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5.責任という名の信頼


翌日、私は宿泊部の松浜課長に報告しなければならないことが二つあった。


一つは、満室となっていた八月十六日に予約を受けてしまったこと。


そしてもう一つは、誰にも相談することなく、私の判断で宿泊料金を変更してしまったことだった。


夜勤で出社すると、私は真っ先に課長のもとへ向かった。


「課長、お時間をいただけますでしょうか」


緊張で喉が渇く。


昨日の出来事を、一つ残らず正直に話した。


話し終えた部屋には、しばらく重い沈黙が流れた。


「白鳥、お前の判断で勝手に決めたのか」


「……はい」


課長の口調は静かだったが、その一言一言が胸に突き刺さる。


私は、お客様のことしか見えていなかった。


しかし、ホテルには守るべきルールがある。組織として動く以上、自分一人の判断で越えてはいけない一線もある。


そのことを、私は痛いほど思い知らされた。


「申し訳ありませんでした」


深く頭を下げる。


これ以上、何を言われても仕方がない。


そう覚悟した、その時だった。


課長は少し表情を和らげ、私を見ながら静かに言った。


「そこまでお客様のことを考えているのなら、最後まで責任を持ってやりなさい」


その言葉は、叱責というよりも、私を信じて託してくれるような響きだった。


「……はい。本当に申し訳ありませんでした」


再び頭を下げ、席を離れようとした、その背中に課長が声を掛けた。


「白鳥。八月十六日のシフトは夜勤にしておく」


私は振り返った。


「その日は満室だ。頑張ってくれよ」


一瞬、耳を疑った。


責任を問われると思っていた私に、課長は責任を取り上げるのではなく、最後まで任せてくれたのだ。


あの一言は、私にとって何より嬉しい言葉だった。


「ありがとうございます」


心からそう言って頭を下げると、私は新たな覚悟を胸に、課長の席を後にした。


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