(20)疑問について ボガートいわく
ストレンジャー狩りの後には、毎度ながらの見慣れた光景が現れる。オレが丸裸にしたストレンジャーの死肉へ、無数のうごめく「ドクロ」たちが群がってくる。
「ドクロ模様の丸っこい鳥」が――「ティット・トット」が死肉をつつく。ノッポな身体の腹を裂き、臓物を引きだして我先にと貪っていた。
「ビィー……ビィビィ……」
ティット・トットが宴会を開くかたわらで、オレはノッポのストレンジャーからはいだ身ぐるみを検分していた。そんなオレに呼びかけてくる声がする。
「……ねーぇ、ボガートー」
パートナーのフェノゼリーからの呼びかけ。声が聞こえてくるのは、向こうにある水辺の木陰。そこで濡れた身体を乾かしながら、フェノゼリーは身支度を整えていた。彼女が言うには、美人ほど身支度が長いらしい。
「……戦利品はどうかしらー、めぼしい物はあったー?」
フェノゼリーが気にする戦利品の内訳は――それなりの手荷物やら、それなりの武器やら、それなりの衣服やら――これといって珍品もなく、この手の連中の例に漏れないそれなりの品々。
「なぁに、いつも通りさぁ。シケたもんよ」
フェノゼリーの質問に答え、オレは次なる追いはぎへと向かう。
こっちの首の取れかけたストレンジャーも、そのズングリとした身体つきに比べて実入りは少なそうだ。とにかく収穫に取りかかりながら、オレは言葉を続けた。
「なぁー、フェノゼリィー。あのやり方は、オレの趣味じゃねぇよ。ストレンジャーなんぞに拝ませるにはもったいねぇぜ!」
フェノゼリーのあられもない姿をオトリにし、ストレンジャーへ奇襲を仕掛ける。それは野蛮なストレンジャーどもを釣るには、これ以上ないほどに効果的な手段だった。
しかし、だ。フェノゼリー本人が乗り気とはいえ、だ。愛する女の――最愛の女の裸体をさらして、不満も嫉妬もない野郎がいるもんかってんだ。
「……野蛮人には、あのやり方が一番でしょー? それに、どうせすぐ死ぬんだし!」
返答したフェノゼリーの声音は、面白がるような調子で弾んでいる。オレの心からの抗議も、フェノゼリーは愛情表現と受け止めたようだ。はねっかえりのじゃじゃ馬が、とびきりキュートなんだから、まったくまいっちまうよ。
まさぐっていた二体目のストレンジャーも、それなりの所持品でレア物は特になし。ちゃっちゃとひっぺがして丸裸に。当てこすりに蹴り飛ばしながら、オレは捨てゼリフを吐いた。
「ぜいたくな、冥途の土産だぜ!」
ズングリとしたシカバネが転がり、ゴロンと投げだされる。こちらにも早速にティット・トットが群がってついばみ始めた。さて、次で最後か。
オレは振り向き、少しばかり向こうにある獲物を眺め――
「……あれ?」
何かがおかしい。しっかりと確認するために、オレは近づいていった。
到着して見下ろした足元には、間違いなく目的のモノがある。場違いに目立つ赤いずきんを被った男のシカバネだ。はだけたマントの中には、まる出しのフンドシ姿。投げだされた手足は、その内の一本が折れていてグニャリ。胸元に深くナイフの刺さった胴体は、事切れた当時の姿勢で立ち木へもたれて――
「……おっかしいなぁ」
赤いずきんが妙な形にしぼんでいて、そこにあるべき「モノ」が足りないように感じる。オレはずきんをひっぺがした。
脱がしたそこに見えた「モノ」へ――いや、見えなかった「モノ」へ、オレは疑問を投げかけた。
「……首、落としたっけか?」
赤いずきんの中にあるはずの頭は、なめらかな切り口を見せて首から消え失せていた。
不可思議な出来事にオレは首をひねった。ふと見上げると、大きな立ち木が目に入る。赤いずきんのシカバネがもたれていたその木は、ずいぶんと奇妙な見た目だった。
その木は幹がのたくるようで、節くれがひしゃげた顔を形づくっていた。何食わぬオトボケ顔といった様子で、真相を知っているくせにしらばっくれて、だんまりを決めこんでいる。




