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群像について ユグドラシルいわく  作者: まいち
幕間 亜人外典
45/61

(45)腫瘤について

 前述のとおり、菌根菌は植物のために生育環境の整備を行う。やはりユグドラシア菌根菌もユグドラシア菌根植物の生育に適合させるため、土壌環境の改変を行う。

 本来、人間にユグドラシア菌根菌が感染することはない。ユグドラシア菌根菌は絶対共生性を有しており、その生存には植物との共生が不可欠であるからだ。だが感染状態でなくとも、人間の肉体に存在し続けることは不可能ではない。

 ユグドラシルの森を切り開いて近傍に暮らす者たちは、その土壌へ常に接していてユグドラシア菌根植物を食物として摂取さえしている。そのために彼らの肉体には、ユグドラシア菌根菌が死滅し切らないで保持されているのだ。

 人間の肉体も、植物の生育に必要な窒素やリンなどの栄養素を含有している。ならばそこに存在するユグドラシア菌根菌の分布密度がいくらかのしきい値を超えれば、人間であろうとユグドラシア菌根植物を生育させる土壌としての適性は得られる道理だ。つまりこれは、ユグドラシア菌根菌に土壌として認識させるための環境改変を、ユグドラシア菌根菌自身が行っていると言える。

 ユグドラシア菌根菌によって発生する「人間の土壌化」。それがまったくもって荒唐無けいな話であることは承知している。だが少なくとも土壌化した人間に対し、その肉体と命を利用してユグドラシルが何をするのか、わたしは知っている。

 ある種の菌類は、飢餓状態になると細胞の死滅を防ぐために「子実体」を形成する。子実体とは「胞子の散布構造」であり、一般的には「キノコ」と呼ばれている物のことだ。アトロゥにも類似した生態があり「細胞代謝の不可逆な失活推移」である「肉体の死」に反応し、子実体を形成する。

 とはいえアトロゥの子実体は、アトロゥの細胞を構成子として純粋なキノコではない。その定義は、植物においては種子を包含する果実であり、人間においては生殖細胞の腫瘤である。

 子実体の胞子散布は風媒が主であるが、それに限るものではない。虫や獣、水の流れなども利用され、アトロゥの子実体においては「人間」が利用される。ユグドラシア菌根植物は悠遠の昔、その植生圏域を広げるために人間などの動物を利用していたのだ。時を経て失われたその生態が、アトロゥに発現した「ユグドラシルの福音」によって蘇ったのだ。

 アトロゥの子実体は、香気性の誘因物質を含有して放散している。それによって引き寄せられた人間が土壌適性を持つ場合、子実体は人間に対して感染を引き起こす。その寄生状態は、まるで「歩く土壌」であり、里のユグレナたちによって「ウォーキー・ドゥーヒキー」と呼ばれている。

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