第十二話:皇帝陛下とお話ししました
読んでくれてありがとうございます! 今日はもう一話出します! 21時くらい!
「わざわざ出迎えてくれるなんて、優しいのねお父様」
どこかからかうような声でクリス様が言う。
「なに、少々気になることがあってな。魔法塔で爆発があったようなんだが……なにか、知らんか?」
「さあ?」
堂々と嘘をつくクリス様……でも、さっきから皇帝陛下さんの目がこちらをじっと向いていて……ばれてないよね?
「まあ良い。クリス、そして小娘よ、執務室でいろいろ聞かせてもらおうか。ついてこい」
なんとなくだけど、すぐに私の適性結果はばれそうな気がする……
ともかく、クリス様に手を引かれて皇帝陛下さんの後ろをついて行った。
◇
「クリスよ、話してもらおうか」
豪華なお部屋に入って早々、皇帝陛下さんが発したその言葉。それを聞いたクリス様は緊張を露わにする。
「何から、話せば?」
「魔法塔の件……と言いたいところだがその小娘についてだな。何者だ?」
押しつぶされそうな重い声。刃物のように鋭い眼光が私を貫く。
「ひっ!」
体が震え、クリス様の手を強く握る。魔獣とは別の威圧感に体がすくむ。
「あまり、アデルを脅かさないでもらえるかしら?」
「御託は良い。どこから拾ってきた?」
「あら、お父様のことだから知っていると思ってたのだけれど?」
「無論、報告は受けておる。だが、それが信じられんから聞いておるのだ」
ルセーロで守備隊の皆さんが固まった言葉があった。私をそこで拾ったとクリス様が言っていた。
「聖域に記憶喪失の子供がいたなど、誰が信じられるのだ」
聖域、あの花畑のことだろう。私が目覚め、クリス様と出会ったあの花畑。
一体、なんなのだろうか。
「……信じられないかもしれないけど、事実よ」
クリス様が私をかばうように前へ踏み出す。
「クリス、貴様も知っているだろう。聖域。それは太古の昔に起きた“聖戦”の戦場と言われている」
「ええ、何でも全種族を巻き込んだ戦いだったとか」
「そうだ。そして、その戦いの余波で聖域の周囲には強力な魔獣たちの住む森が作られた」
「魔の森ね」
せい……せん…… 聖域とはその戦いが起こった場所らしい。そして魔の森。あの魔獣と出会ったのもそこだったのだろう。
「そう、問題はそこだ。クリスほどの実力ならば森を抜けることは可能だろう。だが、そこの小娘は?」
「……そうね、正直分からないわね」
「加えて、適性検査の結果だ。間違いなく史上最高の適性結果だと聞いておる」
も、もうばれてる! バルタザールさん! 頭の中に手を合わせて謝っているバルタザールさんが浮かんできた。
バルタザールさんに心の中で少し文句を言っていると、皇帝陛下さんはこちらを睨み、言葉を続けた。
「もう一度聞こうか、小娘。貴様、何者だ?」
◇
何者か? 初めて会った時、クリス様にも聞かれた。
私が何者だったのか、その答えは得られていない。
「……私は、私が何者なのか、分かりません」
クリス様の前へ出て答えた。
皇帝陛下さんの圧が増す。
思わずクリス様の影に隠れそうになる。
でも、ここで逃げたら、きっと守ってもらうだけになってしまう。
バルタザールさんと話して、私はなりたいものができた。
私は――
「何者なのか分からない。でも、私はクリス様の護衛になります」
クリス様に恩を返したい。
クリス様を守りたい。
何者か分からないから、クリス様の護衛という存在になりたい。
それが今の私だ。
◇
「ほう、クリスの護衛に?」
感じていた重圧が消える。
「過去に類を見ない適性を持つ娘が護衛にか……クリス、貴様はどうするつもりだ」
少し、楽しそうな雰囲気が広がった気がする。
「もちろん、私の護衛にするわよ。貴族や教会からも守れるしちょうど良いわ」
「ならば、条件付きで認めよう!」
とても大きな声で、認めてくれた皇帝陛下さん。でも条件付き?
「じょ、条件ってなんですか?」
大きな声に耳がジーンと痛むが、なんとか問う。
「アデルと言ったな」
「は、はい」
「貴様の適性は、まさしく世界最高だろう。だが身分が足らん。クリスの護衛になるためには適性を考慮しても厳しいだろう」
そう言うと、息を大きく吸い込んだ。
「武闘大会! この国最大の祭りで、貴様の実力を示せ! 身分を気にさせない、圧倒的な実力を!」




