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群像について ユグドラシルいわく  作者: まいち
第2幕 第3場 ユグレナのお茶会
26/60

(26)出発について ワッピティいわく

 ぶぅぶぅとうるさいプーカへと、あたしはつぶやく。


「……そもそもあんたは、なーんもしてないでしょ」


 そろそろ嫌味のひとつくらい言ってやんないと。プーカのどーでもいい主張に、いつまで付きあってるんだっつーの。ダメだ、ため息が止められない――


「はぁー……」


 ホッペタを膨らませながら、なんだかんだと言い続けるプーカ。そんな脳ミソまでチビなプーカを黙らせたのは、オシアンの言葉だった。


「……プーカ、おまえは行かない方がいい。代わりにわたしが行こう。任せておけ、策があるんだ」


 あたしの気のせいかな、何やら役者違いなセリフが聞こえたような。誰もが二の句を遠慮し、しばし訪れる沈黙。


「……――……」


 ふたたび口火を切ったのはプーカだった。


「冗談はいいから、おじい」


 オシアンに向かい、いっちょまえに白い目を向けるプーカ。そんな視線を浴びながら、またオシアンはテーブルを殴りつけた。


「ガチャン!」


 食器が跳ね、さっきよりも大きな音を鳴らす。やだなー、怒りっぽいじじいって。


「フンッ、策があると言っているだろう! キミたち、足を引っぱるなよ!」


 声を荒らげるじじいを、オベロンが穏やかな口調でたしなめる。


「オシアン、無理をしなくていい。パックたちに任せてくれ」


 そんな言葉で引き下がるわけもなく、鼻息を荒くして返すじじい。


「フンッ! ヤツの狙いは、そのパックかもしれないんだよ! パックの身体を奪い、あの異能を……その福音だかなんだかを取り戻すのさ!」

「しかし――」


 オベロンの言葉を遮り、骨と皮ばかりの老体を震わせるオシアン。たしか「福音」ってオシアンが言い始めたんじゃなかったっけ。年くっちゃって、もうボケちゃってんだなぁ。まぁ、それはどうでもいいとして。なんか真面目くさっちゃって、必死な口調で嘆願を始めた。


「オベロン、わたしの命は……そして、かつての哀れな赤子の命は……キミに拾われて、今ここにあるんだ……! 長いこと預かっていたキミへの借り! 今こそ、返させてくれッ!」


 なんかメンドクサイ話になってきたなー。しつこくグダグダとやってて、いつ出発すんの。あたしは手持ちぶさたでツメをいじりながら、ボンヤリとグチ代わりにこぼした。


「……まぁ、いぃんじゃないの……策があんでしょ?」


 チラリととなりを見ると、いっちょまえな仁王立ちで不敵な顔のプーカ。その小さな胸をドンと突き、勇ましく言葉を発した。


「大丈夫! おじいは、わたしが守る!」

「あんたまで、いいの!」


 そう言いながらあたしは、プーカを背中から捕まえて左腕でがっちりロック。抱えたままの左手で、プーカのホッペタを挟む。


「むぎゅ!」


 残った右手でテーブルの上をまさぐり、手に触れたお菓子をワシづかみ。捕まえたありったけのクッキーを、こじ開けたプーカの口にねじり込む。


「うりうりぃ! いつまでも戯れ言を吐くのはこの口かぁ! 閉じられないのなら、手伝ってやる! ひーひっひーッ」


 正義の鉄槌を下し、悪の芽を摘んでいるあたし――を尻目にブバホッドは、アトロゥと遭遇した大体の方角と距離をオベロンから聞いている。まぁ、適材適所で役割分担ってことで。

 ふと目に入ったアーチンは、片手で頭を抱えながらパックへ何か言っている。


「あまり人手を割けんで、すまんな。知っての通り、里はのんき者ばかりでな……」


 のんき者ってのは、プーカみたいなヤツのことで――さもなきゃ誰のことだ、アーチンめッ。


「いいってことよ」


 パックは言葉を返しながら、いつものシカメッツラで腰を上げた。同時にブバホッドも出発の準備のために席を立つ。かたわらではプーカが、ウサギのような音を鳴らして白目をむいた。


「きゅうぅぅ……」


 うっかりとあたしは、プーカなんかに乗せられてしまっていたのか――


「くッ!」


 なんたる不覚。手早くプーカの息の根を止め、あたしも出発の準備を始めた。

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