第十話:適性検査を受けました③
今日はもう一話出ます! 21時半くらい!
天上の試練鏡。それはこの部屋に来たときに見えた大きな物体だった。
「これが、天上の試練鏡……クリス様とバルタザールさんと……私?」
「ええ、天上の試練鏡はその名の通り鏡なの」
「これが、私なんですか?」
目の前には銀色の髪をした女の子。瞳はクリス様と似ているが、少し違う深い青色。
――これが私の姿
「ええ、あなたよ」
私の動きに合わせて、鏡の中の女の子も目をぱちぱちと瞬かせる。
「可愛いでしょう?」
「か、可愛いんでしょうか?」
「ほれ、そこまでにして階位適性を測りますぞ」
壊れた壁から吹き込む風が、いろんな色に染まったひげと、ローブを揺らしている。
「方法は聞いておると思うが、アデルは鏡の前に立っておるだけでよい」
「わ、わかりました」
「少し痛いと思うが、頑張るんじゃぞ」
覚悟を決めて、鏡の前に立つ。ふと、クリス様の方を振り返ると、優しそうに微笑むクリス様がいた。大丈夫、頑張って、そんなふうに言われている気がした。
「よし、では始めようかのう。天上の試練鏡、起動じゃ!」
瞬間、周りの空気が軋んだ気がした。
「ふむ、まあ一段階目は余裕じゃな。では、上げていくぞ」
そこから二段階、三段階……六段階と上がっていった。でも、今のところ痛みは全く感じない。
「アデル、本当に痛くないのかしら?」
「はい、クリス様」
「おどろいたのう、第六段階まで耐えているうえに痛みすら感じていないとは」
痛みはない。代わりに不思議な感覚がする。なんだか懐かしいような――
「では、第七段階、いくぞ!」
◇
目の前に七つの小さな光と、一つの大きな光が見える。
ここは、どこ?
目の前の光たちが何かを話している。
「――」
「――――!」
あなたたちはだれ? そう問いかけようとしても、口が開かない。
どうかしたの? 口から言葉が出ない。
光たちが一斉にこっちを向いた気がした。顔はない。表情なんて分かるわけがない。でも――
なんで、悲しそうなの?
◇
「――ル! アデル!」
「く、クリス様!?」
焦ったように私の両肩をつかむクリス様に、私は思わず驚いてしまう。
「ど、どうかしたんですか?」
何でクリス様がこんなに焦っているのか、全然分からない。確か今は――
「あれ? 適性検査は?」
「終わったわよ」
「え?」
確かに、先ほどまで感じていた軋みもなくなっている。しかし、検査終了の記憶が無い。ということは……
「もしかして、失敗ですか……?」
「いや、成功じゃよ」
バルタザールさんが答えてくれた。
「せ、成功ですか?」
で、でも……
「でも、私、最後の方のこと何も覚えていなくて……」
「ふむ、確かにアデルは意識を失ってはいた。しかしのう――」
「しかし?」
「天上の試練鏡の安全装置。それが起動しなかった以上、第七階位にも耐えられるということになるのじゃ」
「アデル、頭に痛みはない?」
その時、クリス様がいつもとは全然違う、すこし取り乱した声で心配してくれた。
「はい、特に痛みはないです。でも、何か夢を見ていたような……」
「「夢?」」
そう、何か夢を見ていたような、そんな気がする。
「……もしかしたら、あなたの記憶なのかも」
「ぬ、記憶じゃと。もしやアデル、お主は」
「はい、記憶が無いんです」
「そうじゃったか……で、あるならその夢が記憶である可能性が高いじゃろう。どんな夢だったか覚えてはおるか?」
「い、いえ……なにも」
もやがかかったかのように、なにも思い出せない。
その後、話は適性検査の結果に移っていった
「そう……また見られることを期待するしかないわね。それより、アデルの適性結果をどうするかね」
「そうじゃのう……属性に関しては全属性適性ということでよいのじゃろうが」
「階位の方ね」
「……とりあえず、当分の間は第七階位は保留でよいじゃろう」
「そうね、どっちみち魔力を伸ばさせようと思っていたし」
魔力を……伸ばす?
「ク、クリス様。魔力を伸ばすって、何をするんですか?」
おずおずと尋ねると、頭を撫でながらクリス様が答えてくれた。
「ひたすら魔法をつかう、ただそれだけよ」
「といっても魔力切れ直前まで使うからなかなかきついんじゃがな」
ええ……
◇
「さ、それじゃあお父様のところへ行きましょうか」
話も一段落し、いよいよクリス様のお父様のところへと向かおうとなったのだが……
「お待ちくだされ、殿下よ」
「……なにかしら」
「殿下もお気づきでしょう。その娘、アデルの適性検査の結果ははっきり言って異常です」
周囲の空気が変わる。優しかったバルタザールさんは、突如真面目な雰囲気をまとい、クリス様は声色が冷たく、目の鋭さが増す。
「そうね、正直予想外だったわ」
「ええ。 全属性適性というだけでも、過去に数人だけしか確認されていない。まして推定ではありますが第七階位まで使える存在など、儂は聞いたことがありません」
「それで、バルタザール。 本題は?」
正直、話の内容は良く分からない。でも、重々しい雰囲気だけは伝わってくる。
バルタザールさんが深く息を吸い、吐いた。
「アデルの、今後についてです」




