13 "二フリナ"
「そのソラという方に会わせてはもらえないか?」
最近のトラニ様が口癖のように言う言葉だった。
そのたびにちょっと私は少しドキッとする。でも同時に、二人が会ってくれたらきっともっと楽しくなるのだろうなとも思う。
だから、宙と会うたびに一応聞いてみるのだ。
「トラニ様と会ってみない?」って。でも答えはいつも一つで"今はまだちょっと…"だ。
もちろん「なんでトラニ様に真実を隠すの?」とも聞いたことがある。正直、トラニ様に王族である宙こと二フリナが私に会いに来ていることがバレたところで、なにか大きな問題があるとも思えない。
それに、宙のあの話を信じるのならば、トラニ様の立場は弱いのだ。そんなトラニ様が、二フリナにどうこう言えるとも思えない。
だがしかし、宙は「面倒になるから」の一点ばり。
宙のことは面白いと思うし、大好きだし、信じたいと思う。でもさすがにちょっと違和感を抱く部分もある。
だから私は、信じたいと思うからこそ少し調べてみることにした。
宙と出会ってから、もう2か月だ。それぐらいは許されるような気がしていた。
トラニ様にお願いして取り寄せてもらった、王家の家系図とその絵姿がまとめられた本を開く。
お願いしたとき、かなり怪訝な顔をされたが「ちょっと勉強したくてぇ~…」みたいな感じでとにかく言い訳しまくったら一応古めのものだが用意してもらえた。新しいものが刊行されたため廃棄される予定だった古いものを、トラニ様がこっそりと回収したらしい。
同時に、「あなたにこの本を渡すことはあまりよろしくはない行為だから、あなたの友人にも秘密にしてくれ」と釘を刺された。もちろん、私もそのつもりだ。だって、こんなの宙を疑ってると言ってるみたいなものだし、それを知るのは宙にとって気持ちがいいことではないだろうし。
この本を借りてなにがしたいのか、というとシンプルに"二フリナ"の名前があるのかを調べたい。
とりあえずパラパラとページをめくると、やはりというべきか最初のページには"白鳥の王子"の姿絵がある。
華麗な白鳥とともに写るその人は綺麗な白銀の髪で描かれていて、なんとなく宙というよりはトラニ様に似ている。ただ、何代も続いている家っぽいし、性別の差もあるしそもそも絵だしそんなものかもしれない。
そこからさらにページをめくっていく中で、ふと違和感に気づく。王の名前が、アルスヴァンしかない。また最初のページに戻ると、白鳥の王子はやはりアルスヴァン。もしかすると、王は代々アルスヴァンという名前を継承しているのかもしれない。なんか歌舞伎みたいだなとも思うが、それだけ王権の維持と誇示に注力しているというようにも見える。
ただ別に私にとってはそんなことどうでもいいので、とりあえずそれは置いといてまたページをめくる作業に戻る。おそらく、時代順に並んでいる様子なので、”二フリナ”の名前は後半にあるはずとあたりをつけて後ろの方をメインに探してみる。
どうか、いて欲しい。
いや、いないわけがない。
宙が私に嘘をついていたら私は…




