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忘却少女と嘘つき世界~記憶喪失少女は激つよ皇女様の護衛になって記憶を取り戻します~  作者: ミンミン
アルシーヴ帝国編第一章:出会いと目覚めの花畑

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第九話:適性検査を受けました②

 一瞬の浮遊感とともに、さっきまでいた塔の入り口は跡形もなく消え去り、広く、異様な部屋に立っていた。


 見渡すと一面の黒。唯一、天窓から差し込む光が目の前の大きい物体と、何も置かれていない机を照らしていた。


「…………」


 先ほどまでいた外の景色からの変わりよう。思わずぽかんと口を開け、戸惑ってしまう。


「ほほほ、驚かせてしまったかの。ここは魔法塔の最上階、儂の研究室じゃな」


 バルタザールさんがいたずらっぽく目を細めて笑い、こっちに近づいてくる。思わずクリス様の背中をつかむ。


「……あんまり人を驚かせないでくれるかしら、バルタザール。アデルが驚いてしまったじゃない」

「面白いかなと思ったのじゃが……」

「はあ、まあ良いわ。そんなことより、適性検査よ、準備できているんでしょうね?」

「もちろんですぞ」


 そう言うとバルタザールさんは魔法陣を構築し出す。


「夜道を導く灯火となれ。灯れ【幻灯(シグヌム)】」


 窓からの光以外に、もう一つ灯りが現れる。


「そ、それって、幻灯《シグヌム》ですよね!?」


 見たことのある魔法が出てきて、思わず叫んでしまう。ルセーロで見た街灯。あのときの明るさを思い出す。何度見ても明るくて、温かい。


「おお、知っておったか。博識じゃのう。どうじゃ、もっといろんな魔法を――」

「ほら、良いからやるわよ」


 すごい勢いのバルタザールさんを、クリス様が遮る。しぶしぶといった感じで、白い液体の入った透明な器を持ってきた。そして、それを机に置いた。


「さて、では始めようかのう。殿下よ、適性検査の説明は?」

「もう終わってるわ、あなたを待ってた間にね」

「おや、これは失礼いたしました……では、始めましょうか」


 やり方は聞いた。聞いたけど……


「あ、あの!」

「どうかしたの? アデル」

「私、まりょく、知らないです……」


 そう、検査のやり方は習っていても、肝心の魔力の扱い方が分からないのだ。


「あら、そういえば教えていなかったわね。アデル、目を閉じなさい」

「は、はい」


 言われたとおりに目を閉じた。


「次に、お腹に力を込めてみなさい」

「は、はい!」


 ぎゅっとお腹に力を込める。


「……少し、触れるわよ」

「は、はいっ!?」


 言葉どおり、クリス様の指が私の背中、ちょうどお腹の裏側くらいのところに触れている。


「想像するの。あなたのお腹の奥に温かい、魔力の塊があるの」


 まりょくの……かたまり……

 クリス様の指が指し示すように私の背中を動く。


「ここにあるの。魔力が」


 その言葉に言われるがまま、お腹の奥に意識を向ける。


 ドクン! 何かが大きく脈打ち、体中を何か巡る。


「ク、クリス様! これが……」

「そう、それが魔力。ちなみにこの状態は魔力を解放しているっていうから。覚えておくように。それじゃあ今度はそれを右の手に集めてみて」

「はい!」


 体中を巡る魔力。その魔力を手へと動かす。


「で、出来たと思います」

「はい、じゃあ目を開けて、あとはさっき教えたように魔法水に触れなさい」

「さて、まずは火属性からやってもらおうかのう」


 バルタザールさんが一つ目の魔法水を手に取り、こちらに向ける。


「い、行きます!」


 勢いよく魔法水に手を突っ込む!


「……え?」


 それは突然起こった。


 魔法水はきれいな深紅に染まった。きっと適性があるということなんだろう。


 問題はその後だ。魔法水がぶくぶくと泡立ち始めた。


「い、いかん! アデル、手を引っ込めい!」

「ひゃ、ひゃいっ!?」


 血相を変えたバルタザールさんの叫びに急いで手を引っ込める。それと同時に、クリス様に手を後ろに引かれる。


「アデル!」


 ボン! 爆発音とともに深紅の液体がはじけた。


「アデル、大丈夫!? 怪我は……なさそうね」

「で、でも魔法水が、クリス様は……」

「私は大丈夫」

「わ、儂も、き、気にしなくてよいぞ。いくらでも作れるしのう。しかし、爆発する……とは……」


 バルタザールさんの言葉が途中で途切れ、視線がそれる。


「……ねえ、バルタザール」

「……はい、殿下」

「机の上の魔法水、ちゃんと白の魔法水を持ってきたのよね」

「それはもちろん」


 視線を向けると、机の上には青、紫、緑、黄、黒のそれぞれに染まった魔法水があった。


 それらすべてがぶくぶくと泡立っている。また爆発――


「バルタザール! 防ぐわよ!」

「お任せを!」


 魔法陣が現れ、すぐさま詠唱を紡ぐクリス様とバルタザールさん。


「集え! 遮りなさい!【光盾(スクートゥム・ルクス)】」

「世界を隔絶せい【魔力障壁《ムールス・イナーネ・プーレ》】」


 ドゴォォォォン!!!!


 詠唱が終わると同時に、部屋が爆音とともに白煙に包まれる。


「ひゃ、ひゃううぅぅっ……!」


 しかし、壁が壊れたのか白煙はすぐ外へ出て行く。煙が晴れるとそこには色のついた魔法水で、自慢の白いひげを染めたバルタザールさんと、ほこり一つ付いていないクリス様がいた。


「く、くそう儂のひげが……殿下、こっそり盾にしましたね」

「さあ、気のせいじゃないかしら。それよりアデル、怪我は?」

「だ、大丈夫ですけど……あ、あの適性検査は……」


 その言葉を聞くと二人は視線を交わした。ど、どうなんだろう? でも、全部染まってたし適性がないってことは無いはず! 


「まあ、爆発するとは前代未聞じゃが」

「全属性、適性はあるわね。それも相当上位の」

「ほ、本当ですか!?」


 だったら……


「だったら、私にも使えますか? クリス様が見せてくれた破邪の光剣《グラディウス・ルクス・ラディウス》!」

「もう、忘れたの? もう一個検査があるでしょう」

「そ、そうでしたね……」

「ふふ、大丈夫よアデル。だって魔法水を爆発させるなんて、聞いたことないわ。きっと大丈夫」


 クリス様の温かい手に頭をなでなでされる。うん、安心できた。


「仲睦まじいのう」

「……からかわないの、バルタザール」

「からかってなど……おほん! さてアデルよ、次は階位適性、天上の試練鏡じゃ」

「はい!」

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