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忘却少女と嘘つき世界~記憶喪失少女は激つよ皇女様の護衛になって記憶を取り戻します~  作者: ミンミン
アルシーヴ帝国編第二章:仮面と誓約の武闘大会

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第二二話:武闘大会に出ました~準決勝~

魔法の設定を一部変えました

・勝利を導く光を第六階位→第五階位

 次の日からの試合は、危なげなく勝つことができた。


 二戦目はハヤテさんの動きを参考にした速攻勝負。ハヤテさんほど早くは動けなかったけど、上手にできていたとクリス様が褒めてくれた。


 三戦目は魔法の打ち合いになった。相手はバルタザールさんのような格好をしたおばあさん――昔、帝国軍の魔法部隊にいたとクリス様が言っていた。クリス様から教わった魔法を真正面から打ち続けて無事勝てたが……闘技場がボロボロになってしまい、なんだか申し訳なかった。


 そして――今日は準決勝。相手はどんな人で、どんな戦いになるのだろうか? すごく緊張して、そして楽しみだ。絶対に勝つぞ!


    ◇


「いよいよここまでやってきた! 武闘大会総合部門準決勝!」


 実況さんの声が闘技場に鳴り響いた。それと同時に私は前へと進んでいく。


「さあ選手の紹介だ。向かって左、これまでの試合をすべて己の肉体で砕いてきた! 武闘家、ガル・ザイン選手だぁぁーっ!」


 向こう側からやってくる、筋肉質な男の人。な、なんで上が裸なの……


 向こうに見えるガル・ザインさん。武器も何も持たず、ただ自分の体だけで勝ってきたらしい。その体には今までの人とは比べものにならない傷の跡。少し恐怖を覚えた。


「対するのは! 予選からすさまじい魔法で勝ち上がってきた謎多き少女……アデル選手だ!」


 気づいたらいつも通りになっていた大歓声を浴びる。うぅ……これだけは慣れないです……


 やがて、静かになった。どの試合もこうなった。無言……試合に集中していく。


 そして、開始の合図が聞こえてきた。


「では、早速始めますよ~! 試合、開始!」

「【紅蓮の熱線《ラディウス・プルプレウス・インフェルヌス》】!」


 速攻。手始めに紅蓮の熱線《ラディウス・プルプレウス・インフェルヌス》で牽制をする。熱線を撃つ……しかし――


「せいっ!」

「あ、熱くないんですか!?」


 その魔法をガル・ザインさんが拳で弾き飛ばした。でも、思ったより動揺は少ない――ハヤテさんにも切られたからかな?


 昨日の夜、シルヴィアさんが私の部屋にやってきていろいろお話ししてくれた。


 ガル・ザインさんの試合を見ていてくれたらしい。そして対策を教えてくれた。


『武闘家――魔力を独自の魔法で氣というものに変換して戦うのです。ああいう武闘家タイプは近づかせないことが重要です……とくにアデル様はお体が貧弱ですので』


 貧弱……確かに、ちょっと体は小さいけど……とは思ったが、対策はありがたかった。


「次! 【紅蓮の熱線《ラディウス・プルプレウス・インフェルヌス》】! そして【審判の光雨《プルーヴィア・ユスティティアエ・カエリ》】!」


 今度は一本だけでなく二本、三本と増やした熱線。そして予選で使った光の雨を降らせる。


 上空と複数方向からの攻撃――これなら!


「ふん! 小賢しい!」


 すさまじい速度で繰り出される拳が熱線をはじいていく――でも、さすがに光の雨には対応できなかったみたい!


