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#30 グラス

「色々考えてはみたけど、やっぱ答えは出ないな……」


 街に迫った魔人を消滅させて一晩経ち、宿のベッドで改めて振り返る。

 ひとまずミレイスやカイル先輩に、魔法を使える風に見せられたのは良かった。

 実際は魔石によるものだが、複数の魔石を組み合わせて使うことで、効果を混ぜた知らない魔法みたいにした。これは魔法の知識がまともにないせいでもあるが。

 時間停止も闇と言うか影というか、黒いものが溢れる演出魔道具で、シャドウステップという魔法に偽装できているはずだ。もちろん本当にあるかは知らない。

 そして勇者は魔法を使えない。

 ミレイスもあの場にいたから、ローブの男≠ミレイスと明かされスケープゴート作戦は失敗になったが、ローブの男は少なくとも勇者ではないという認識にもなったはずだ。

 見る人が見ればバレるだろうし、過信も禁物かもしれないが。


「一番の衝撃は日本人がいたことだよな……」


 シスターがどこかから持ってきた剣、鞘に刻まれた日本語。

 今まで生活する中では、日本語のにの字も見られなかったが、日本人がこの世界のどこかに、他にもいるかもしれない。

 様々な世界から勇者を呼んでいる以上見つけるのは至難の業でもありそうだが。

 もし見つけたら協力して帰還方法を探すのも大いにありだ。

 個人的には心の平穏も保たれそうだ。


「でよ、今回は運よくどうにかなったけど、火力がなあ」


 シスターが魔法の剣を持ってきていなかったら、時間停止をして街の商店を片端からひっくり返して、使えそうなものを盗んできて試すつもりだった。あの魔人に効果があるかは別としてね。

 その上で、今後はあの剣使えばいいじゃんとならないのは、あれには魔力を充填する時間が必要であり、いつも使えるものではないからだ。

 どのくらいの時間必要なのかもわからないし、もし数年や数十年必要なら頼りにできない。

 外付け火力を武器で補うなら別の街にも足を延ばしてみるべきか、あるいはライレインを頼って言語の勉強から始めるべきか。


「それと最後、戦ってた三人に詰められたっけ……」


 そりゃああんなやばいもの急に見せられたら、疑いの目も向けたくなる。俺だってそうだ。

 その上素性を徹底的に隠して活動してるときた。もうやばいくらい黒だね。

 今後は活動を減らすべきか、判断するのに一度ギルドの様子も見に行っておく必要があるな。

 それと、あの場で仲裁を買って出てくれたシスターには感謝しかない。

 今度菓子折りでも持っていこう。


 そうしてまたいつものように、E級冒険者(嘘)として、ギルド併設の酒場に向かった。


 地獄耳で確認した結果としては、ギルド内でローブ男が危ないだのどうのという話は、街の外で巨大な光の柱が上がっていたのだが、意外にも広まっていなかった。

 ミレイスがその正体だったという間違いは訂正されていたが、正体不明に戻った以外は特に変わりなかった。これならあの三人にだけ注意して動けば、問題はなさそうか。

 とりなしてくれたシスターに感謝だ。


 そのままライレインに日本人の手がかりを聞いたりとか、魔道具の魔力補充を頼みに行こうか考えたが、今日はノーマルデイ。謎の男ではないためやめた。


 なんとかこの世界に来て、初の難所を乗り越えて、清々しい気分だ。

 協力者こそ少ないが、どうにかならないってわけでもない。はずだ。

 これからも頑張っていこう。

グラスの戦いはこれからも続く……

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