第七話:皇帝陛下の襲撃をうけました
帝都の大きさに驚いている私を、クリス様は手を引いて進ませる。
そして、門の近くにたどり着いた。
人が……たくさん
門の前には強そうな、鎧を着た男の人たち。多分守備隊の人たちと同じ、街を守っている人なんだろう。ここに来るまで何回も見てきた。
けれど、今まで見てきたどの守備隊さんよりも強そうだ。鎧もきらびやかで、体が大きい。
そして、開いた門の向こうにはたくさんの人が見えた。今まで見たどの街よりもたくさんの人。賑やかな声が聞こえてくる。
――楽しそう!
「ク、クリス様! 早く行きましょう!」
「はいはい、引っ張らないの」
つい走り出しそうになったとき――
お城の方からドンっという音が聞こえてきた。
「ひゃっ!……な、何ですか?」
「ちっ! アデル、私の後ろへ!」
訳も分からずクリス様の背中へ隠れる。音がした方を見ると、赤い何かがお城の上からすごいスピードで近づいてきて――ドカン!
次の瞬間には地面にぶつかる。とてつもない衝撃とともに、辺り一面が煙で覆われた。
「ふはははは! やっと帰ってきたか、クリスよ!」
その声とともに、辺り一帯の煙が晴れる。
そこにいたのは一人の大男。赤いマントを羽織り、漆黒の鎧を着ている。
そして、髪はクリス様と同じプラチナブロンド。目は鋭く、サファイアブルー。クリス様にそっくり……
その人が現れた途端、門の前にいた鎧を着た人たちが一斉に平伏した。
「あら、素敵な登場ね、お父様。私の服が汚れてしまったのだけれど」
やっぱり、クリス様のお父さんだ!
「相変わらずつれないやつめ。無言で城を空けるじゃじゃ馬娘を、俺自ら迎えに来てやったというのに」
「無言って……私がこの時期に城を空けるのは知っていたでしょう」
「まあ、それはそれというやつだ。して……」
鋭い目を緩め、笑いながら話していたクリス様のお父さんの目がこちらへ向けられる。
「――っ」
その目は、とても冷たかった。ただ観察するだけの目。思わず息を呑む。
「……まあ、いいか。クリスよ、後でその小娘を連れて、俺の執務室へ来い」
「ええ、でもその前に……いるんでしょう? バルタザール」
クリス様がそう言った瞬間、後ろから気配がする!
「だ、誰ですか!?」
「おや、ばれてしまいましたか」
ばっと振り返ると、そこにはローブを羽織ったおじいさんがいた。
長くて真っ白なお髭を生やし、つかみどころのない雰囲気をまとっていた。
「殿下、儂を呼んだということは適性検査をご所望ですかな?」
「ええ、今すぐにやるわよ」
「ほほほ、畏まりました。準備をいたしましょう。殿下たちは、ごゆっくりと魔法塔へお越しください」
そう言うと、おじいさんは門の方へと歩いて行き、次の瞬間には姿が見えなくなった。
「……というわけよ、お父様。検査を受けさせたら、そっちへ向かうわ」
「よいよい、ゆっくり来い。……では、また後で会おうな、クリス。そして、小娘よ」
そしてクリス様のお父さんは鎧を着た人たちに体を向ける。
「ほれ、貴様らもいつまで地面を見つめておるのだ。仕事を再開していいぞ」
その言葉を残し、お城の方へと戻っていった。
◇
「ごめんなさいね、アデル。放っておいてしまって」
「い、いえ、お気になさらないでください」」
その後、鎧を着た人たちは元通りお仕事に戻っていって、今は私が帝都に入るための手続きをしてくれている。
その間、クリス様とお話ししていた。
「あの、さっきの大きな人が……」
「ええ、私の父でこの国の皇帝陛下。ルートヴィヒ・エグゼ・フォン・アルシーヴ」
「す、すごく強そうでした」
「ふふ、体がでかいだけよ」
本当に大きい人だった。それともう一人。
「きゅ、急に現れたあの、お、おじいさんは誰ですか?」
私の後ろに急に現れた謎のおじいさん。すごくびっくりした。
「あの人はエーデルシュタイン公爵家の現当主、バルタザール・クロニクル・フォン・エーデルシュタイン」
「――こうしゃく?」
「まあ、また後で説明してあげるわ。終わったみたいよ」
「遅くなり申し訳ございませんっ! どうぞお通りください!」
手続きをしてくれていた人が大急ぎで伝えてくれる。
「さ、魔法塔へ行くわよ」
「まほうとう……てきせいけんさを受けるんですよね?」
「そうよ。ほら、見えるでしょう? あの大きい塔が魔法塔よ」
クリス様の指が、時計のついた大きな塔を指していた。あれが魔法塔――
あそこで、私は適性検査を受ける。私は少しの緊張とわくわくを抱え、クリス様に連れられて魔法塔へと歩みを進めた。
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