第十三話:特訓することになりました
本日二話目です。
遅れてすみません
9/21 魔力の測り方を一部変えました
「ぶ、ぶとうたいかいですか?」
「そうだ! 我が帝国が誇る年に一度の祭り! 各地から集まった実力者が己の力を競い合うための祭りだ!」
楽しそうに叫ぶ皇帝陛下さん。耳がジンジンする……
「うるさいわよ、お父様」
「ぬ、すまん。だが、楽しみでな」
「武闘大会が、ですか?」
「そうだ。今年はどんなやつが優勝するのか、わくわくするな!」
どうやら武闘大会がすごく楽しみらしい。そんなに楽しそうにされると、私も気になってきてしまう。
「あの、あの! 武闘大会ってどんなことするんですか?」
「お父様が言っていたでしょう? 力を競う、つまり戦うのよ」
た、戦う?
「わ、私がですか!?」
「あたりまえでしょう。護衛になるのでしょう? 当然、戦えないと護衛にはなれないわよ」
「うっ……そ、そうですよね」
そうだ。クリス様を守る。そのためには戦えるようにならないと……
「アデルよ」
突然、皇帝陛下さんから呼びかけられた。
「貴様は、先ほどクリスの護衛になると言ったな」
「は、はい」
それがどうかしたのか、まさか今さらになってだめと言われたり……
しかし、続く言葉は予想とは違った。優しい声色だった。
「よい覚悟だった」
「――え?」
「貴様には才能がある。あと必要なのは覚悟だ。必ず護衛になる、その強い覚悟があれば必ず目標はかなう」
思わず息を呑む。覚悟――クリス様の護衛になる、必ず。
「クリスに鍛えてもらえ。武闘大会まであと一月あるからな。強くなって俺を驚かせてくれ!」
激励だった。やっぱり、クリス様のお父さんだなって思った。
裏に優しさを隠しているところがそっくり。
「……お父様ったら。案外優しいでしょう?」
呆れたように私にささやいてくるクリス様。あなたもですよ、なんて言ったら怒られそうだから、心の中にとどめておこう。
激励と問い。二人に答えるように、私は元気いっぱいに返事をした。
「はい!」
◇
「さて、そろそろ次の予定の時間なのでな」
「そう、じゃあそろそろ行くわね」
やっぱり皇帝陛下さんは忙しいらしい。
「皇帝陛下さん! ありがとうございました!」
「おう! 武闘大会、楽しみにしてるぞ!」
クリス様の護衛になるために。武闘大会、頑張らないと!
「では、失礼するわね、お父様」
「ちゃんと鍛えてやれよ、クリス。なんなら、おれの護衛から一人貸し出しても良いんだが」
「……別にいらないわよ。私一人で十分」
「ふっ、そうか。では、次会うときを楽しみにしているぞ、アデル」
「は、はい!」
ため息をつきつつも、楽しそうなクリス様。そして、目を細めて語る皇帝陛下さん。そして私。
最後に三人で語り合った。
◇
そうして私とクリス様は、執務室を後にした。
「それじゃあ……今日はまだ時間があるし、早速特訓と行くわよ」
「わ、分かりました」
クリス様が真面目な顔つきになる。これから特訓をするらしい。
特訓と言っても何をするのか。その問いにクリス様は優しく教えてくれた。
「まず、あなたの適性は間違いなく最高峰のもの。けれど、それを扱うには知識と魔力が必要なの。まずは、そこを鍛えていくわ」
まずは魔力量を増やす特訓をするらしい。そういえば、バルタザールさんともそんな話をしていた。
私はクリス様に連れられ、お城にある庭に来た。
「お、おっきなお庭……」
緑に囲まれ、真ん中には噴水がある。しかしとんでもなく広かった。ここで私の特訓をするらしい。
「ここは基本誰も来ないから都合が良いのよ」
クリス様がそう教えてくれた。
魔力量を鍛える。確か魔法塔で教えてもらった――魔力切れまでひたすら魔法を使う。これが魔力量を伸ばす方法だったはずだ。
ということは――
「わ、私も魔法を使って良いんですか!?」
「ええ、むしろ使ってもらわないと困るわ」
クリス様によると最初は魔力量を測るらしい。
「どうやって測るんですか?」
魔力量の測り方。それはすごくシンプルだった。
「あら、言ったでしょう? 魔法を限界まで使うだけよ」
にこりと笑うクリス様が続ける。
「より正確に言えば、第一階位の魔法をどれだけの回数使えるかで測っているわ」
すごく力業だった。
どうやら最近、魔力量を数値化する魔法具が開発されているらしいとクリス様が言っていた。でも、まだ使えないらしく、私は魔法を限界まで使うことになってしまった。
「それじゃあ、早速始めましょうか」
クリス様はそう言うと私の目を見つめてくる。じっと見つめられる。
「使う魔法は幻灯。これならアデルも覚えているでしょう?」
幻灯。ルセーロの街灯に、そしてバルタザールさんも使った魔法。きれいな魔法だ。
「はい!」
「それじゃあまずは魔力を解放しなさい」
お腹の奥に意識を向ける。温かい魔力の塊が脈打った。
「できました!」
「じゃあ次は、魔力を、属性を持った魔力に変換して魔法陣を展開するの」
「魔力の属性変換……」
「属性変換は無属性の魔力に属性としての指向性を持たせるの。コツとしてはその属性をイメージすることね」
「イメージですか?」
属性をイメージ……光をイメージ……
その時、魔力が微かに光った気がした。光をまとったみたいに。
「た、多分できました……」
「さすがね。そうしたら次は魔法陣ね」
「ま、魔法陣ってどうやって作れば……」
魔法陣。その存在はこれまで何度か見てきたが、作り方は教わっていない。
困惑しているとクリス様が一枚の紙を、意地悪そうに取り出す。
「自分の手から魔力を糸のようにして出す。そしてこの形を描くの」
その紙にはバルタザールさんが幻灯を使った時と同じ模様の魔法陣が書かれていた。
「魔力を……糸に」
細く、ひたすら細くし、魔力を手から出す。そして幻灯の魔法陣を空中に描いていく。
「で、できました」
「……驚いたわ。まさか一発で成功させるなんて」
驚いたように目を見開くクリス様。しかしすぐに元の冷たい表情に戻る。
「そしたら詠唱をするの。覚えているかしら?」
詠唱……たしか――夜道を導く灯火となれ、灯れ。だったはず。
「はい、覚えてます」
「そう、じゃあ詠唱をするの。魔力を魔法陣に流しながらね」
夜道を導く灯火となれ。
そう詠唱したら、あのきれいな灯りが見られる。ついに私も魔法が使える。そう考えたとき、不思議な感覚がした。
――心が震えた。
詠唱を口に出そうとしたその瞬間、私の目の前に魔法陣はなかった。
代わりにあったのは何度か見てきたあの灯り。
幻灯の灯りがそこにはあった。




