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群像について ユグドラシルいわく  作者: まいち
幕間 亜人外典
23/56

(23)菌根について

 ユグドラシルの森一帯には、ある菌が高密度に繁殖している。その菌は植物の根の細胞壁内にまで侵入し、大樹の枝のような形状の構造体を形成する。その器官が植物細胞と栄養交換をして、菌と植物の共生関係が築かれている。便宜上、その共生体を「ユグドラシア菌根」と、その菌を「ユグドラシア菌根菌」と呼称する。

 菌根菌はその種類により、共生する植物が限定されている。だが奇妙なことに、ユグドラシア菌根菌は植物の性質に合わせ、自身の特性を変化させて対応することができる。そのためにあらゆる樹木や草花と共生し、ユグドラシル全域にわたってユグドラシア菌根菌のネットワークを形成しているのだ。

 ひるがえってユグドラシルとは「ユグドラシア菌根菌に感染した菌根を持つ植物群」と「その植生をなすユグドラシア菌根菌を含有した土壌」であり、また「それらを土台に形成される生態系」のことなのである。

 これが「ユグドラシルの再定義」の結論であり、すなわちユグドラシルの本質とは「ユグドラシア菌根圏領域」なのだ。

 「ユグドラシア菌根圏領域」は外界と遮断され、孤立した森を形成しているように見える。だがそれは「この世」という「多様な生態系」の均衡によって並存している植生概念のひとつであり、したがって外界との相互関係によって成立している。

 平衡状態に変更を試みれば、平衡点の移動による「揺り戻し」をこうむるのは自明である。森を侵すものには、生態系の働きによる排除、または同化が行われるのだ。

 生命であるユグドラシルにおいては「揺り戻し」にホメオスターシスが加わり、より強力に作用する。そしてこのホメオスターシスによる反動作用は「ユグレナ」という奇妙な亜人を誕生させることになったのだ。

 前述の通り、亜人とは「人間に似て、非なるモノ」だ。外界の人間とユグレナに自然交雑があることから、二者の類似が「収れん進化」でないことは明白である。

 収れん進化とは「別系統の生物種が、同様の環境要因によって類似した形質を得る現象」である。つまり自然交雑が行える二者の類似は、偶然などではなく近縁であるためと考えるべきなのだ。

 ならば二者が近縁であるにもかかわらず差異ある形質を持つ由来は、かつて共通であった祖先から現在にいたる「その間」にあるはずだ。

 祖先をさかのぼればひとつの種に収れんされながら、外界の人間とユグレナの形質が異なっている原因とは何か。二者を異種となしえた隔絶要因とは何か。

 人の交流をさえぎりながら、没交渉にはしない障壁。つまり地続きの大地に存在しながら、そのけわしさに異界とすら恐れられ、人が立ち入りをはばかる領域。だが単なる障壁以上に、その特異な性質によって排除、または同化を行う領域。

 その領域とは、すなわち「ユグドラシル」にほかならない。そしてユグレナの誕生は「ユグドラシア菌根圏領域」の特異な性質に原因があるのだ。

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