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群像について ユグドラシルいわく  作者: まいち
幕間 亜人外典
27/54

(27)長命について

 ユグドラシルにのみ生息する「亜人種ユグレナ」と「ユグドラシア菌根菌」。この二者には重大な関係性がある。その根拠はユグレナに長命をもたらしている、彼らの細胞だ。

 動物、植物、菌などの構成子は「真核細胞」であり、これらは「真核生物」である。

 ほとんどの真核細胞は、より単純な構造をした「原核細胞」からなる「原核生物」の共生によって形成されたと考えられている。だが中には、真核細胞が真核生物を取りこんだ「二次共生の真核細胞」によって構成される生物も存在している。

 太古の昔から、ユグドラシルには無数のユグドラシア菌根菌が存在し、植物細胞と共生していた。そんなユグドラシルに「植物細胞がユグドラシア菌根菌を取りこみ、両者の特質をより効率的に利用する新たな植物細胞」が出現したのだ。

 「ユグドラシア菌根菌を取りこんだ植物細胞」は何をもたらしたのか。これはユグレナの長命の理由を説明することによって明らかになる。それにはまず「生物には、なぜ寿命があるのか」についてから始めるべきであり、その理由は「染色体」にある。

 染色体とは「DNA」の構造体である。これを言い換えれば「塩基という物質の配列によって形成された遺伝情報」の構造体だ。そして染色体の末端部を保護する塩基配列の領域を「テロメア」と言う。

 染色体は細胞分裂のために複製を行うが、完全複製はされず末端のテロメアが短縮する。細胞分裂を繰り返してテロメアが短縮限界を向かえると、染色体は複製を停止させる。それにともなって細胞分裂も停止し、細胞が更新されない肉体は老化して、やがて寿命を迎えるのである。

 だが細胞内にはテロメアを伸長させる物質も発現する。テロメアの塩基配列を合成し、テロメアに付加して伸長させる酵素を「テロメラーゼ」と言う。テロメラーゼは植物の成長組織においては活性が示され、植物の長命はこれに由来している。

 しかし人間の体細胞におけるテロメラーゼ活性は細胞の腫瘍化を招く要因であり、人間に長命をもたらすことはない。にもかかわらず、ユグレナはまるで「植物」のように正常な細胞を維持して長命となっているのだ。

 ユグレナの植物のような細胞の性質は、悠遠の昔に彼らの祖先が獲得した物である。ユグドラシア菌根菌は植物の根と共生するために、植物の性質に合わせて自身の特性を変化させ、対応する性質を持つ。ユグドラシア菌根菌を取りこみ、その特性を得た植物生殖細胞が、人間の生殖細胞の性質に変化して対応したのだ。「ユグドラシア菌根植物の植物生殖細胞」と「人間の動物生殖細胞」は結合し、植物の長命という特性を得た「亜人種ユグレナ」が成立したというわけだ。

 ユグドラシルの森に足を踏み入れたユグレナの祖先は、ユグドラシア菌根菌の特性によってユグドラシア菌根圏領域と同化を果たし、亜人種ユグレナという「共生者」となった。では共生者としてのユグレナの働きとは何か。これは「パックの異能」および「ウォーキー・ドゥーヒキー」によって推測することができる。

 かつてアトロゥには、アトロゥによく似たユグレナの仲間が山ほどいた。ヤツらはオベロンや里の者たちとは形質が異なり、二者は近縁異種と見るべきである。先に述べた理由の通り、里のユグレナは外界の人間との交雑が多く、したがってアトロゥらはユグレナの原種により近いと考える。

 現存のユグレナは、世代交代が繰り返される中で純粋なユグレナとしての遺伝情報は減衰し、すべての特性が顕現しているわけではない。パックの「異能」は、より原種に近いアトロゥから遺伝したものである。

 異能の発現はアトロゥの出自に由来しており、それはユグレナの隔世遺伝性疾患に起因する突然変異による先祖返り的急性発育高進症状の発現である。またユグドラシア菌根圏領域の共生者であるユグレナの、免疫機構としての活性形態とも表せる。

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