第二十三話:武闘大会に出ました~決勝戦~
「試合開始です!」
開始の合図と同時に、私は反射的に障壁を発動させる。
「【魔力障壁】!」
目の前に現れるのは魔力でできた壁――そしてその壁に拳をぶつけているヴァーちゃん。
音もなく、見えない速度でここまで近づいてきていた……今まで戦った人たちよりもすごく速い。一体、どんな方法であの速さを――
「考え事とは、ずいぶんと余裕だね」
「――っ!」
耳元でささやかれたような錯覚に息を呑む。そして同時に、ヴァーちゃんが拳を打ち込んでくる。
――ピシッ その音とともに魔力障壁にひびが入った。
まずい! とっさに後ろへ転移しようと――なっ! 魔法が発動しない! 目の前から魔力障壁も消えている。これはまさか……
「どうかな? 断魔の牢は」
やっぱり断魔の牢です。空間跳躍は第四階位の魔法だから、発動できなかったんだ。
でも、ヴァーちゃんは明らかに隙を見せたはずなのに、なにもせずこちらに話しかけてくる。
「……魔法陣も詠唱もなかったはずです」
魔法には魔法陣と詠唱が必要なのが基本。私は詠唱をしないが、魔法陣は使っている。でも、今のは詠唱も魔法陣もなかった。
「さあ、どうでしょう?」
仮面がさらに笑ったように見えた。
「……来ないならボクから行こうか」
その言葉とともに、ヴァーちゃんの手に現れる光の剣。どこか見覚えのある光の剣が私の目に映る。
「ふふ、【破邪の光剣】、ってね」
そのままヴァーちゃんが、やはり見覚えのある構えをした。
――ドクン 心臓がはねる。ヴァーちゃんがあの姿と重なった。聖域で、クリス様と初めて出会ったあのときの、魔獣を倒したクリス様の姿と。
「【帝国剣術・初太刀・蒼閃】」
その技の名前が楽しそうに聞こえてきた。
思い出す……あの魔獣を倒したクリス様を。あの大きな魔獣を倒してしまった技――まともに受けちゃだめです!
第五階位より下の魔法は、断魔の牢のせいで使えない――なら!
「【真理の光鏡牢】」
魔法の発動とともに、私は無数の鏡を展開する。そのうちの一つを私とヴァーちゃんの間に移動させ、攻撃を受ける!
「おや、これは……」
【魔力障壁】よりも固い鏡に攻撃を当てたヴァーちゃんが、何かに気づいた様子――でも、もう遅いです!
【真理の光鏡牢】――それは、『あらゆる攻撃を反射する鏡を展開する魔法』だとクリス様が教えてくれた。
ヴァーちゃんの剣と触れた鏡がすさまじい光を発した。まぶしい……
「……なるほどね」
瞬間、ヴァーちゃんがすごい勢いで吹き飛ばされる。壁に激突し、白煙が舞う。
視界が悪い……ヴァーちゃんの姿が見えないけど――
直感――まだ! ヴァーちゃんがこれで終わるわけがない!
(【魔力障壁】)
悪寒とともに、反射的に発動してしまう。断魔の牢のせいで発動するはずがない――しかし、私の前に障壁が現れた。
「断魔の牢の効果が消えた?」
「――違うよ、アデルちゃん。君が破ったんだ、断魔の牢を」
白煙の奥から現れた不気味な声がそう言った。苦笑交じりの、どこか嬉しそうな声だった。
現れたヴァーちゃん。黒いマントはボロボロだが、仮面は未だに壊れていない。
ボロボロ……でも、多分そんなに効いていない。その姿は変わらず余裕そうだった。
「さあ、アデルちゃん。次は君が攻めてきてよ」
一体、なにがしたいのか? 棒立ちで立つヴァーちゃんを見る。――でも、これはチャンスです。
中途半端な魔法じゃあきっと勝てない。だから私の一番強い魔法を!
「行きます!」
手を空に向け掲げ、魔法を顕現させる。
「【闘争終焉・宿命の裁決】!」
一瞬の静寂。その直後、空から一本の光の柱が降り注ぐ!
ドンッ! 轟音とともにヴァーちゃんを光の柱が飲み込んだ。光の柱が周囲の地面をえぐっている。
「きゃっ!」
あまりの衝撃に私も吹き飛ばされてしまった。ゴロゴロと転がるが、なんとか立ち上がる。
――ヴァーちゃんはどうなったの?
ヴァーちゃんが立っていた方を見る――そこには大きな穴が――そして先ほどと変わらない様子で立つヴァーちゃんの姿があった。
た、耐えきられた……? 心の中に焦りが生まれる。どうすれば、ヴァーちゃんに勝てるの?
「……ふふ、これまでだね」
「えっ?」
これまで? 一体何を――
「この勝負、ボクは降参します!」
「……え?」
驚きのあまり、間抜けな声が出てしまった。降参? なんで?
両手を挙げ、その場に立っているヴァーちゃん。一体なんで……?
「し、試合終了ー! 最後はまさかの降参! アデル選手、総合部門優勝だ~!」
実況さんの声が響いてもなお、ぽかんと私と同じような反応をする客席が見える。
その時、一つの拍手が響いた。とっさにその音がした方向を見ると――眼鏡と帽子をつけたプラチナブロンドの髪の女の人。
――クリス様! 変装していても分かるクリス様のお姿。
誰よりも先に拍手をしてくれて、満足そうに微笑んでいた。
その拍手の後、遅れてたくさんの拍手が響き渡った。
少し、違和感はある……でも無事優勝できた。これでクリス様の護衛になれる。そう考えると、胸が温かくなってきた。
◇
「また会おうね、アデルちゃん」
結局最後までよく分からなかったヴァーちゃん。拍手が鳴りやんだあと、そう言葉を残し、一足先に舞台から去って行った。
『また会おうね』
いつか、会うことになるのか…… 次会うとき、どんな状況なのか……仲良くできると良いな。
とりあえず、今はクリス様のところへ行こう。そう思い、私はクリス様の元へと向かっていく。
――たくさん褒めてもらいたいな そんなことを考えながら。
いつも読んでくださりありがとうございます
明日から大学が始まるので更新頻度が落ちます。すみません
最低週一は投稿できるように頑張ります
これからも読んでくださると嬉しいです
それでは次のお話で




