第十五話:お風呂に入りました
お風呂回です
「ク、クリス様も一緒に入るんですか!?」
クリス様に連れられてたどり着いたのは、たくさんの籠があるお部屋だった。クリス様によると脱衣所というらしい。ここでお着替えをするそうだ。
そんな脱衣所で、私はクリス様に毎度のごとくお洋服を脱がされてしまった……
それだけならまだいつも通りだったのだが、クリス様もお洋服を脱ごうとしたのだ!
「だってあなた、お風呂の入り方なんて分からないでしょう?」
「た、確かにそうかもですけど……」
クリス様が、首元に手をかけ、カチリと音がする。
白銀のお洋服のボタンに手をかけ、慣れた手つきで上から順番に外していく。
そして、一番下まで到達するとお洋服が開かれ――
「……何で目を閉じているのかしら?」
「だ、だって……恥ずかしいですよぉ……」
なんだか恥ずかしくて、目をぎゅっと閉じてしまう。
布のこすれる音がしばらく続き、そしてやむ。ほ、本当に一緒に入るの……
「ほら、いつまでそうしているつもり? 目を開けないと危ないわよ」
「でも……」
「まったく……タオルを巻いてるから、大丈夫でしょう?」
「で、でも……」
「……もう、手つないであげるから。目、閉じてていいわよ」
呆れたようにクリス様が手をつないでくる。
うぅ……ごめんなさい……
何歩か、クリス様に引っ張られて歩く。とてもゆっくりだった。転ばないようにしてくれたのかな、そう考えると心が喜びに満ちてくる――クリス様の優しさを感じる。
「開けるわよ」
クリス様がそう言うと、ドアの開く音がした。
そして、温かい空気に身を包まれる。
目を開くと、白いモヤモヤがお部屋に広がっている。そして、水があった。いや、お湯だろうか?
「すごい……温かいです」
「まだお湯に入ってもないのに……ふふ、いいの? 目が開いちゃってるわよ」
「あっ!」
そ、そうだった! とっさに両手で目を覆う。
でも、クリス様に手をつかまれてしまい、また目が見えるようになる。すると、すぐ目の前のクリス様が目に入ってしまった。
「……」
つやのある肌が光り輝いていた。眩しさか、あるいは美しさからか、息を呑んで固まってしまう。心臓が、高鳴った。
「はぁ……早くお風呂に浸からないと、風邪引いちゃうわよ」
「ご、ごめんなさい!」
じっと見ていると、クリス様からの注意。あまりにもきれいで……つい……
「でもその前に……アデル、お風呂に浸かる前にすること、分かる?」
「えっと……何でしょう?」
「汚れた体でお湯に入ると、お湯が汚れちゃうでしょう? だから体を洗ってから入るのよ」
「そうなんですか!」
「ほら、ここに座って」
そう言われて見ると、そこには椅子があった。
言われたとおりに座る。
「早速洗っていくわよ」
そう言うとクリス様は魔法陣を編み出す。
「清なる水よ、我が手に宿れ【水生】《グッタ》」
そして詠唱をし、手に水を生み出した――かと思うとさらに二つ魔法陣を生み出し詠唱をした!
「白銀の帳よ。万象を包み込む優しき泡を紡げ【泡沫】」
「熱よ、優しき温もりで器を満たせ【微熱】」
もう片方の手のひらに泡が生み出された。
クリス様はまず、生み出した水を私にかけてきた。
冷たい! と思ったけど……あれ、温かい?
「クリス様! これ温かいです!」
「びっくりしたかしら?」
「は、はい!」
驚いている私に、クリス様がさっき使った魔法を教えてくれた。
【水生】《グッタ》は水を生み出し、【泡沫】は泡を生み出し、【微熱】は温度を上げる魔法らしい。
そしてお湯でぬれた私を、クリス様は【泡沫】で泡まみれにする。
「わっ! クリス様、すごいです! あわあわです!」
「どう、気持ちいいかしら?」
頭と体を優しく洗ってくれるクリス様。泡がもこもこしてきて、すごく気持ちいい……けど、体を触られるのは恥ずかしい!
タオルで拭いてもらった時は、まだ大丈夫だったけど。直接触られるとなんか……
「それじゃあ、流すわよ」
一人で恥ずかしがっていると、クリス様がそう言う。また温かいお湯が全身に浴びせられ、泡がなくなっていく。
「少し待っていなさい、私もすぐに洗うから」
「分かりました!」
◇
クリス様が洗っている間、私はお風呂の壁を見ていた。豪華すぎない落ち着く装飾が施されていて、見ていると心が安らいでいく。
「アデル、行くわよ」
クリス様の声。どうやら洗い終わったようだ。
クリス様がお湯の方へと歩み出す。私もそれについて行った。
「それじゃあ、入りましょうか」
そう言うと、クリス様は私の後ろに回り込み、抱きかかえてきた。
「ひゃっ! な、なにするんですか!?」
そしてそのままお湯へと入り、私はクリス様のお膝の上に乗せられる。
「く、クリス様……これ、お風呂、すごく気持ち良いです……」
なんだかぼーっとしてくる。
「ふーっ……そうね」
それからしばらく、クリス様のお膝の上で、お風呂を堪能する。
クリス様のお肌が、すごくきれいで、肌触りが良かったのはクリス様には内緒だ――恥ずかしいから。
◇
お湯に入ってしばらく経った頃。
「そろそろ出ましょうか」
「も、もうですか?」
クリス様が、もう出ようと言った。
「あまり長く浸かっていると、のぼせてしまうからね」
笑いながらクリス様が教えてくれた。名残惜しいが今日はここまでらしい。
「わ、分かりました……あ、明日も入ってもいいですか?」
「ふふ、当たり前でしょう? 明日も、また一緒に入りましょうね」
「……ま、魔法を教えてもらえれば自分で入れます……」
意地悪そうに、口元を上げるクリス様。からかうように私に言う。
「あら? 私と一緒には入りたくないの?」
「そ、そんなことないです! けど……」
クリス様と一緒に入るのは恥ずかしすぎて……
「嘘よ。ちゃんと魔法を覚えられたら一人で入っていいわ」
「本当ですか?」
「ええ、ちゃんと使えるようになったらね」」
護衛になるためにも、それと一人でお風呂に入れるようになるためにも、これから特訓頑張ろう! そう思った。