 無言だが、わずかに表情を曇らせ、傷を作っていくガル・ザインさん。


 ……思ったよりも傷がない。あれだけの魔法を当てたのにかすり傷程度。


『氣を使うことで体を強化できるのです。アデル様も使ったでしょう? 極限強化《ローブル・フラクトゥーラ・マギカム》。あれと似たようなものです』


 なるほど、あれが氣の効果。対策を話してもらったとき、シルヴィアさんに聞いてみた。


『氣って魔法なんですよね? なら断魔の牢《カルケル・ヴィリブス・プールス》で止められないですか?』


 魔法なら、ハヤテさんのときと同じように止められるかも……そう思った。しかし、それは無理だと言われた。


『素晴らしい着眼点です、アデル様。しかし、氣というものは魔法で魔力を変換したものであって、氣そのものは魔法ではないのです。魔法を無効化したところで氣は消せません。あくまで魔力の氣への変換を止めるだけ、ということです』


 氣による強化……かなり強い。断魔の牢《カルケル・ヴィリブス・プールス》を発動して氣がなくなるのを待つか……さらに強い魔法を撃ってみる? もしかしてあの魔法なら――


 つい、考えにふけってしまった。


「来ないならこちらから行くぞ!」


 その瞬間、目の前に巨大な体が迫ってきていた! 障壁を――いや、近づかれちゃだめだ――なら!


「【空間跳躍《サルトゥス・スパティオ・アエラ》】!」

「なっ! 後ろか!」


 無属性の第五階位の魔法。魔法塔でバルタザールさんが見せてくれた魔法を使い、ガル・ザインさんの背後の離れたところに移動――そして、私はある魔法を発動させる!


「行きます! 【勝利を導く光《ルクス・ヴィクトリア・グロリ》】」


 光属性の第五階位の魔法。クリス様との特訓で身につけた魔法の一つ、光を浴びた人を弱体化させる魔法だ。


 闘技場に光が降る。その瞬間、ガル・ザインさんの顔が曇ったように見えた。


「これは……体が重い?」

「これで――どうですか! 【紅蓮の熱線《ラディウス・プルプレウス・インフェルヌス》】!」


 もう一度、全力で紅蓮の熱線《ラディウス・プルプレウス・インフェルヌス》を放つ。


「――なッ!?」


 両手を交差させ、驚くガル・ザインさんに突き刺さる熱線。でも――


 勝利を導く光《ルクス・ヴィクトリア・グロリ》で弱くなった体じゃあ――耐えきれないです!


 さらにもう一回、紅蓮の熱線《ラディウス・プルプレウス・インフェルヌス》を放つ。


「が、はっ!?」


 その瞬間、ガル・ザインさんが後ろへと吹き飛んだ。


 一気に静まり返る闘技場。


「試合……終了だー! 勝者アデル選手!」


 実況さんの声が聞こえたと同時に、闘技場全体が歓声に包まれた。


「はぁ、はぁ」


 つ、疲れた……ハヤテさんとは違って、ひたすら硬い。すごく強かった。クリス様と同じ光属性の魔法のおかげで勝てた――ありがとうございます、クリス様。


 さあ、クリス様に会いに行こう――そう思ったとき、客席からすごい圧を感じた。


「ひゃっ!」


 思わず声を出しつつ、勢いよく振り返る。そこには白い仮面をつけ、黒いマントを羽織っている子どもくらいの背丈の人物――ヴァーちゃんが私の方を向いていた。


 次は決勝戦。決勝に勝てれば優勝、クリス様の護衛になれる。


 相手はまだ決まっていない。でも、次の相手はきっと――


   ◇


「さあさあ、皆さんいよいよこのときがやってきました! 総合部門決勝戦!」


 準決勝から数日、私はクリス様に休まされた。そして、今日、ついに決勝戦が始まる。


 予選で見かけたとき、きっとその時点で戦うことになっていたんだろう。


 私は、勝つ。勝ってクリス様の護衛になる。


 反対側に現れた、仮面をつけた子ども。


「……さあ、やろうか。アデルちゃん」


 子どものようにも大人の男の人のようにも聞こえる不思議な声。


 ゾクッと、体が震えた。すごく不気味な声。


「ヴァーちゃん、私はあなたに勝ちます!」


 にやりと、ヴァーちゃんの仮面が不気味に笑ったように見えた。

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