↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忘却少女と嘘つき世界~記憶喪失少女は激つよ皇女様の護衛になって記憶を取り戻します~  作者: ミンミン
アルシーヴ帝国編第一章:出会いと目覚めの花畑

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/28

第六話:帝都に到着しました

「……んっ」


 ふと、眩しさを感じた。


「あら、目が覚めたの?」


 目を開けると、そこには朝日に照らされ、プラチナブロンドの髪を輝かせるクリス様がいた。


「――お、おはよう、ご、ございます!」

「ええ、おはよう」


 眠かったはずなのに、クリス様を一目見ると目が覚めた。胸がドクドクと波打つ。クリス様は私を見つめると、ふっと微笑む。


「さ、準備をして発つわよ」

「は、はい!」


 ◇


「ク、クリス様……これ、すごくおいしいです!」


 ちぎると良い匂いが広がる白いパン。たくさんのお肉と野菜が入っているスープ。どれもこれも初めて食べたけど、とてもおいしい。


「そう、良かったわ。 ほら、口を開けなさい」

「で、でも……私! 一人で、た、食べられます!」


 さっきからクリス様は私に食べさせてばかりで、自分は全然食べられていない。


「――でもあなた。下手くそじゃない、食べるの」

「ううっ……」


 た、確かにパンをぼろぼろこぼしちゃったし、口の周りがスープで汚れてはいるけど……


「ほら、分かったならさっさと口を開ける。早く出発しないと今日は野宿よ」

「……はい」


 クリス様との食事は楽しかった……恥ずかしかったけど。


 ◇


「食料、買いに行くわよ」

「食料? ですか?」

「ええ、次の街まで確か距離があったはずだから。お腹すいちゃうわよ」

「そ、それは大変です!」


 最後に、忘れ物がないか部屋を見渡す――よし、大丈夫。


 そして部屋を出て、受付に向かう。そこには、昨日倒れてしまったお姉さんと、もう一人、おじさんがいた。どうやら、お姉さんのお父さんらしい。


「おや、もう出発ですか?」

「ええ、急に泊まりたいだなんて言って悪かったわ」

「いえいえ、お気になさらないでください。それより、当宿はどうでしたかな?」

「ええ、とても良かったわ。料理もおいしかったし」

「――はい! お料理、おいしかったです! ベッドもふかふかで……気持ちよくて……」


 私が一生懸命伝えると、おじさんは元気よく笑った。


「ははは! それは良かった! 昨日はすみませんね、手が離せなくて娘に応対を任せたんですが、殿下の美しさにやられちまったみたいで。でも、お客様にそこまで喜んでいただけて本当に良かった!」


 おじさんはハッとして、言葉を続ける。


「自己紹介がまだでしたな。私はハンス、娘はミーナと言います」

「み、ミーナです! 昨日はすみませんでした!」


 ミーナさんはすごく緊張した様子で自己紹介をした。


 クリス様はそれを見るとクスッと笑った。


「ええ、別に気にしていないわ。一応名乗っておくわ、アルシーヴ帝国の第一皇女、クリスティアーネ・メモリア・フォン・アルシーヴ。そして――」


 それに続き私も名乗る。


「私の名前は、アデルって言います。よろしくお願いします!」


 右手を胸に当て、お辞儀をした。


 それを見てか、三人は微笑んだ。


 ◇


 食料を買った私たちは、ルセーロを出発して再び帝都への道を進む。


 市場でも楽しいことがたくさんあった。守備隊の人たちとも少し仲良くなれた気がする。もっとここにいたい、でも帝都に行かないと。


 市場から、最初に入ってきた門とは逆側のほうの門へと行くと、お世話になったバルト隊長や守備隊の皆さんが待っていた。


「宿、紹介してくれてありがとうね、バルト隊長」

「あ、ありがとうございました……」

「――いえ! 滅相もございません!」


 バルト隊長が宿を紹介してくれたから、私は昨日休むことができた。ありがとうございますって、ちゃんと言わないと!


「クリスティアーネ様とアデルさんは、帝都へ?」

「ええ。さすがに何日も抜け出していると皇帝陛下が怖いわ」

「ははっ! あの皇帝陛下を“怖い”で済ませられるのはあなた様くらいのものでしょうな」


 バルト隊長は豪快に笑うと、胸に拳を当てる。それに続いて、守備隊の皆さんも同じ動きをした。


「それでは、道中お気をつけください! ルセーロ守備隊一同、お二人の旅路が順調にいくことを祈っております!」

「ええ、ありがとうね」


 少しだけしか話さなかった。少しだけしかいなかった。でも、バルト隊長や守備隊の皆さん、ハンスさんたち。優しい人たちばっかりで、ここルセーロはすごく良い場所で、また来てみたい。そう思った。


「アデルさん、クリスティアーネ様とぜひ、また来てください。歓迎いたします」


 素性の分からない私を、深く探ることなく丁寧に扱ってくれた。それはクリス様からの命令だから、というだけだったのかもしれない。でも、私はうれしかった。


「はい! 絶対! ぜ、絶対に来ます!」


 そうして私とクリス様は歩き出した。


 ふと、後ろを振り返ると守備隊の皆さんが手を大きく振っていた。


「――あ、ありがとーございましたー!」


 私も、大きく手を振り返す。ありがとう、また来ます。そう思いを込めて。


「良い、ところだったわね」

「はい!」


 ◇


 そうしてルセーロを出発した私たちはいくつかの街の宿で休みながら、帝都を目指した。


 昼間はクリス様と頑張って歩いて、街に着いたらいろいろなお店を見て。


 夜は大体怖くて眠れなかったので、クリス様が手を握っていてくれた。


 一つだけ気になることがあった。クリス様はやることがあると言って、毎晩私を先に寝かせた。ちゃんと休めているんだろうか?


 ◇


 そして七日目の昼。


「結局七日もかかってしまったわね」

「ご、ごめんなさい、クリス様……私が歩くの遅いせいで……」

「まあ、いいわ。それより……ほら、見えてきたわよ」


 そこにはルセーロとは比べられないくらい大きな白い壁。分厚い、開かれた門。その門の前にはたくさんの馬車が止まっている。


 その奥には壁を越える、時計のついた塔。


 そして何よりも目立つ、白くてきれいな大きい建物。


 思わず圧倒されてしまった。


「すごい――!」

「見える? あの一番目立ってる白いやつが帝城。私の家よ」


 あれが……おうち?


「帝都アルシーヴへようこそ、アデル。歓迎するわ」


 そうして私は帝都に到着した。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。