(9)安息について ティタニアいわく
オベロンとアーチンが与えてくれた安息の中で、わたしは子供たちを抱きしめました。この両腕の中にあるのは、何よりも大切なふたつの宝物。柔らかな熱が静かに脈動して、命の愛おしさを教えてくれます。
無邪気なプーカなら、控えめなパックの背中を押してくれるはず。そして辛抱強いパックなら、プーカの傷心を癒やして朗らかさを引きだしてくれるはず。ふたりが共に支えあえば、どんな困難であろうと、きっと乗り越えてくれる。
ささげる祈りは誰にともなく、わたしは我が子たちを心から信じました。どうか共に助けあい、すこやかに成長してくれますように。
そんな幸福の日から間もなく、わたしは生涯を終えようとしていました。身重の身体で、ひとり森をさまよって赤子を産む。その負担は、わたしの身体をひどくむしばんでいたようです。
わたしは病床に伏しながら、自身の生涯を想い返しました。それは郷愁と苦痛を蘇らせるものでした。けれど死への恐怖や焦燥は、森のどこかで落としてしまったようです。追想の締めくくりが、オベロンと小さな子供たちの笑顔と涙であることに、思わずほほ笑みがこぼれました。
それはありし日。ベッドから起き上がったわたしに、オベロンが寄りそってひざまずきました。わたしの手を――青く淀んで幽霊のような両手を、オベロンは温かな両手で優しく包みこんで言いました。
「ティタニア、ストレンジャーの里へ帰りたいかい? キミのためだったら、ぼくは何だってするよ」
彼なりの思いやりだったのでしょう。オベロンは学びかけのわたしたちの言葉――彼らの言い方で表せば、ストレンジャー語で話をしていました。その親身でたどたどしい言葉づかいは耳にくすぐったく、わたしは愛しさに顔を緩ませて答えました。
「わたしのあるべき場所は、パックとプーカと、そしてあなたがいるここだけです。あなたたちとともにあることが、今のわたしのすべてです。ここを終のすみ家とできることが、わたしのこれまでが価値のあるものであり、けわしくとも幸福への道のりであったことの証しなのです」
今度はわたしがオベロンの手を握りました。この想いが伝わるようにと祈りながら、彼らの言葉で話を続けました。
「パックとプーカには……その出自が、あの子たち自身をさいなむ日が来るかもしれません。けれど世を恨むことのないように、自身を憎むことのないように……わたしにくださった真心を、どうか変わらず子供たちへ。パックとプーカの内に、誠実な愛が育ちますように……」
生涯の幕引きは、安息のままに終えました。いつかめぐり会う約束の地で――痛みも悲しみもない常春の楽園で、愛する家族たちを待ちたいと思います。




