの弟がいて、現在、朝香あさか高校UFO研究会に所属している事だった。ただし、UFO研には他にも彼女の親しい後輩が何人かいて、その子達からも「ムシ」関係の情報を入手しているらしい。


「実は、さっき鵜飼くんと立花くんが見てた『未確認飛行少女(UFG)情報サイト』なんだけど、そこの管理人さんとうちのUFO研とで何度かオフ会をやってまして、私も参加した事があるんです」

「へえ、そうなんだ」

「はい。その管理人さん、高校は別の所だったんですけど、私達と同じ歳なんです。それで、今は東大生みたいです……。あ、それと、『未確認飛行少女(UFG)』っていう名称なんですけど、UFO研のひとつ上び先輩が名付けたんですよ」


どうやら、早坂琴音は、思った以上に『ムシ』について詳しいようだった。




END004


当作品を読みにきて頂きまして、どうもありがとうございます。

また次話も引き続き読んで頂けましたら幸いです。


また、ブックマークや評価等をして頂けましたら大変励みになりますので、ぜひとも宜しくお願いします。


★★★


できましたら、以下の作品も読んで頂ければ幸いです。

いずれも完結済です。


銀の翅 ~第一部:未確認飛行少女~

https://ncode.syosetu.com/n9786lf/

※当作品の第一部です。第二部からでも分かるようにしてありますが、できましたら第一部も読んで頂ければ幸いです。


ハッピーアイランドへようこそ

https://ncode.syosetu.com/n0842lg/

※東日本大震災後の原発事故に関する中学生の恋愛物です。


【本編完結】ロング・サマー・ホリディ ~戦争が身近になった世界で過ごした夏の四週間~

https://ncode.syosetu.com/n6201ht/

※今後、更に番外編を追加する予定ですが、現在は完結済にしてあります。


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