第八話:適性検査を受けました①
ちょっと長くなりそうなので三話に分けます! 木曜、金曜にそれぞれ残りは投稿します! 金曜はもしかしたら二話くらい出せるかも?
「…………」
人混みの中を歩いてなんとか魔法塔に着いたのは良いが、ドアの前でかなりの時間待っている。最初は静かに待っていたクリス様も、だんだんと顔に怒りが浮かんできた。
「ク、クリス様……落ち着いてください……」
「……ふふふ、大丈夫よアデル。別に怒ってなんかいないわ」
「そ、そうですか……」
なんだか珍しい表情だ。普段は感情を見せないのに、ここまで怒りが浮かんでいるなんて。また、クリス様のことを一つ知ることができた。――怒ってるクリス様もきれい……
いつにも増して瞳の鋭さが増していて、触れたら怪我しちゃいそう。
「あ、あの、てきせいけんさってどんなことするんですか?」
怒っているクリス様もきれい、だけれどさすがに居心地が悪いので話をし始める。
「――ふぅ」
クリス様は一息つき、瞳を緩めて話し出す。
「そうね、じゃあ今のうちに説明しておきましょうか」
「は、はい! お願いします!」
「ええ……アデルは、私が魔法を使ったときのこと覚えている?」
初めてクリス様と出会った日。魔獣に襲われたときのことだ。
「えっと……確か……まりょくを使いたい属性に変換する、まほうじんを作る、えいしょうをする。でしたっけ?」
「そのとおり。よく覚えていたわね」
頭を撫でられながら褒められる。ふふ、と思わずにやけちゃう。
「今言ったとおり、魔法を使うにはまず自分の魔力を属性をもった魔力に変換するの。そこで問われるのが変換適性ね」
「ぞくせい……光属性とかですよね」
「ええ、属性は全部で七つ。火、水、土、風、光、闇、ついでに無の七つね」
「七つ……多いです」
「ふふ、そうね。そしてもう一つ。魔法には階位って呼ばれるものがあるの」
「かいい? ですか?」
「そう、階位。例えば【破邪の光剣】。これは第三階位の魔法ね」
【破邪の光剣】。あの魔獣を倒した魔法だ。
「そして階位は第一階位から第七階位までの七段階あるの」
「ななだんかい……」
「そう、七段階。そしてこれにも個人差があるのだけれど……では、ここでアデルに問題」
「も、もんだいですか!?」
いたずらっぽく、クリス様は私を見つめる。急に問題を出され、ちょっとドキドキ。
「人には変換適性とは別にもう一つ、魔法をどの階位まで使えるかを示す階位適性があるの。……この階位適性、いったい何が決めているかわかる?」
「ええと……わ、わからないです」
「あら、少し難しかったかしら?」
口元をゆるめるクリス様。
「正解は脳……頭の耐久力ね」
「のう……」
「階位の高い魔法はその下の魔法よりも膨大な魔力が必要なの。そして魔力を扱うと必ず脳に負担がかかる」
続くクリス様の声が低くなる。
「もし、その負担に耐えられないと、魔法を詠唱した瞬間――運が良ければ意識を失う程度で済むわ」
「……もし、運が良くなかったら?」
正直、続きを聞きたくない。
「最悪、頭が破裂して死んじゃうわ」
「死っ――」
「なんてね、そうならないために適性検査があるのよ。だから、アデルもちゃんと検査、受けるのよ」
「は、はい!」
……ちゃんと受けないと!
◇
「さ、復習よ。魔法の適性は二つあったわね」
「はい! 変換適性と階位適性、ですよね?」
「そのとおり。変換適性は使える属性を、階位適性は使える魔法の階位をそれぞれ示しているわ」
息を吸ってクリス様は続ける。
「そして、ここからが本題ね。適性検査は変換と階位、それぞれ別なの」
「そ、そうなんですね」
「ええ。まずは変換適性の方ね。変換適性は結構簡単よ」
「簡単ですか?」
「各属性ごとに用意された白い魔法水に自分の魔力を少し込めるだけ。そうすると魔力と魔法水が反応して、魔法水に色がつくの。それが濃ければ濃いほど適性が高いわ」
な、なるほど……
「ちなみに火が赤色、水が青色、土が紫色、風が緑色、光が黄色、闇が黒色ね」
「あ、あの! む、無属性は、変換する必要がないから、検査はないってことですか?」
「あら、よく分かったわね。そう、無属性は変換の必要がない。無属性を変換して他属性の魔力を作っているともいえるわね」
や、やった! 当たった!
「それじゃあ、続きね。次は階位適性について。少し難しいからよく聞いておくのよ」
「はい!」
「階位適性はね、天上の試練鏡という魔法具の前に立って検査をするの」
「まほうぐ……幻灯のやつ!」
ルセーロで見た幻灯を閉じ込めた灯り。あれも確か魔法具だった。
「そう、あれも魔法具ね。天上の試練鏡は前に立っている者の脳に対して、魔力使用時と同じ負荷を与えられるの。最大七回、第一階位から第七階位までに相当する負荷を受けて耐えられるか検査するの」
「あの……それって危なくないんですか?」
もし頭が破裂したらなんて考えると……体が震えてしまう。
「ああ、安心していいわよ」
「は、はい?」
「天上の試練鏡には安全装置がついているの。検査を受けている人物が受ける頭の痛みがある一定の値に達すると、自動で終了するわ。だいたい後遺症が残らないギリギリまでやるから結構痛いのよね」
「い、痛いんですか……」
破裂はしない、でも結構痛いらしい。痛いのは嫌だな……
一通りクリス様が教えてくれたそのとき、塔のドアが開いた。
「おや、お待たせしてしまったようですな」
ローブを羽織ったおじいさん、バルタザールさんだ。
「……別に、待っていないわ。ゆっくり来いって言われたもの」
「では、早速適性検査を行わせていただきましょう」
同時に、魔法陣が現れる。
「ま、魔法!?」
「ほほほ、検査場は塔の最上階。老体にはちと応えるのでな――見ておれ、娘よ」
詠唱が始まる――
「視界の果て、果てなき路の黎明。隔絶の虚空を刹那の彼方に霧散せん。遥かなる路を一歩に超越せよ、次元を跳べ――【空間跳躍】」
瞬間、周りの景色が変わった。




