希望の新学期
「というわけで、今年から新しくここのクラスを担当することになりました。えぇと、名前は一野佐紀といいます。皆さん今年一年、よろしくお願いします」
春休みなど一瞬にして過ぎ去り、いよいよ新学期が幕を開けた。
終業式の退任式の際、そこにはもちろん元担任の姿があって皆驚いていたのを覚えている。
あの時、誰一人して泣いた者はいなかった。
それはまだ、生徒たちが一年であるからそこまで感情的にはならないのだろう。
しかしその一方で、感情的になっていたたった一人の自分。
悔しくて悲しくて……間違いなく自分は、あの中で一番この退任を望んでいなかった人間であろう。
それくらい、感情的だった。
――なぁあの人、超かわいくねぇか。
耳元を囁かれるような細い声で、後ろの席の男子が呟く。
もちろんそれは自分に向かっての発言ではない。
「軽い自己紹介だけ」新しい担任は言った。「年齢は二十七歳です」
――おまえ結構年上好きなんだな。
――ばかっ、違えよ!
男子たちの声の声量が少し大きくなる。さすがに担任に聞こえているんじゃないかと疑っていたところ、
「ほらー? そこの男子たち。私をおばさん呼ばわりしないでください。私はまだ二十代ですよー」
「「――――」」
男どもの顔つきは強張ったが、周囲の人間たちは大きな笑い声をあげた。
新たな担任は一瞬にして、生徒たちのこころを掴んだようだった。その証拠に、この場の緊張が少し和らいだ気がする。
「好きな食べ物はいちご。逆に嫌いな食べ物は――」
ハクを除いては。
短か……!




